2009/05/19

日記「キヨシローの追悼番組」

「チェルシー・バルサとJリーグ」「保守ロックステーション」「やりすぎライド」ほか。

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■09/05/06(水) □ チェルシー・バルサとJリーグ
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 【CLチェルシー・バルサ】なかなか壮絶な戦いだったが(特にドログバとトゥーレのアイボリーコースト勢同士の競り合いは爽快怪獣映画であった)、全体としてはどれほどパスを回してもチェルシーの守備ブロックを崩せないバルサにフラストレーションを感じる試合だった。バルサは鬼のキープ力を持ちながら、最後は放り込み跳ね返されるばかり。なんかめちゃレベルの高い日本 VS 韓国みたいな感じである。

 結局世界最高と誰もが認めるバルサの攻撃力がチェルシーの守備を突き抜けるシーンは皆無で、双方あれだけ攻めあっても点はマグレに近いミドルしか入らなかった。ショートパス戦法の日本も欧州強国を相手にすればこんな試合になるだろうなあと思う。たとえ最高にデキがよくてもここまで、という感じ。ま、だからといって岡田監督に他の戦法をやってほしいとは思わないが。

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 ここ数日ネットやTVで柏・浦和、ACL名古屋・蔚山、CL準決勝、そしてトロント(MLS)対バンクーバーといろんなサッカーを見たのだが、Jリーグのよくない特徴は選手のアタフタした落ち着きのなさにあると思う。対面の相手とボールの動きをさまざまに予測し、何が起きても間髪いれず対応しようと緊張しているのだ。これがスポーツ的にいいことなのか疑問だ。たとえばボールホルダーをマークする典型的Jの守備選手は、細かなフェイントに全部反応した挙句ボディバランスを崩し、結局クロスを入れられてしまうことが多い。

 それに対しチェルシーの選手は、メッシがボールを持っても無駄な動きをせず仕掛けを待ち、メッシが動けばすっとコースを切り、ボールを奪おうとはせず縦を切ることで攻撃を無効化している。この両者には技を比べあう武道家の果たし合い的な美しさがあり、Jのアタフタ者たちにはそれがないのである。Jの選手は遠目どうもハイスクールの子供に見えるのだが、それも挙動が落ち着かないからだろう。まあJ選手だって代表レベルならば当然プレイは落ち着き美しいのだが。

 MLSはJよりレベルが低いが、プレイスピードが遅くゆったり構えても間に合うためか、Jほどアタフタは目立たない。スピードが落ちたバンクーバーの平野がトロントのFWにぶっちぎられたシーンがあったが、そのFWが切り返しに手間取る間に追いついてボールを奪い返していた。Jリーグではこんな、ベテランの読みと技がスピードを抑えるという牧歌的なシーンは起こりえず、だからベテランは毎年どんどん切られてしまうんだろうが、Jリーグももっと落ち着いた技術の果たし合いが頻発するリーグになってくれたらいいなと思う。

 しかしトロント(MLS)対バンクーバー(北米2部リーグ)なんていう低レベルのサッカーでも、見れば意外に楽しめるな。トロントの客席はびっくりするほど客が入り熱い応援をしていて、これはカナダで一番人気のある都市バンクーバーへの対抗意識があるに違いないと思う。バンクーバーが再来年MLSに入ったら楽しくなりそうだ。福西なんか簡単に引退しないでMLSにくればいいのである。北米なら生活習慣も苦労しないのだし。

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■09/05/09(土) □ 保守ロックステーション
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 天気がよく木漏れ日が最高の一日、みなでほぼ丸一日庭で過ごした。遊んだり、草を取ったり肥料をまいたり。筋肉痛なり。

 Mと同じラジオを俺用にも買ってきて、庭仕事時にいろんな局にチューンして聞いてみたが、バンクーバーっていい音楽をやってる局はないなー。車上じゃだいたいクラシックロック局 Rock 101 を聴いてるのだが、ここはクラシックというより「保守」ロック局であって、大有名バンドの大有名曲(と、イモいので世界に発信されなかった米加限定ヒット)しかかからない。たとえばストーンズなら「サティスファクション」や「ブラウンシュガー」、クラプトンなら「レイラ」のそれも unplugged がかかるという塩梅。大御所でも何年も聴いてないアルバム曲をかけてくれるなら喜んで新鮮に聴けるのだが、もう血肉細胞化してしまっているそうした曲をラジオで聴きたいとは思わんのである。

 「現代ロック」The Fox のほうは才能に乏しいバンドのノイジーな音楽が流れている。今日午前中は The Fox でトップ 20 番組をやってたので聴いてたのだが、ほんとつまらんと思った。意外性のあるいいメロディやコード進行なんかぜんぜん出てこない。

 しばらく前にMの同僚の20代青年の前でギターを弾いたとき、彼がストーンズを1曲も、それこそ「ブラウンシュガー」すら知らないことにタマげたが、彼の世代が聴いているであろうこの The Fox ではクラシックロックがかからず、Rock 101では現代ロックがかからないという隔絶が、カナダのラジオのつまらなさなのだ。どっちで流れてもウケる「普遍的にかっこいいロック」がカナダにだってあるはずなのに。俺はそれを聴きたいのである。

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■09/05/10(日) □ やりすぎライド
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午後、BLちゃん家と仮設プレイランドにいく。友達と一緒にライドに乗る機会はあまりないのでよかったな、しかしカナダのライドはほんとに超高速で恐ろしいと思っていると、最初は楽しんでいた萌の顔がだんだんアンハッピーになっていく。うわ、やっぱ速すぎてパニックになったか、しかし止まるまではどうにもできん―――と止まったところで迎えにいき話を聞くと、あまりの遠心力で並んだ3人分の体重が全部萌にかかりすげえ痛かったのだとのこと。そうか、怖くはなかったの? 大丈夫だったよ。そうか、焦ったぜ。

 あとで写真を見るとたしかに、3人が完全に外側に寄っている。子供がバーに捕まってこらえられるような遠心力じゃないということである。明らかにやりすぎなり。

 そしていつもこういう移動式プレイランドで思うのだが、なんで係員があそこまで無愛想なのだ。小さな子供が速すぎるライドで大変な思いをしていても気に留めることすらなく、売店では子供(萌)が自分の財布からいそいそとお金を出しキャンディアップルなどを買っても、店員はサンキューともいわずに品物を渡す。

 こりゃまるでフロリダにいるみたいだなと思い、ああそうか、これもつまり「最低賃金でアイソよくなんかやってられっかよ」問題なのかなと思い至る。フロリダで愛想がよかったのは職員待遇がいいディズニーワールド内の人々だけだったのだが、それと同じなのではないか。同じ運営会社のプレイランドでも夏のPNEでは生活がかからぬ学生バイトが係員をやってるから愛想がよく、おっさんおばさんがやってるこういう通常営業ではこのようにケンもホロロの態度になるのかもしれん。

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■09/05/16(土) □ 「ゼルダ」再開
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 萌は咳がまだ残り、Mが風邪真っ只中、俺もやや頭痛と寒気がする日。数ヶ月中断していた「ゼルダの伝説 夢幻の砂時計」を萌とやる。風の島~風の神殿とダンジョンを攻略しえらい盛り上がった。ゲームで「そうだ! これだ~!」とひらめきに胸躍らせるのは久しぶり。

 ペンのみで戦うという操作性にストレスをいつも感じるが、そこさえ我慢すれば「ゼルダ」は実によくできた謎解きゲームだ。観察力とひらめきがないと解けず、しかしその2つがあれば絶対に解けるデキのよい謎が次々に登場し、迷うことなく先へ進める。RPGのダンジョンというのはたいてい分岐があって、正解ルートが見つかっても少し戻って全ルートを探索せざるを得ないようになっているのだが、このゲームのダンジョンは謎が解けたら心配しないで先に進みなさいという作りになっているのがよい。子供が知的興奮に身を任せ突き進んでいけるのだ。

 ゲーム本編とは別に人魚探し、大砲ゲーム、釣りといった息抜き寄り道遊び要素もようやく見つかって、楽しくなってきた。

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■09/05/17(日) □ キヨシローの追悼番組
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 日本語学校運動会。天気は悪いという予報だったのだが晴れ、楽しかった。朝から興奮しすぎていた萌は、同じく興奮して加減が利かないKTとじゃれ合って走り転び、膝とひじをすりむきまくっていた。俺はラジオ体操と綱引き以外は見ていただけなのだが、帰るとぐったりと疲れを感じる。俺も若干風邪をひいてるのと、久々の直射日光のせいか。

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 NHKのキヨシロー追悼番組がやっとこっちでも流れたのだが、いかに偉才でキングで反骨の人だったかと紹介しつつ名曲ライブを流すだけで、どうということのない番組だった。ロック葬だったというのに、葬式の様子は3人の弔辞が紹介されただけ。そんなものを見たくはない。まあTVなんてこんなものか。NHKが捉えたキヨシロー像なんてこんなものか。

 俺はキヨシローが惜しまれる歴史的存在で「キングオブライブ」だったことではなく、彼の声と歌とレコードが好きだったのである。大学1年のとき野音を見に行って、「なんか(高3で)はじめて見たときのほうがすごかったというか、キヨシローはいつも同じことをやってるんだな」とライブ中気持ちが冷めてしまったのだが、ミックジャガーっぽく客をあおりまくるその頃の映像を今見ても同じ感覚を覚える。ギターを弾きながら歌う最初期の映像のほうがいい。キヨシローのライブが本当にすごかったのは、客をあおり乗せるためにではなく、後先考えず個人的な怒りをほとばらせるためにステージに上がっていたタイマーズ時代だよな。あれは本当にすごかった。客席にいて体に電撃が走った。

 番組は「トランジスタ・ラジオ」「君が僕を知ってる」と続き、胸が熱くなる。あれくらい自分の青春と分かちがたく結びついた歌は、やはり他にはない。こんなTV番組を見るよりも、日本に残し見つからなくなってしまったRCのカセットを全部取り戻したい。こんなときには外国暮らしを悲しく思う。誰もがこんなパーソナルな結びつきを、キヨシローと持っているはずなのだ。

2009/05/07

日記「トランジスタ・ラジオ(清志郎の訃報)」

「清志郎の訃報」「紙相撲」「子供TV問題」ほか。

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■09/04/28(火) □ 豚インフルエンザの脅威
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小仕事を終わらせ日本語学校。萌はこの頃日本語テストでいい点を取ろうと燃えているようである。先週は漢字と読解で 80 点という見事なスコア。3年生ともなると相当に漢字も難しくなっており、知らない単語も出ている中で、なかなかその点は取れないと思うな。

帰ってディナーを食べると、Mに命じられたとかで萌が夕方外で石拾いをする。そんなの明日暖かいときでいいよと何度も声をかけるが、やりたいのだと中に入らない。そのうちに顔に赤味がさし咳をし始めた。はあ、夏がくるまではこうして昼間の暖かさに調子に乗り、朝夕冷えて風邪をひくんだろうな。豚インフルエンザの脅威が間近に迫っており、熱など出たら恐ろしいのである。

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■09/04/29(水) □ ゲームもネタが尽きて
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CL、マンU対アーセナルを見る。アーセナルって強いのかと思ったら、現状ではマンUの敵ではないという感じ。マンUは全員が全力で走りながら、ボールタッチだけは絶妙にやわらかくすることを意識しているようだ。フルスピードのパスワークなんて現実には1試合に何度もつながらないのであって、このマンUは8割のパス速度で1試合戦うことができるのだからすごい。

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掃除と庭仕事などの合間に、ふと思い立って久々に FM 2008 をやってみる。試合をやるとやっぱり楽しいが、練習の指示とか移籍処理はやっぱつくづく面倒だなあと思う。シーズン準備などする根気が続かん。コーチに引退され有能な人材を探す必要が出たりすると、ほんと面倒だとため息が出る。この面倒さを回避し時間を短縮するオプションもないからな。

その点カルチョビットは本当にお手軽で楽しかったが、15年目にチャレンジカップを勝ったあたりからはリーグ内で自チームが突出して強くなりすぎ、19年目で三冠を達成する頃にはリーグ4強にも負ける可能性なしというところまで来てしまった。こうなるとチャレンジカップ以外楽しみがなくなってしまう。毎年お気に入りの選手を少しずつ放出してリーグの競争性を取り戻そうと努力したのだが、自チームを弱くするという方向でゲームを楽しむのはやはり無理があり、20年目で終了することにした。2ヶ月存分に楽しめたので大満足だったけども。

次にやるゲームを現在物色中。萌と一緒に遊ぶためのゲームもネタが尽きて長いので、なんかないかなと考えている。

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■09/05/01(金) □ BCは春がない
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豚インフルエンザの感染拡大は、毎日じわじわ広がってはいるがその速度が落ちてきた感がある。おとといまでは数時間ごとに新しく悪いニュースが入ってきたのだが、昨日からトップニュースとして別のニュースが入ってきた。感染の勢いをコントロールできてきたのかもしれない。

今日は暑い。午後には26度まで上がる。もう日なたにはしんどくていられないほど。寒くなくなってよかったねえと言っていた翌週がこれだから、BCは春がないよなあと思う。日本の人は英会話などで必ず「日本は四季があり」というので英米カナダの人々からうちだってあるわと失笑されるのだが、カナダはやはり緯度が高いので照れば紫外線がきつく曇れば寒いと両極端になり、春らしさは断片的にしか感じられないのが本当のところ。

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■09/05/02(土) □ 清志郎の訃報
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朝新聞を開くと、キヨシローの訃報。あーやはり。半年ほど前なにかにゲスト出演したという噂を聞いたきりで、彼のことを思うたびにああザワザワと不安だけを感じていたのだが、ガン患者の場合噂がないということは日々進行しているということなのだろう。うちの父さんもそうだったもんなあ。嘆息。シンガーじゃなくなってもいいから生きていてほしかった。でも手術して引退して生きるという選択肢は、キヨシローは取らなかったんだよな。

58歳。高3のとき市民会館で初めて見たときにはグレイトなオッサンたちだと思っていたが、あのときはまだ若干30歳の青年ロッカーだったわけだ。ようし俺もRCみたいのをやるぜと東京に行き14年、その後の14年をカナダで過ごしたことになるのか。そんなことをつらつらと思いながらRCの歌を思い出していると、それだけで涙が出そうになる。当分RCは聴けないな。

新聞を見て呆然とする俺に萌が気づく。萌は「どうしたんだ、ヘイヘイベイベ!」くらいは知っているし、俺がファンなのはよくわかってるので同情してくれた。近年NHKで見る枯れたミュージシャンとしてのキヨシローに新しいものはもう期待してなかったけれど、やっぱり生きていてほしかった。同い年のどんとが死んだのもショックだったが、キヨシローはやっぱほんとに別格だった。ジョンが死んだときよりもダメージは大きい。さよなら、キヨシロー。

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■09/05/03(日) □ 紙相撲
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キヨシローが亡くなって1日以上経ったのに、各新聞サイトに号外追悼ページみたいなものが作られないのが不思議。大手マスコミなんてキヨシローファンの巣窟だと思うのだが。いずれ共犯新聞が特別号を出してくれるだろうけれど。

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NHK で紙相撲をやっていて、これを作ろうと萌と2時間ほど盛り上がる。紙相撲というのはスティックが土俵を裏から叩くわけだが、この位置と当たり具合によっては力士が簡単にひっくり返り、あっけなく勝負が終わり面白くもなんともない。そこで土俵全体に振動が弱くイーブンに伝わるようにと、取り付け位置に工夫を凝らす。最終的に厚紙クッションを土俵の裏に取り付け、スティックが直接当たらないようにした。これで長時間の熱戦を楽しむことができるのである。よし。

今日はALが来たので、彼にもモンスター力士を作らせトーナメントに招待した。なるべくバカで怖いレスラーを作るんだぜ、わかったね。で3チーム総当たりで勝負をし、ALの勝ちとなる。彼は本物の紙相撲を見たことがないゆえ異常に底面積の広い怪獣を作ってしまいフェアではなかったのだが、まあゲストだからいいかということで。

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■09/05/04(月) □ 子供TV問題
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最近萌のTV視聴時間がひどく長くなり困っている。子供チャンネルが午後「スポンジボブ」というスポンジに顔と手足がついた安直なアニメなどを延々とやっており、こんなくだらないものを長い時間見てたら頭がバカになるよ、こんなのよりゲームをやってくれたほうがまだいいよと言い聞かせるのだが、萌はなにか絵を描いたりレゴをやったりしつつもこのチャンネルに釘付けになっている。

 こっちのアニメの創造性の欠如はとんでもない。すべて動物かモノに手足がついたものがキャラであり、性格は類型的で、ぎゃーぎゃーと騒がしい会話とドタバタの面白さだけで持たせるのだ。トムとジェリーから何の進歩もない―――というより絵なんか退化している。いかに少ない作業で量産できるかしか考えてない単純な絵には面白さなどかけらもない(↑この2つのキャラを見よ)。

まさに子供だましのモンキービジネス。イヤミとかレレレのおじさんとかベシなどを見せてやりたいものだと思う。ニャロメなんか萌も一目見て覚えたもんな。天才の創造物に触れられたわが子供時代は幸福であった。

ともあれ、これはいかんとMとも相談し、今日からは子供チャンネルは最大1時間と決定した。萌は最近音感が悪くなってきた気がするのだが、それもひょっとするとこういうTVの見すぎによる脳への悪影響なんじゃないかと疑う。まめにピアノを弾かせ、歌を歌わせていこう。

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■09/05/05(火) □ トランジスタ・ラジオ
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Mの通勤の慰めにとラジオを買うことにした。うちの奥さんは国営放送CBC―FMの政治トーク番組が超好きでいつでもキッチンで聴いてるのだが(あれって日本で言えば「ストリーム」みたいな番組なのかな? より穏やかな「アクセス」か)、通勤中に聞けたら楽しかろうと。

しかしカナダ最大の家電ストア Futureshop ではなんと、「いまどきラジオなんて置いてない」といわれ驚く。1つもないの? 次の電機専門店 RadioShack も、高価な据え置きラジオはあれど普通の携帯ラジオはなし。iPod 的製品はどこに行っても何百種類も置いてあり違いがわからん世の中なのだが、ラジオはここまで廃れていたのか。

まあ考えてみれば、普通ラジオを聴くのは移動中で、カナダで移動は普通クルマであり、バス上などでなにかを聞くニーズを持つのはほとんど学生なんだよな。で学生はラジオなぞ興味ないのだろう。俺もラジオなんて仕事で車に乗るようになるまで聞かなかったしな。

 結局見つかったのは Coby という聞いたこともないチープな中国製。内臓スピーカ付きでわずか $12。安い。この値段じゃ音はヘボくて当たり前だと思うが、極小カードサイズ携帯ラジオでスピーカ付きというのが珍しい。スピーカでラジオを鳴らせるのは庭仕事その他俺の家事のお供として最適ゆえ、まるで駄目ならこいつを俺用にキープしMには別なのを探せばいいかとゲットしてみると、これが意外やちゃんと使えてしまうのであった。スピーカ・イヤホンともに実用になる音質で、FMは感度も非常によい(AMは現代では電気ノイズが激しく、どんなラジオでも屋内では聞きづらい)。これは当たりなプロダクトで、自分用にもう1個買ってこよう。

しかしこないだ田中康夫が「アクセス」で言ってた通り、こういう超安い中国製品でも実用上問題ないというご時勢ゆえに日本の電機メーカーは苦労してるのね。今回は予算 $20 くらいで、できれば日本メーカーという感じで出かけてきたのだが、唯一見つかったジャパンクオリティの製品はソニーの $35 スピーカなしというやつだった。サイズも機能も Coby に劣る。勝つとすればブランドから想像される音質だけであるが、俺が普段使ってるソニーのヘッドフォンは音は劣悪なので(※)、いまどきのソニーブランドにはあまり期待もできない。
(※)あれほど音が悪いものをわざわざソニーが作るはずがないので、たぶん OEM だろう。

あのソニーくらいのラジオなら15年前の日本でももっと安く買えたはずで(俺が昔持ってたパナソニックAMラジオは千円以下だった)、つまり日本のラジオはぜんぜん安くなってないわけである。この安さ勝負で負ける傾向がTVやVCRやコンピュータにも及び、日本メーカーは苦戦してるのだろう。

俺とMが使ってる携帯は韓国サムスン製で、うちにある電気製品で最も使いにくく感度が悪く電池が持たないひどい製品なのだが、これが電話会社指定のものなのだから選択の余地がない。こんなものでも売れてしまうのだから、品質や性能で勝負してもどうにもならない世界なのである。勝負できるのは値段だけなのだ。腹が立つが、あとちょっと出してもイイやつがほしいというレンジに日本メーカーが高品質高機能な商品を届けてこないのだから、消費者はどうすることもできない。ソニーがこの Coby の品質を上げたものを $20 で売ればラジオをほしい人は絶対に買うと思うが、$35 スピーカなしじゃ話にならないのである。

晩飯を食べながらテーブルにラジオを置いて、小さなスピーカから鳴る音楽を聴くと気持ちいい。ちょうどいい具合に Under My Thumb がかかった。ベイエリアから、リバプールから、このアンテナがキャッチしたナンバー。RCサクセションはまだまったく聴けない。来年くらいまで聴けそうにない。