2009/10/28

日記「ハロウィーンで気もそぞろ」

「夢見るポップスター」「萌ダンスの今後」ほか。

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■09/10/25(日) □ 夢見るポップスター
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 萌の新しい二段ベッドを見にJDが来訪、前回イモリの活動をあまり見せてやれなかったので、ノボリをフロントに追い出して散歩を見せてやる。ノボリは期待通りフロントでかわいさを披露してくれJDは大喜び。


水中二段ベッドの上下に
収まった2匹。キュート!
 最近水槽に2段に石を積んだ石段を作ってやったのだが、これが大ヒットで魚もイモリもさかんに入ってくれる。ノボリはそこを基点に石段を上下したり、葉っぱに泳ぎ移り休んだり、ゆっくりゆっくり移動してはガラス越しにこっちを見ている。もーなんというか、かわいいとしか言いようがない。日によってはまったく活動しないこともあるイモリたちだが、動いていてくれると部屋の中にナマケモノとかそういう動物がいるのに近いくらいの楽しみがある。爬虫類はどうかわからないが、亀やカエルには圧勝だと思う。

 イモリが活動的なこういう日は写真を撮りまくりたいのだが、デジカメのレンズって映り込みにすごく弱いようで、昼間はどう撮っても水槽ガラスに外光が映り込み、中がきれいに撮れない。小動物に至近距離からフラッシュはあまり炊きたくないので、なかなかいい写真が撮れないのです。

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♪Somebody call 911
 萌とJDはこの夏の大ヒット「911」や「Wizards of Waverly Place」の歌など歌って盛り上がっている。まことそういう、ポップスターに憧れまくる年頃なんだろうなー。自分がポップスターになるというのもリアルにイメージできるだろうし。JDなんかシング&ダンスを昔からやっているわけで、すでに芸能路線をまい進しているわけである。

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■09/10/26(月) □ 萌ダンスの今後
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 萌の初心者ヒップホップダンス全6回の最終レッスン。風邪が流行ってるのか半分もの生徒が欠席し、先生も代理になっていた。代理先生は当然何を習ってるのか知らないので、生徒たちから課題の「911」のステップを教わりながらレッスンが進む。

 萌はすべての振りを完全に覚えているのだが、空手をやっていたときのようなエレガントさがまだ身についていない。1つ1つの振りがぶるんぶるんとブレている。これを直したいのだが、俺自身シロートでありどうすればいいのかわからない。休憩のとき「あまり体がバウンスしないように、先生みたいに抑え目に踊るといいかも」と声をかけてみたが、改善効果はなかった。

 今後ダンスをするなら、ボディバランスを高め体のブレを消す方向に進めたいわけだが、このコミュニティセンターの初級コースじゃ次も同じこと(下手をするとフルリセットでステップを最初から全部やり直すという可能性すらある)をやるだろうし、空手と違い個々人の指導は一切ないので上達は望み薄である。

 やはり独立ダンススタジオに行くしかないだろうが、萌が5歳のときに入れたバレエスタジオは最悪だったんだよな。親に一度もレッスンを見させてくれず、その挙句リサイタルがあるからチケットを売れと言ってきたので呆れてやめたのだが、ダンスやバレエはどこもそんな調子らしい。この先生たちが派遣されてるところを調べてみてもやはり、高いし規則がうるさく高飛車で、「親の入場は教師の許可次第」と明記してある。こういう人たちは、ダンスレッスンは教育であってサービス業ではないと思ってるのだろうが、親が見てたら集中できないなんてことはないだろう。レッスンを見れる保障がないという1点でこっちはやる気をなくすのである。日々の進歩を見れなくては、子供に習い事をやらせる甲斐がない。

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■09/10/30(金) □ スクール・ハロウィーン
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これが恐ろしい「偽マザー」

そしてそのコスチューム
 スクールのハロウィーンパレード。例年通りキッズはペアレンツの前を一瞬で通り抜けていき、わざわざ行く甲斐もない行事である。誰か先生が一人ジムに常駐し、「次は誰それのクラスです!」とアナウンスし、みなが見れるよう観衆の前でいったん足止めしてくれるだけで盛り上がりもキッズのうれしさも5倍だと思うのだが、誰も思いつかず毎年こうして変わりもせずやってるんだから、カナダの教務者にそういうサービス精神はないようである。

 萌が今年扮したのは映画「コーラライン (Coraline)」の怖い偽マザーで、目がボタンになり、指先は銀紙の触覚になっている。なかなかインパクトがあると思う。

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 夕方MKの誘いで、町内にオープンしたモンゴリアンレストランというところに行く。日本で言うジンギスカンラムだろうと思ったらぜんぜん違い、肉と野菜とソースを客が選んでボウルに盛り、巨大な丸鉄板グリルで待つ兄ちゃんのところへ持っていって焼いてもらうシステムになっており、これをカナダではモンゴル料理というのだそうだ。


五右衛門風呂風
モンゴリアングリル
 食材はありふれたもので、肉なんかコリアン肉屋の冷凍薄切り(冷凍のままスライスしてる時点で組織が壊れている)を解凍もせず焼くんだからうまいわけないのだが、しかし野菜がうまい。鉄板の火力が強力なのでカラっと素晴らしくクランチーなままきちんと火が通った野菜炒めができるのである。俺はたまたま中華焼きそば麺を選んでいたので、期せずして焚き火鉄板焼きそばみたいになってうまかった。こんなチープな店でこれほど見事な炒め物ができるんだから、やっぱ炒め物は火力と熱面の面積が命なんだなあと改めて思う。

 うーん、こういうのが家では作れないんだよと俺がぼやくと、IHヒーターでバーベキュー用の鉄板を使ってみたらどうかという。IHヒーターなら大きな鉄板全体がちゃんと熱くなるものなんだろうか。あの一見五右衛門風呂風のモンゴリアングリルがほしい。

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■09/10/31(土) □ ハロウィーンで気もそぞろ
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 ハロウィーンに興奮した萌はここ数日上の空かルード(非礼)かで態度がまったくよくないのだが、本番となる今日はもー朝から駄目駄目で、コスチュームの着付け等をめぐり俺とケンカになる。今日はSFU大学の化学・物理教室が「化学のハロウィーンショー」みたいなのをやるということでJDも誘い来たのだが、気持ちが高ぶった萌は常にJDに話しかけまくり、ステージをまったく見やしない。せっかくスペシャルなイベントに連れてきてやったのにとこれでMも怒ってしまい、興奮を制御できない娘と怒った親2名という嘆息のハロウィーンになってしまった。

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ドライアイスの煙漂う
トリックorトリート
 今年はMが萌をトリック or トリートに連れて行き、俺は玄関で子供の応対をしたが、うちの近辺は年々小さな子供が減っているのが明らかで、今年は応対が計10回、50名に満たなかったと思う。今年もキャンディがたっぷりと残ってしまった。去年の経験から、残ったら俺と萌が食べられるシンプルなチョコレートとキャラメルにしておいたのだが、それにしてもまるまる1袋以上残ってしまったのだから消費は大変である。

 うちのこの通りは隣のJKのように孫がある家が多く、PoCo では古い住宅地なのだろう。萌たちが行ったWL家近辺はここ10年くらいにできた住宅地なので若い家族が多く、町中を子供が練り歩き大盛況だったらしい。俺とMは終日げんなりだったのだが、萌は記録的な量のチョコレートをもらってきて俺とMとBRに分配もし、これだからハロウィーンはやめられないとご機嫌であった。

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 【天皇賞ネット観戦】ウオッカのほかに俺が知ってるような有名馬がいない。これは名馬が負けるパターンだなあと最初から感じる。ウオッカの様子はいいので体調は万全だろうが。

 レースは回線が途切れて4コーナーからしか見れなかったのだが、ウオッカは普通に能力通り走った感じで3着であった。勝ったカンパニーの走りが素晴らしかったので、これはディープインパクトがハーツクライに敗れた有馬記念などと同じで、力のある敵がパーフェクトなレースをしたら、いくら天才馬でも普通の走りじゃ勝てないということだろう。残念というしかないが、普通の走りでも3着は楽に確保できるのだから、まだウオッカは終わったわけじゃないはずだ。

 勝ったのは横山ノリだった。秋の天皇賞は初勝利だそうである。うーん、そうか。メジロアルダンでの2着から19年、そんなにも長いことこのレースを勝たずにいたのかノリよと、ダービーのときとまったく同じ感慨に打たれる。初めてのG1ウィニングランなのか大歓声におびえたカンパニーが暴走しそうになるのを、ノリは笑いながら手綱とひざを使い御していく。若い頃から変わらない運動神経と馬乗りのうまさを見せびらかしながらの凱旋だ。

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 あとで Youtube の映像を見ると、スタート後ユタカがつーっと下げて、ゴール前ではまたも隙間がないところにはまってしまっていた。カンパニーたちが抜け出してやっとスペースができ一瞬しゅっといい脚を見せたが、最後は同じ脚色になってしまっていた。これは安田記念に続きユタカが下手で、あそこから勝てば再びミラクルだが、競馬は馬に奇跡を見せてもらうショーではなくスポーツなのである。33 秒で上がる馬を追いかけて交わすなんてことは物理的に不可能なのだ。新聞には「引退も」なんていう調教師の言葉が出ているが、下手なレースをして負けて引退なんて悲しいではないか。有馬記念はいらないが、もう一度府中を走ってほしい。一月後のジャパンカップで。

2009/10/23

日記「非仏教的体験」

「メロディ・フェア」「ホームページ引っ越し」ほか。

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■09/10/18(日) □ 非仏教的体験
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 Mが昔から興味のある仏教のメディテーションクラスに萌を連れて行くというので、どんなものかと興味があり俺も参加した。インドっぽい曼陀羅が飾られた祭壇で、日本の仏教とだいぶ違う儀式様式は面白いのだが、先生は一般の、それもかなり初心者に近い信者のようで、あまり言葉に重みは感じられない。

 お釈迦様に水と米(白い砂利)を備えてから、仏教とは何か、釈迦とはどういう人なのかみたいなこの宗派の子供向け教本を先生が読んだのだが、この内容がなんかすごく非仏教的であった。釈迦は世界を愛で救う素晴らしい方であり、どんな存在よりも愛の力が強く云々.....。こんな釈迦崇拝思想なんて、これまで聞いたことがない。外に出てから、「なんかこれはキリスト教の教義のジーザスをシャカに変えただけじゃないの」とMにいうと、「(そうよねえ!)」と小声で強く同意する。

 ここは子供向け瞑想レッスンがあるということでわざわざバンクーバーまで来たのだが、呼吸法やら心の持っていきかたみたいな技術系の話は何も出ず、萌も俺たちもただ座って静かに目をつぶっているだけで、得るものなくレッスンは時間は終わってしまった。

 別室の大人のメディテーションルームではチャントをやっていたのだが、これには西洋音階がついている。お経っぽい韻律を西洋人がつけやすくするためなのだろうが、西洋音階なので賛美歌に聞こえてしまう。歌詞カードを見ながら聞いていたのだが、この歌詞もやはり世界人類が平和でありますように、お釈迦様は祈っていますみたいな内容で、ほんとに賛美歌みたいであった。

 「仏教というのは、自己を研鑽し欲望を克服してより高い存在になるみたいな思想だと思うのだが」「それがゼン仏教よね、私もそういうのを期待したのよ。ここはだいぶ違うわねー」ということで、興味深くはあったが非常に非仏教的体験だったのです。

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 続いてインドのお祭り、バンクーバー・ディワリ・フェスティバルへ。ディワリなんて聞いたことがなかったのだが、インド最大のお祭りで、チャイニーズニューイヤーのようなものらしい(※)。バンクーバーの市長がお祝いを述べに来ており首相の電報まで入っていたので、インド系人口が多いBCではそれなりの行事なのだろう。
(※)後で調べて知ったが、ヒンドゥ教の神の帰還を祝うお祭りだそうです。

 あまりうまくない屋台のインドカレーを食べながら催し物を見る。シタールを持ったインド楽団が最初に出てきたのでおおと興奮するも、シタール奏者だけなぜか白人女性で、彼女が下手なのかまったくマイクで音を拾ってなくて聞こえなかった。残念。

しかしタブラというインドのボンゴが最高で、これを生で聞けただけでも快感であった。左手でドスっとバスドラ的にリズムを入れ、右手は全部の指を使いタッタカタッタカと細かいリズムを刻み、立ち上がりの鋭い音で素晴らしいリズムが出る。おー気持ちいい。

 しかし楽器の音色は最高だが、歌は例のあの他世界から隔絶した独特なインド歌謡で、どう聴いても他国人には面白いとは思えないエグく単調なメロディなので、1曲聴けばもうたくさんという気分になってしまう。俺だったらシタールをもっと強調しタブラをタッタカ鳴らして「Paint It Black」でもやって盛り上げるけどなあなどと考えつつ、2曲で飽きて萌とともに場内を散歩した。

フェスティバルが行われたラウンドハウスというこの建物は、昔の鉄道車庫を改装したコミュニティセンターで、機関車を回転させるアレがそのまま残っており、車庫はそのままホールとなり、汽車も1両保存されているなかなか鉄道的にすごいところだった。こういうところが残ってるんだから、やっぱり都会はすごいな。

 その後インディアンダンスが何人も出ていたが、トラディショナルな民族舞踊というものもやはりさほど面白いものではない。日本舞踊と同程度の興味しか感じない。音楽はなんでもライブで見れば楽器の音が気持ちいいので気持ちが高ぶるが、ダンスはよほどよくないと俺は興味を保てないようである。

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■09/10/21(水) □ メロディ・フェア
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 萌が二度目のランチタイム・モニターをする(昼食どき、上級生が先生の代わりに下級生のクラスを監督すること)。下級生に命令を下すというポジションに高揚したWL小僧がえばるのを、ちょっとあんたエバらないでよといさめてやさしいお姉さんとなっているらしい。

WLとASが喧嘩しているときに萌が無視され腹を立て、「まるで私が目に入らないのよ!」だとか言ってたのだが、今日その話をしたら好きなALに「僕の目はいつだって君を見ているよ」といわれたという。―――くー! なんちうスイートでいい奴なんだあいつは。この子はこないだも萌に、「僕は学校が好きさ。君に会えたからね」などと言ったそうである。萌はもうドギマギになり、「なにそれ、何を言ってるのかよくわかんない」などというおばかな応答しかできなかったそうだ。頭の中でビージーズの「メロディ・フェア」が鳴りそうなかわいさである。


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■09/10/23(金) □ ホームページ引っ越し
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 クボの「共犯新聞」サーバーのアカウントが削除されてしまった件をヘルプしていて、96年から13年にわたり存続してきた Geocities 上のわが古文集積サイトも10月末で廃止されることが判明し、朝いっぱいかけて引っ越しをした。リンク直しがほぼすべての作業でけっこう大変だったが、すっきりである。tomosakata.hp2.jp、短く気分のいい URL が取れてうれしい。

 あそこに置いてあった書き物は古くは93年からのものがあり、今読むとけっこうイタイ(パーソナルすぎて人に見せる価値がない)ものも多い。徐々に整理していこう。

2009/10/17

日記「馬鹿教科書の謎」

「イモリ水棲に戻る」「夢の二段ベッド」「前庭に墓場」ほか。

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■09/10/06(火) □ 馬鹿教科書の謎
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 週末に続き、今日も萌が数学の宿題に1時間半かかる。フランス語がわかる天才数学青年MKのヘルプを得てなお、である。なんなんだこれは馬鹿ばかしい。明日先生と談判しよう。

 だいたいこの教科書からして馬鹿なのだ。巨大な百科辞典みたいな重い教科書で、先生に常識があれば「机で開けばノートを置く場所がなくなる教科書」というモノ自体馬鹿げてるとわかるはずだし、こんな重いものを子供のバックパックに入れ家と学校を毎日往復させる不毛さに気づくはずだが(最初期のラップトップコンピュータより重くでかい)、その物理的馬鹿さに加え設問がひどい。ほとんどすべての設問が答えを文章で書くようになっている。

 たとえば今日は公約数・公倍数をやっていたのだが、「この図は何を意味するか述べよ」という設問になっており、

「左の丸には3の倍数が入っており、右の丸には4の倍数が入っており、オーバーラップする真ん中には3と4の両方で割れる数が入っている」

と書かなければならないのである。そんなことは一度説明されれば子供はわかるわけだが、疲れた夕方に定義を【文章化】しそれを(フランス語で)書くというのは、はなはだしく時間がかかる作業になる。これだけで萌はMKがヘルプに来るまで30分くらいひっかかっていた(※)。
(※)萌が設問を英語に翻訳できれば俺でもヘルプできるが、文章の意味はわかってもそれを他人にわかるように翻訳することは子供にはなかなかできない。理解と翻訳は別のスキルなのである。翻訳者の俺が言うのだから間違いない。

 「ただ答えを書くのではなく、こうすることで子供はより深く理解できるのだ」という教科書メーカーの意図は明らかだが、子供の労力と自由時間を犠牲にして「深い深い」と悦に入るところが馬鹿だといいたい。従来と同じ所要時間で理解を深くしてもらいたい。そもそも公約数・公倍数にそれほど深く理解するほどの深さがあるのか。この馬鹿教科書と、それを無造作に大量に宿題に出す教師のせいで、子供は毎晩泣いているのである。馬鹿ばかしい。

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■09/10/07(水) □ 馬鹿教科書の謎が解ける
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 放課後、萌の宿題が終わらない問題を先生と話す。結局2Pのうち半分はクラスでやっており、残りを家でやるとのことで、「2Pなんて与えていない」と彼はいう。「しかし今の数学は昔と違って、文章を書いて答えるようになってるじゃないですか。だから時間が余計かかるわけですよね」と、遠まわしに1ページでもぜんぜん多すぎると訴えると、「この教科書は学校が選んで買ったもので、宿題は復習としてやらせてるだけで、やるかどうかは親次第だ。別に翌日答え合わせもしていないし」という。

 なんだか意味がよくわからないのだが、続いて「これが今日の宿題だよ、これが私の教え方だ」と彼が見せたプリントは、同じ公約数、公倍数という主題をより簡潔に、チャートの空白部分に数字を入れていくといった作業を主体に済ませるものであった。あ、これはいいですね。ずっといい。―――しかしこうして簡潔に教えたいならば、自分が気に入らない教科書のページなど宿題に出さなければいいではないかと、結局不満が解消しないミーティングとなった。

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 後からMの持つ情報と合わせ考えてみると、この馬鹿教科書は学校が選んで買い子供にレンタルしてるのだそうで、やっと全部がつながりわかってきた。

 萌は週末の宿題の設問と図を全部ノートに書き写すという馬鹿げたことをし、「先生にそういわれたのだ」と言っていたのだが、それはおそらく先生が「教科書はレンタルだから書き込んじゃ駄目だぞ、ノートに書くんだ」とか言ったのを曲解して、全部書き写したのではないか。

 もちろん萌の勘違いなわけだが、ノートを見れば書き写したのは図に書き込みをする必要を感じたせいもあるのだとわかる。つまり教科書貸与という仕組み自体が、書き込みができないという形で子供らにもう1層の負荷を与えているのだ。重量体積の物理的負荷、設問による長時間負荷、そしてレンタル不便さ負荷の三重苦である。

 ここまで考え、これはあの規律と体育重視、自由と知育軽視のカタブツ校長が噛んでいるのではないかと思えてきた。こんな重くでかい教科書を現場で教える教師が選ぶほうが不自然であり、内容だって親が見ても教師が見てもよくないから今日からプリント宿題に切り替わったわけだ。丈夫で長持ちするハードカバー教科書をレンタルで使えば長期にはコストが削減できるみたいな教科書メーカーのトークにだまされ校長が導入を推進したのだと思えば、すべて辻褄が合う。馬鹿げた重さも彼女ならばスポ根的に受け入れやすいだろうし。

 俺がこの推論をMに話すと、たとえ校長が教科書を選んだとしても、教師はそれを使う義務なんか教育法上ないんだから、この先生の資質を疑うわという。俺も同感である。今日の宿題には文句はないが、今後もあの馬鹿教科書に縛られ毎日宿題が来るのであれば、彼を心から信頼することはできないな。

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■09/10/09(金) □ イモリ水棲に戻る
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最近イモリのジムシーが顔を水につけても嫌がらない様子が見えるので(体調が悪いと呼吸が苦しくなるのか、拒食が始まってからは水に顔がつかるとパニックになっていた)、午後深いところにそっと降ろして水中散歩テストしてみる。するとやはり植木鉢に潜り込み5分も探索し―――これほど長期に水上生活をしていても、肺活量は落ちてないらしい―――、水草を伝って水面で息をしてからまた潜っていくという、調子のいいイモリのような行動をしている。実に 47 日ぶりの水中活動なり。うれしい。

 そしてその後ジムシーはなんと水上に上がらず、ホーム岩陰の浅瀬水中に落ち着いてくれた。散歩を機に完全に水棲生活に戻ったのである。やっ・た\(^o^)/。これはいずれ自力でまた捕食もできるようになるだろう。無用なストレスや病因を与えぬよう気をつけよう。ノボリはもう寒さにも慣れて常時絶好調だし、イモリを飼う喜びが十分に味わえているこの頃だ。

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■09/10/10(土) □ 夢の二段ベッド
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SFがいらなくなった2段ベッドを萌がもらい、今日ADが持ってきてくれたのだが、これがすごいベッドだ。IKEA なんかで子供ならば誰もが登ってしまうようなすごいやつ。ラッキー萌。

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 水槽を軽く掃除。それをやってる間ノイズを嫌がり水に逃げ込んだノボリとジムシーが、なんと連れ立って水中散歩を始めた。ノボリが先導し、47 日間水中散歩をしたことがなく土地勘のないジムシーはそれについて行ったのだろう。か、かわいーと萌と俺は大喜び。2匹が活動してると2倍楽しい。

 「やっぱりペットってイイよねえ」と萌はいう。「なんかやってあげて、ペットがそれを使うとうれしいし」。ああ、それは工夫っていうんだ。You try something and it makes things better ってこと。工夫してやってそれでペットがハッピーになると、ほんとうれしいよね。萌が生まれたばかりのときに、ベイビーの世話は小さなもの言わぬものたちの世話と同じ喜びがあると日記に書いたが、まったくそれがペット飼いの喜びだよな。

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 夕方、浅瀬にいるジムシーにエサをそっと差し出してみる。―――食べた! やっ・た、カムループスから 54 日ぶり、強制給餌開始から3週間余。長かった。感動(泣)。

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■09/10/12(月) □ 前庭に墓場
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夜の墓場で

サンクスギビング。うちは特に行事はなく、萌に宿題をやらせたり庭掃除を手伝わせたりする。夕方、萌の案で前庭にハロウィーンっぽい墓場を作成。なかなかいい感じにできました。

 コスチュームは夏に萌がはまっていた「コーラライン」の目がボタンになったキャラクターで、マイクが厚紙を切り抜いて大きなボタンを作ってくれ、これに黒いケープを合わせる予定。目がボタンというのは映画でもそうだったがなかなか不気味である。

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 その後宿題は、わずかな量になっている。まったくない日もあり、先生が言った通りしっかり集中すれば学校で済ませられるだけの分量なのだろう。萌もペースが掴めてきて、家に持ち帰る必要がないのだと思う。やれやれ。

2009/10/03

日記「カナダの九九問題」

「ロック親父苦悩」「英語式九九」「相撲と格闘技」ほか。

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■09/09/22(火) □ ロック親父苦悩
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 萌のカーCDを久々に作り、彼女が最近がっぷりはまっているティーンポップのうち俺が聞いて耐えられるものに昔のダンスポップみたいのを加えて入れてみたのだが、バナナラマ「Cruel Summer」をかけてるときに、「お父さん、本当に悪いんだけど、私もうそういう昔の音楽は聴きたくないの。なんか、スローだし」と言われてしまった。がくー。俺だって特に好きでバナナラマを入れたわけじゃないのだが。

 これは現代ポップ以外は聴きたくないという萌のオフィシャルな表明である。まあ仕方がないので、「お父さんはああいうの(ティーンポップ)は我慢できんから、これからは萌のためのカーCDは作らんよ。ああいうのはCDプレイヤーでヘッドフォンで聴きなさい」という。

 じゃあ「Boom Boom Pow (Black Eyed Peas)」というのを入れてと、Youtube で俺に聞かせる。これがあまりにもひどいのでもうほんとにがっくりきた。車にスーパーウーファを積んで周り中の車の窓まで奮わせる馬鹿が鳴らすようなアレである。

 「萌さ、これは音楽ですらないノイズだよ。こんなものを聞いてたら頭がバカになるよ。いくらなんでもこれはダメなり」と諭す。「でも学校でみんな歌ってるんだよ!」。これはもう、カナダの小学校にいる限りクソポップ音楽からは逃れられないということなんだろう。もちろん日本の小学校にいればクソJPOPに俺は同じくらい悩まされるだろうが。

 萌には小さい頃から日英ロック・ポップの古典をさんざ聞かせてきたのだが、この夏9歳にして音楽趣味はガタガタっと俗化してしまった。結局「音楽趣味のいい子供」なんてのはあり得ないんだろうな。子供は社会性の生き物で、友達が好きなものはすべて好きになってしまい、それはTVに出てくる高刺激性のものなのだ。最近萌が集中力ないのも、実はこの脳と耳神経を破壊する Boom Boom 嗜好と関係あるのかもなと思えてきた。

 Mにこの俺のロック親父苦悩を話すと、親がどうしようと子供はポップにはまる時期があるのよ、いずれまたいい音楽がわかるわよとのこと。それはそうなんですが。とほほ。

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■09/09/23(水) □ カナダの九九問題
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 萌の風邪が治り明日から学校に戻るのに、週末の宿題が終わってないことにMが気づき、目を通していて萌が掛け算を忘れていると判明してやり直しをさせる。英語には九九がないので大変なのは知っていたが、Mの教え方が 3、6、9、12...と答えだけ暗誦させるというものなので、後であのさあと話をする。3x5 の答えを出すのに 3、6、9、12、15 とやっていては遅くて実用にならんではないか。これがカナダ式なのかね?

 Mは自分はこうして覚えたが、なにが萌にベストな方法かなんてわからない、文句があるならどうしたらいいのか言ってくれという。―――いや、日本じゃ「九九」という表があって歌みたいに覚えるんだが、萌が掛け算を始めた去年紹介しても食いついてこなかったのだよ。英語で覚えてるところに日本語の九九を入れても混乱するっていって。

 するとMは数字は万国共通で混乱などせんと九九導入を命じ、明日から俺が九九係となってしまった。日本の皆が思うとおり九九が本当に優れているのか、頑張って証明せねばならない。

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 しかしカナダではグレード4からは学業がそれまでとは桁違いの厳しさとなるな。これまで宿題ほぼゼロだったのだが、いきなり1時間以上もかかるものになるとは。ヘルプしてやりたいのだが、フレンチエマージョンだと半分以上は設問もフレンチなので、親も意味がわからずお手上げだ。

 俺が子供の頃、こんなに遊びに支障が出るほど宿題なんかなかったぞ。カナダでも日本でもこの宿題の嵐は近年のことなのだそうだが、これじゃ子供が学校嫌い....にはならんだろうが課題嫌いになりそうだし、この宿題量に加えて九九と漢字練習なんて酷でやらせられん。学校はこうだし、音楽その他の趣味は完全にTVに操作されてしまうようになり、この夏を境に萌の生活は激変している。萌はハッピーなままだが俺はあんまりうれしくないのである。

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■09/09/24(木) □ 英語式九九
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 夜、萌に九九を教えようとしてみる。しかし萌は半端ながらも英語ですでに覚えているので、「さざんが?」と聞いても「(3 times 3 is....) 九!」と英語で考えて答えてしまう。九九のメリットは語呂をよくして口で覚えることにあるわけで、これではまるで意味なし。余計な手間が増えるだけである。

 それではと、「Three times Three is Nine」じゃリズムが悪すぎて口が回らない、発音に集中しないとちゃんと言えないからそっちにブレインパワーが使われ答えが覚えられないんだよと説明し、九九は発音が超簡単だから覚えやすいのだとメリットを教え、「Three Three is Nine」と times を省略させることにした。times をスキップすれば語呂が飛躍的によくなる。萌がはまっているヒップホップ風に、

「♪Three Three is Nine, oh yeah, don't you know, Three Four is Twelve, oh yeah, can't you see?」

といったバカ節を作り歌うこともできる。この英語式九九で覚えてくれ。

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■09/09/26(土) □ 相撲と格闘技
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 萌がスーパーショートヘアにカット。かわいいといえばかわいいが、前はナチュラルにかわいかったのが作為的にかわいくなったわけで、なんか無用なことだと思う。まあそれがファッションというものか。ロングヘアが似合うかわいい女の子はみんなショートヘアにする傾向があるといえる。

 萌がヘアカットしている間CTでキャンプ用具を見る。この冬親戚揃ってハワイに行くという話があるのだが、そんな金を使うなら日本に置いてきてしまったすべてのキャンプ用品を買い直し、コット(キャンプ用ベッド)なども揃え豪華快適なキャンプ旅行が5年はできるんではないかと考えてしまう。海外旅行やらホテル滞在やらで金が瞬時に消費されていくのは悲しい。

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 大相撲千秋楽、白鵬が負け単独首位になったあたりから「てめえらふざけんなよ、俺を誰だと思ってるんだ」的な気を発散し、ピークは過ぎても大関陣の2倍は強いというところを見せまくっていた朝青龍が、これまた怪我(?)があっても地力に加え技術の切れもすさまじくなってきた白鵬とすごい相撲を取り優勝。前回の優勝決定戦同様、自分の力を相手よりも下と覚悟して白鵬の力を封じ切った朝青龍もすごければ、一度も有利な体勢を取れないのに押し出されず残し、朝青龍の体をこじり起こし体勢を入れ替えようとした白鵬もすごかった。

 しかし解説の2人が、「白鵬が勝ってほしい、稽古してない朝青龍が勝ったら相撲がダメになる」みたいなアンチ朝青龍論を毎場所連呼していて、つくづく辟易させられる。あんたたちが相撲のしきたりをどれほど愛そうと勝手だが、格闘技の面白さ、アスリートの輝きを見る喜び、天才同士の戦いを味わえる幸運を味わっているその瞬間に、リアルタイムでケチをつけないでもらいたい。相撲を見ているのはしきたり愛好者だけではないのである。

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■09/09/28(月) □ 近所の火事!
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 寒い一日だった。朝は外で息が白く、室温も終日20度から上がらずじまい。もうじきヒーターもキックインするだろう。

 水槽は朝18度だったが、アカヒレとイモリにはまったく問題ないようである。イモリ2匹は動きがないので寒そうに見えるのだが、これはもともとこうだからどう感じているのかまったくわからない。

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 夜、消防車がうちのブロックにウイーと入ってきて、窓から見ると1ブロック向こうの家が燃えている。オーマイゴ。木の向こう側にチラチラと見える炎がどんどん大きく明るくなっていく。早く早く、早く火を消してやってくれ、気の毒すぎる!

 じりじりしていると3分ほど経ってようやく放水が始まり、するとみるみるうちに火が消えていった。残ったのは膨大な煙のみ。はー、よかったー。あれほど簡単に消えたところを見ると、燃えていたのはガレージかなにかだったのだろう。うちからはかなり遠いのでほとんど煙さは感じないが、近所数件はひどいことになっていそうだ。

 火事は恐ろしい。恐怖と興奮で涙を浮かべる萌と、今日燃えたのは多分ガレージで、ガレージにあるものなんて全部お金で買い直すことができるからいいけれど、家が燃えたら最悪だよねと話す。火事が起きたら何を持ち出すか。まず全員分のPC。アルバム。各種書類。ビデオ.....と考え始めると、やはり家の中で金で取り返しがつくものなんてほとんど何もない。家事は本当に恐ろしい。

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■09/09/30(水) □ DSで学習
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 買い出しとみなの送迎で一日が過ぎる。萌がやっと宿題のペースをつかんだようで、今日はすでに学校で終えていた。もともとクラスでやる課題の残りを宿題として持って帰らされているのだそうで、授業のほうに萌のペースが合ってきたのだろう。

 萌の宿題苦労や授業の様子などをMが新しい先生に尋ねたところ、意外や萌は授業中しっかり集中してやってるそうである。家では最近集中力皆無で、いろんな場面で俺はうんざりさせらているのだが、学校では違うのね。疑ってすまなかった。

 おかげでようやく時間ができたので、ここんとこご無沙汰になっていたDSの「漢字なぞって」と掛け算30マスをやらせる。答え合わせがリアルタイムのDSペン学習はテンポがいいので気持ちよく、時間が無駄にならなくていい。漢字はすでに大半を忘れていそうな2年生レベルをやらせてるのだが、思い出せない字もヒントとしてヘンとかツクリを書いてやると萌もやはりおぼろげに形は覚えており、それ風な字を書く。「漢字なぞって」は判定エンジンがすばらしくユルいので、かなり崩れた「それ風な字」でも正解としてくれモチベーションが上がる。コンピュータに読める程度の字なら逆に人間は文脈も合わせ強力に類推できるわけで、漢字力としては実用に近いものが萌の身についているともいえる。

 30マス掛け算はまだ完璧ではないが、70% 台から 80% 台へと正解率が上がっている。毎日の繰り返しでじっくりと 100% を目指そう。