2011/04/29

日記「日本人の音楽リテラシー」

「カナダの画家たち」「中学校見学」「NHK『おひさま』の楽しみにくさ」

=======================
■11/04/17(日) □ カナダの画家たち
=======================

 となり町ポートムーディのアートフェスへ。町のお祭りなのかと思ったら、PoMo でスタジオを借りてやってる画家たちの合同イベントで、町では特に何もやっていなかった。街路樹が1本アーティストによりショッキングブルーに塗ってあった程度。

 カナダのアートというのはいつも思うのだが、特に風景画は凡庸なものが多い。写真から構図をていねいに写し取ってきれいに色を塗ったみたいな絵が並んでいる。つまり写生ですね。題材も湖に杉と山いう、カナダだったら全国津々浦々どこにでもある風景が多いし。俺に絵が分かるのかといえば分からんのだが、日本でやってたバンドのメンバーは全員美大生だったので、あいつらならこんな平凡な画想は抱かないだろうくらいは分かる。


こういう題材を筆でていねいに
描いているわけです。
  一番脱力したのは海辺のデッキチェアを精密に描いたものだった。リゾートに行ってビールでも飲んで感じた幸せを描いたのだろうか。そりゃよござんしたねくらいしか言いようがない。こりゃ絵日記の挿絵である。

 しかしこのイベントに誘ってくれたGYの絵はよかった。実は彼女の家にある自筆の絵をいくつか見て、ああこういう感じなのねと軽く予断を抱いていたのだが、出来がいいのは当然ながら全部こっちのスタジオに置いてあったのだった。彼女の絵も風景画だが上記のような写生ではなく、美しい風景に打たれた心象を水彩でしゅっと表している。風景から色彩と陰影を切り出す筆さばきにスピード感と俳句的な芸があり、オリジナルな美を作り出している。とても気持ちがいい絵であった。

=======================
■11/04/20(水) □ 中学校見学
=======================

 9月から萌が行くMC中学校の説明会へ行く。4人ほどの教師が「チーム」となりお互いに互助していくという学業システムの説明もよかったし(これは秀逸な仕組みで、馬鹿な教師の怠惰と暴走を抑制できる)、多彩な課外活動の話も胸が躍る。

 音楽室にはドラム2台、ガットギター20台、エレキとベースが10本、ミニキーボードが10台もある。これだけあればクラス全員に楽器が行き渡るだろう。指導の先生が元ミュージシャンだったというおじいさんで、「スモーク・オン・ザ・ウォーター」などを教えているとのこと。その横には体育館とは別に舞台アート専用のステージを持つ小さな講堂があり、照明や音響が完備されている。

 教室を巡ってみるとどのクラスもテーマを決めて生徒たちが紙類で飾り付けており、ごちゃごちゃっと乱雑に賑やかでいい感じである。どの教室にもカウチが置いてあり、フレンチ8年生のクラスにはなんとバスタブが置いてある。これはなにかと尋ねると、生徒が落ち着いて本などを読めるよう他のクラスはカウチを置いてるんだけど、私はこれに決めたのよとファンキーな先生が言う。こりゃいい学校だな。施設も校風もいい。ここに通うカナダの子供が羨ましいよ。

=======================
■11/04/25(月) □ NHK「おひさま」の楽しみにくさ
=======================

 3週間経っても NHK「おひさま」は面白いのかどうか今ひとつ分からず流し見してるのだが(まあダメな朝ドラは1回目ですっぱり見限れるから、まるでダメではないのは確か)、満島ひかりさんがとても魅力的だ。誰かにすごく似てるなあとずっと考えていて、姪のSFだと思い至る。

 満島ひかりさんは別に外国人ぽくなく、SFはアジア人ぽいところがまったくないのに、2人はそっくりなのが不思議。

 しかしこのドラマはなぜか、戦前の日本を現代のおばあさんが振り返るという意味のない二重構造になっていて、そこが味を落としている。元気で明るい主人公の60年(?)後が若尾文子だという設定だけですでに物語の結末を見てしまった的な大きな興ざめ感があるし、斉藤由貴のべちゃっとした芝居がそれに輪をかけて興ざめを加速させている。なんなのかなこの馬鹿げた無駄は。

 だいたいナレーションというものがなければ視聴者は物語の意味や感情の機微がわからないと思ってるところが、朝ドラ制作者はひとを馬鹿にしている。解説不要のベタなストーリーではないか。「あの頃は喫茶店に行くだけでも大変な悪いことだったの」「男の人に手を握られただけで死にたくなったの」なんつーナレーションは単に自明の繰り言であり、現代シーンと共に物語の鮮度を意味なく落としているのである。

=======================
■11/04/26(火) □ 日本人の音楽リテラシー
=======================

 萌を学校で降ろしたあとラジオで珍しく Zep の「ランブルオン」がかかり(普段は Zep でももっとメジャーな曲がかかる)、なんちういい音が詰まりまくった曲なんだと改めてびっくりした。イントロでスティックがパタパタと鳴り出しただけでウオウ気持ちいいと肌がざわざわする。あれは何を叩いてるんだろう。座布団?

 これをレコードで聴いてた高校生の頃は、こんないい音に気がつかなかった。大人になってからも多分わかっていなかった。年を取るといいことはあまりないが、前には分からなかった良さがわかったりすることもあるのだ。

 ラジオや MP3 じゃなくてもっといいハイファイで「ランブルオン」を聴きたくなるが、レコードもステレオも日本に置いてきてしまったよ。そしてたぶん実家の母親に捨てられちまったよ。哀愁のヨーロッパ。

 俺はアコースティック的にいい音が聞きたいのだが、それは別にアコギの音とは限らず、人間の手足が楽器に触れることで出てくる、不定形な音が気持ちいいのだ。たとえば軽く歪んだエレキギターのざくっとしたコード音、ボンボンとスキップするベース。ポップ音楽にはこういう《人が楽器を鳴らしそれが空気を震わせている音》がまったく不足している。たとえば中島みゆきの歌はすごいと思うが、彼女の歌を構成する楽器の音は全部つまらない。レディガガの今流行ってる曲(Born This Way)も、メロディはかっこいいが単調なシンセ音に耳が耐えられない。

----------------------
 しかしこうしてカナダのラジオから流れてくるロックのうちイイものは大抵知っている日本のリスナーのロックリテラシーは、国際基準でも相当に高いんじゃないかと思う。これに加え日本の音楽も同量以上に知ってるわけで、総知識量は間違いなく英米加ロックファン以上だ。

 カナダで暮らしていて悔しいのが、日本のすんばらしい音楽をどうやってもこうやってもカナダの人たちに伝えることができないことで、奥田民生などを聞かせるといいねと言ってくれるけど、それ以上踏み込んではもらえない。やっぱ一緒に歌えないという言葉の壁は厚い。

 俺はもしラジオからサンボマスターみたいのが聞こえてきたら、それが何語であっても反応すると思うが、そういうの(言葉はともかくいい音楽はいいと思うの)って日本人リスナーだけなのかしら。台湾の Crowd Lu 君なんかすごくいいです。

 日本の音楽をカナダに伝える方法はないかと考えて、娘を優秀なロッカーに育て上げ、日本語ロックを翻訳し歌わせるという案を目論んでいたのだが、現時点では米ポップに完璧に娘の魂を奪われています。がっくし。

2011/04/15

「全部クソだったんだぜ」

「Gamers Heart Japan」「ミネカダマウンテン登り」「Pray for Japan 集会」ほか。

=======================
■11/04/03(日) □ Gamers Heart Japan
=======================

北米のゲーム開発者が日本産ゲームと日本への熱い思いを語りまくり、震災被害者への募金を呼びかける「Gamers Heart Japan」という番組があり萌と一緒に見る。最も偉大なゲーム&その開発者としてダントツだったのがやはり、スーパーマリオの宮本茂氏。FF 好きな萌は絶対 FF7 よーと言っていたが、北米クリエイターにはあまり影響を与えていないらしい。そういえばドラクエも1人も挙げなかったな。

番組を見て思ったのは、大災害への同情ゆえにこんな特別番組を作ってもらえたけれど、それとは関係なく出てきた全員が日本に行った経験があり、日本の文化とゲームについて早口でいくらでも語れるというその事実がやはり、すごいなあと思う。萌も「これも日本のゲームなの?」と驚くことしきり。日本と世界のつながりは、経済だけではないのである。

----------------------
昨夜「原発がどんなものか知ってほしい」という文書が広まっていると知り、それに対する福島原発勤務者のていねいな反証論文「re: 原発がどんなものか知ってほしい」を読んだ。これを読むと原発というものは現場において誠実に運営されているのだとわかる。

しかし、「こんな事態には絶対になりえませんが」という前提でここに書かれた数々の安全保護手段、非常用ディーゼル発電機、バッテリー、外部電源のすべてが水泡に帰し、「最後の手段」の海水投入でも止まっていないのが悲しい。これを書いた人はおそらくいま第一原発にいて、泣きたいほどの悔しさを感じながら戦っていることだろう。

----------------------
新しい朝ドラ「おひさま」が始まった。とりあえず見たところ今度は主人公が一般公募の人ではなく芝居ができる人らしいので期待してるのだが、出だしはまるきりトトロの焼き直しで、まだなんとも言えない。原田知世は奇跡の美貌だが、この人の芝居のできなさもこれまた奇跡的なものがある。「体が弱い母」演技はドリフターズのコントみたいだった(笑)。

=======================
■11/04/08(金) □ ミネカダマウンテン登り
=======================


ミネカダ・マウンテンパーク
学校のあと皆で裏山のミネカダへウォークしに行こうと誘われ、とことこと歩き始めると5分で登山になってしまい、おいおいこれはウォークとは言わんだろう。まあ気持ちいいけど―――と思っていると、小山を超えたところで絶景の沼地がばーっと開ける。げげ、こんな近くにこんなところがあったのか。長年住んでてちっとも知らなかった。小山を超えないと見えない沼地なので、近いけどひと気のないプチ秘境なのである。美しい。まさにカナダ。

そこからさらに山を 10 分ほど登って小高い見晴台に出、下って湖畔を巡り帰る、非常に気持ちのいいハイク/軽トレックであった。ウォーク(散歩)だというから水筒さえ持ってこなかったが、こんな気持ちのいいトレックならば飲み物とスナックを持ってきて、ゆっくりと時間をかけて歩きたいよ。


デジカム動画は気持ちよし
このハイクは先月格安で入手したデジタルビデオカメラ JVC Everio MS-120 の野外初公式戦となったのだが、映像は期待通りの自然な色で撮れた。デジカムのデジタルブレ補正は案外効果が高く、歩きながら快適な絵が撮れるのが前のアナログカメラとは違いありがたい。

登った山の高みから7~8キロ向こうのピットリバーブリッジ上の車が写る。先走り 300m先に行ってしまった萌の表情が写る。最後には数百m彼方にいるクマまでアップで写せてしまった(汗)。ビデオカメラのズーム性能というものはすさまじい。こうして外出時にデジカメとデジカムの2台を持ち歩くというのは間抜けなカメラ親父感が否めないが、持ってきてよかったと思える影像が撮れました。

----------------------
Mと萌の会話で、萌が次のスクールミュージカルでも前回同様友達のCHと役を争っているのだとわかる。でCHが「萌がその役に応募するなら、(前回に続きまた負けてその他大勢になるのが嫌だから)別の役に応募する」と言ってるのだそうだ。そこでMが、それじゃCHがかわいそうじゃないの、違う役に立候補しなさいよと萌を諌めると、萌は「だって...」と泣いてしまった。

この春萌と俺は衝突しまくって深刻に困ってるのだが、萌のこの精神不安定ぶりはつまり、11歳にして強力なエゴの発現なんだなとここで思い至った。自分の存在を世界に示したいのだ。まだほんとは全然子供なのだが、誰にも指図されずインディペンデントでいたいという衝動に振り回されている。こういう精神状態がいつまで続くのかな。ため息。

=======================
■11/04/09(土) □「全部クソだったんだぜ」
=======================

Youtube で斉藤和義の「ずっとウソだった」を見る。最高。信じてる待っているの JPOP は何のチカラも持っていない。ロックは持っている。斉藤の言葉が正しいとかそういうことではなく、力を生み出せるということ。「ずっとクソだったんだぜ」と歌いながら作業に向かえば東電作業員もきっと力が出る。

実際「上を向いて歩こう」というCM映像は JPOP 的で見る気がしなかった。「歌の力」なんて人はよく言うけれど、気持ちが前向きになれば事態が改善するような平時とは違うだろう。「ほんとクソだったんだぜ」と悪態をついたほうが足に力がこもるだろう。

「原発に無批判だった自己を反省する視点がない」みたいにこの歌を批判する人もいるけれど(それはそれで真っ当な意見です)、斉藤は論陣を張っているわけじゃないのである。すべてがクソだったんだぜと悪態をついているのである。つまり Fxxk! と言ってるのである。

「この国を歩けば、原発が 54 基」という出だしからして「え、そんなにあるの?」という斉藤のノンポリ性が伺える。だからこれで反原発ソングよくやったみたいに褒めるのは意味がないし、批判しても彼はすいません不勉強で俺もクソでしたというだけだろう。

いま日本政府が言ってることが嘘だとは俺は思わないし、そういうことを言う海外メディアを無神経だと思うが、しかし「ずっとウソだったんだぜ、ほんとクソだったんだぜ」と歌えばこんなにキモチがいい。

原発の「万が一」を看過してきた日本は斉藤自身を含め全部クソだったわけで、むろん世界も大同小クソであり、東北沿岸の壊滅っぷりと放射能の恐怖を合わせ見てそれでも核兵器や放射性弾薬を保持していられる国のクソ性など、まったく論を待たない。

ほんと「全部クソだったんだぜ」と東電作業員も歌ってほしい。それは責任転嫁ではない。東電社員だって怒りたいはずではないか。会社に、国に、原子力政策に、いま起きていることのすべてに。取り返しがつかなくなる前に変えられなかったものやコトや自分に罵声を浴びせながら、働いてほしい。

Twitter や Youtube でこの歌の感想を読むと、人々の言葉の応酬は「原発是か非か」あるいは「反原発ソングの是非」に限りなく近づいていく。そんなことがこの歌から発せられているわけではない。もしこれがキヨシローだったら歌った後で、「俺は逃げるぜ、おつかれさん」とか言ってマイクを蹴り倒して帰るだろう。斉藤和義もキヨシローも無責任で不謹慎だけど、苦しい心に空気穴を開けてくれる。それがロックなのだ。

◆        ◆        ◆

東電社員の家族に対する嫌がらせが今起きているらしい。そういうことをする人は、日本の戦争犯罪を永久に許さんと理不尽な攻撃をし続ける人々と同レベルだ。これほどの災害大国に住んでいるのだから、精神くらいクソでなくあってほしい。でなければもうやっていけない。

俺はかつてバンドの解散時に「魔の山」という歌を作り、そこで
「信じる気持ちは尽き果てても、ロープを手渡して/いつの日かこの旅を終えたなら、二度と会うこともない
とバンドメンバーに対する気持ちを書いたけれど、この歌詞は今の日本の人から見た東電への視線に似ている。みんな苦しい山を登っている。頑張ってくれ。

=======================
■11/04/12(火) □ 東日本大震災の写真
=======================

10 数年前にストリートスライダーズ話で盛り上がったりかちんが、斉藤和義関連の Twitter で俺を発見してくれた。こんなときにこんなふうに再会するとは、なんてロックな。

りかちんの Twitter をさかのぼってしばらく笑いながら読むと、やっぱりその言葉の発し方とか、そこから想像できるモニター越しの表情は変わりないな。やっぱロックの子だよな。「あの頃のまま」(by ブレッド&バター/松任谷由実)でもある。

----------------------
萌の学校であさって Pray for Japan 集会があるとのことで式次第が届いたのだが、そこで使われる写真が、俺が震災翌日見てあまりの精細さに衝撃を受け気分が悪くなった boston.com の津波写真集だった。こ、これを使われては子供のトラウマになってしまうと慌てて連絡。

で写真を差し替えてもらう段取りをつけ、結局俺が選ぶことになってこれまであまり見ないようにしていた東日本大震災写真サイトを改めて見て回ったのだが、ほとんどが海外のサイトだった。やはり見るのがつらいという気持ちが日本の報道サイトの写真を少なめにしてるのかな。

しかしこんな写真を自分で集めることになるとは思わなかった。あの boston.com のページは、まったく保存する気になれなかったからな。今でも津波そのものの写真は正視に耐えない。津波の映像や写真は、逃れられない破壊と死のイメージを強烈に発散している。地震のないカナダの人には、そのイメージがあまりリアルに分からなくて、あの先生は無造作に選んでしまったのだろうか。

「破壊のすさまじさは表しつつ、津波は写っていないものだけを選んだ。死のイメージは子供らに与えたくないのだ」と説明を添えて担当の先生に送ると、そのまま使う、あなたの意見を心から尊重するとの返答。ありがとうございます。子供たちがエンパシーと助けることの尊さを感じてくれればいいのであって、ここで天災や死への恐怖は与えたくないのである。

----------------------
この災害写真セレクトの件で、やっぱカナダの人々にとっては遠くの出来事でリアリティないのかな、「カナダでいえばこれくらいの規模が壊滅」といえば実感してもらえるのかなと想像を巡らせ調べたのだが、東日本大震災での全壊家屋は今日の時点で判明しているだけで約6万戸、萌の学校があるコキットラム市の全私有家屋 41000 戸よりも多い。こういう数字を知らせたら、カナダの子供に被害の規模が分かってもらえるのではないかと思う。まあそんなにどうだまいったかと披露する必要もないが。

=======================
■11/04/14(木) □ Pray for Japan 集会
=======================

萌の学校の Pray for Japan 集会。俺が想像し心配したような強烈な災害イメージによる子供らへのショックなど肩すかしなほどになく、災禍に瀕し困っている人々のためにお金を集めることの有意義さに重きが置かれた教育イベントになっていた。

俺が作った低ショック型災害写真スライドは体育館のぼやけたプロジェクターではさらに情報度が5割薄まってもうなんだかよくわからず(笑)、「建物の上に乗っかってしまった船」の絵を見てその素っ頓狂さに子供たちはゲラっと笑い、「笑いごとじゃないのよ」と教師にたしなめられていた。

まあ子供があれを見て笑えるのが幸せだということだよな。日本が受けたダメージなど全然伝わらなかったと思うが、自然災害がなく恵まれたカナダの子供らの気持ちをダウンさせても仕方がない。募金をしてくれた子供らに折り鶴が行き渡り、ほんの少しの縁がつながることを喜びたい。

2011/04/03

日記「日本の神様」

「サンファン再評価」「NHK ドラマ『迷子』」「ティーンエイジャーとその親」他。

=======================
■11/03/23(水) □ ゲーム「キングスブルグ」PC版
=======================


愛機キャノン Powershot A530 のショット
 日本からのニュースアップデートはなし。午後HNを呼ぶ。天気がいいので久しぶりにエバーグリーンパークまで自転車で行く。俺と萌の自転車はかなりガタが来ておる。

 萌とHNのブランコ写真を撮っていて、そういえばこのカメラを買って初めて公式戦で使ったのがこの季節のこの公園だったと思いだした。あのときはホワイトバランスのくせがわからずいい写真が撮れなかったんだよな。今日の写真は色とホワイトバランスは完璧である。もうあれから4年だが、やっぱりいいカメラだ。

----------------------
 「ドミニオン」は3セットのカードをあらかた覚えると常時コンピュータに勝てるようになってしまい、また新しいPCボードゲームをやりたくて探している。サイコロの目を割り振る「キングスブルグ」がよさそうなので、資料を揃えてやってみる。

 サイコロを振って役人を雇って資源をもらい、その資源で建物を建てるというアイデアはルールを読む分にはなかなか面白いのだが、実際やってみるとどの役人を雇ってもあまり大差がない。目が大きい役人のほうがより多くの資源をくれるが、最大18の「王」でもたかだか4資源である。

 で集めた資源で買う建物がこれまたどれも大差ない。町の防御力+1とか2とか、ダイスが1個増えるとか勝利点+1とか、その程度の地味な効果しかないのである。苦労して建物を建てても、別に自分の町が発展し強力になっていくわけではないのだ。拡大再生産じゃないのである。

 建物で上がっていくのはほとんどが、4ターンに一度あるモンスターとの戦い時の町の「防御力」なのだが、モンスターとの戦いといっても単に「モンスターの攻撃力7」「町の防御力6」という数値比較なわけで、これで盛り上がるわけもない。役人を雇っても建物を建てても面白くないのだから、ゲームが面白くなるわけもない。残念。しかしこれで Boardgamegeek 144 位かよ。あのランキングはほんとアテにならんな。

 次は「レースフォーザ・ギャラクシー」PC版。これは何度トライしてみてもカードデザインが最悪で、すべてがアイコンで表現されていながらそのアイコンが下手な標識サインの見本という感じで、1つも意味が分からずプレイできない。ルールブックもダウンロードしてみたが、もうびっしりと文字が書かれていて読む気がしない。パス。さすがにPCでやれるボードゲームも尽きてきたなー。

=======================
■11/03/24(木) □ サンファン再評価
=======================

 午後バスケットをしに萌と外に出ると、ぶわーと温かく気持ちのいい風が吹いている。昨日は公園で寒くないと思ったが、今日はもう温かい。春一番だ。春はいい。東北にも早く春が来ますように。

----------------------
 【サンファン再評価】ドミニオンはもう飽きて、俺が好きな拡大再生産だとやっぱりプエルトリコかサンファンが最強だよなとPC版サンファンを再開する。するとやはりこれはほんとうに面白い。ゲームとしてはプエルトリコのほうがよくできているのだが、サンファンは配牌次第で毎回違った作戦を取らざるを得ないところがランダム性のないプエルトリコと違い、そこが面白いのである。

 序盤配牌を見て初期プランを立てる。この時点でカルカソンヌで感じるような、「今回はどんなゲーム的冒険を楽しめるだろう」というわくわく感が常にある。そしてコツコツと建築を続けつつ、中盤に引いたカードを元に勝負手を決めて勝負をかける。これがうまく行けば勝てるし、はずれるとまるで駄目になる。このギャンブル性が実に面白い。

 ドミニオンにもランダム性とギャンブル性はあるが、デッキに入れた札がコンボで手札に入るかどうかという程度のギャンブルなので、何度か手番を回していれば必ず当たりは来る。《これとこれを使い点を最大化する》というサンファンの勝負感とはシビレ具合が違うのだ。

 今回ルールを読み直していて、クレーンは差額だけ払えば上位建物を建てられるのだと知った。つまり序盤は安い作物/建物を速攻で作って利用し、機を見て上級作物/建物に建て替えればいいのである。これは一種の分割払いで、うまくはまれば最高額の6点建物もより早いタイミングで建てられる。これは使える。楽しい。もうほんとサンファンを買いたくなってきたな。

=======================
■11/03/27(日) □ 日本の神様
=======================

 日本の朝、宮城沿岸でまた強い地震と 50cm の津波。少し川に水が入ってきているのが見えるが、浸水までは行っていないようだ。神様神様頼みます頼みます。もう勘弁して下さい。

 こないだ友達の家にスリープオーバーに行った萌が、クリスチャンの子とムスリム(イスラム教徒)の子に「世界のすべては神が作ったのよ、信じないの?」と言われ、返答に窮して電話してきた。当たり障りのない答えとして「そうかもしれない」という答えを俺たちは萌に授けたのだが、「お父さんはどう思う?」と後日聞かれたので考えて答える。


ダイコンの神、おしら様
 「千と千尋で、川の神様とか大根の神様とか出てくるじゃん。ああいう風にいろんな神様がそこら中にいるというのが日本人が思うところなわけ。1つの神様がすべてを作ったとは思ってない。たとえばいま日本の地震でさ、日本中の人たちが『神様お願いします、もうこれ以上悪いことが起きないよう、助けてください』って感じで祈ってると思うけど、これは具体的な名前のある神様じゃない。ただ『神様!』と思わずにいられないわけ。神様がいるかどうかなんて誰にも分からないんだけど、あまりにも地震がひどすぎるからさ、神様がいて助けてほしいとホント思うよね」。

 助けてほしいと、そうさ、ホント、思うよね。

=======================
■11/03/30(水) □ NHK ドラマ「迷子」
=======================

 災害関連報道が時間的に大きく減ったのに TV Japan(or NHKの国際編成?)は「てっぱん」と高校野球ばかりやって普通の番組をやってくれないので、録りためていた震災以前のドラマや映画を見始めた。中にNHKのドラマスペシャル「迷子」というものがあり、これがよかった。普通の若者たちが普通に喋り、ゆきずりの恋や幼なじみの恋が始まりそうな気配や姉と弟のけんかがあり、言葉の通じない老婆を巡りたくさんの善男善女の静かな日が暮れていく。2週間以上ニュースだけを見ていたこともあってか、2回繰り返して見てしまった。

 「なんとかジャネ」言葉もこうして聞くと悪くないなーと思う。登場人物に嫌味や造形感がないからか、ある種の方言のような味わいを感じる。調べてみると脚本は前田司郎、以前見たカメラじいさんの東京行きを描いた「お買い物」の作家だった。そうだ、あれもよかったよなー。

 カナダに住んでアメリカのTVを見る家族と暮らしていると、スクリーンにはいつでも口論か早口でまくし立てるシーンが描かれ、まことにやかましい。君ら英語人は現実でもTVでもちょっと喋りすぎですよ。日本のこうしたなんの事件も対立も主張も問題解決も悪役もヒーローもない静かな物語を見ると、ほっとする。やっぱりいいところだよなと思う。ああ東北東日本の人々が、心静かに暮らせる日々が早く戻ってきますように。

=======================
■11/03/31(木) □ 土掘り仕事
=======================

 今日はTSさんに頼まれ朝から土掘り仕事。雨は幸い止み、まったく寒くない中気持ちよく働いたのだが、全体の仕事量の 3/4 あたりで体に限界が来て、握力がなくなり脚が攣りかけ、ちょうど約束の時間も来たのでそれではと帰宅する。筋肉の限界まで一応働けたというのは、普段体をまるで使わない身としてはそう悪くはないが、仕事が終わるまであと2時間ほど働くのはどう考えても無理だったなー。明日もどうかと言われたとても無理(汗)。

----------------------
 15 日の水素爆発以降、大規模な放射性物質漏出はなかったという科学者の早野さんらの分析結果が出てきている。原子炉についてはこれ以上の悪化は食い止められるだろうという多くの人々の分析は、俺は信じられる。むろん海水への流れ込みを止め、それからその元を止め、それからやっと長い長い年月をかけて冷やし、かつ汚染を抑え込み周辺を除去していくという地道で嫌な作業が延々と続くわけなのだが。

 しかし首相らが防災服を脱ぎ復興のときだと述べたそうだが、いい加減避難民の悲惨な境遇はなんとかならんのだろうか。日本の国力すべてを挙げても、20 万人余の人々を3週間も体育館に置いておくことしかできないのか。現時点で一般客などほとんどいないだろう東北圏内の旅館やホテルにどんどん収容し、その費用を政府が負うということができないのだろうか。一般客と同様のサービスは経済的に無理でも、旅館ならばとにかく暖と布団があるではないか。経済的にそれができないのだとすると、かなり日本の力に対し幻滅するものがある。

=======================
■11/04/02(土) □ ティーンエイジャーとその親
=======================

 あと2日で萌の春休み(2週間)が終わるが、俺は毎日毎日萌に対し暖かくしろちゃんと朝飯を食えくだらんTVばかり見るなとガミガミ言わねばならず、それを言われるのが嫌なので萌は自分の部屋かグランマのところに入り浸っており、憂鬱な日々であった。まだ 10 歳だが、だんだんティーンエイジャーとその親という感じになってきている。ため息。

 そして夜、萌が眉毛をハサミで刈りこんでしまった。ばか (^o^;)。子供はたまにこういう予期せぬ馬鹿なことをする。自分の眉が濃すぎると思ったのだそうだ。あと2日で学校が始まるので生えそろうわけがなく、アイペンシル(?)を買うか借りてきてごまかすしかないだろうなあ、これは。トホホ。