2012/01/01

紅白歌合戦2011感想 - このとんでもない年の最後の1曲

【紅白歌合戦 2011 感想】司会者に対するきゃーという絶叫オープニングで違和感と共に始まる。なでしこジャパンが登場、ステージ上に顔見知りがたくさんいるらしくはしゃいでいる。元旦の試合前夜にここに登場することがちょっと問題視されているが、女の子たちにこれは断れんだろう。

《AKB48》AKB って補欠がいるのか、200 人くらいいますよ。後から後から湧きでてくる。(後から考えると AKB はこの出番以外は特に出てこなかったので、NHK にしては抑制が効いていてよかった)《芦田愛菜》ディズニーって NHK に出ていいのかな?

《猪苗代湖ズ》バンドがそこにいるのになんで別の場所にいる福山雅治に喋らせるのか。山口隆が誰なのかくらい紹介したらどうなんだ。まあ歌えればいい。歌え山口。―――歌った。というかライブ直後なのか声が出なくて吠えた。泣けた。
「紅白直前スペシャル」という番組がテープに残っていて後で見たら、猪苗代湖ズの紹介に時間が割かれていた。◆山口隆「皆さんも自分のふるさとの向こうに福島のことを思ってくださったら、この歌が、ロックンロールがやれた意味があるかなと思うので」。猪苗代湖ズの出番に福山雅治なんて出さずこの言葉を紹介していたら、この歌が届かなかった心にも届いたかもしれない。ああたれか故郷を思わざる(故郷を想わない人はいない)。福山雅治は支援の話をしているが、山口隆が歌ってるのはただ焼け付くような気持ちなんだ。◆「♪アイラブユーベイビー浜通り、アイニージューベイビー中通り、アイワンチューベイビー会津地方」だけで、俺にはいろんな人の気持ちが届きまくり、胸を貫通していく。たれか故郷を思わざる。それが歌なんだ。

《ラルクアンシエル》外タレみたい。まったく悪くないが、場違い感は全出場者中いちばん高いかもしれない。

《椎名林檎》糸子が出てる(笑)。椎名林檎は元気な曲をと頼まれて、それでも切実なドラマだし今年は大変な年であるということでこの(陰影のある)曲を書いたとのこと。えらい。―――あ2曲歌うんだ。おお2曲目はショーっぽい曲を選び楽しい演出をつけて歌っている。えらい。英語詞まで入ってるぞ、なんたるエンタテイナー。ラルクアンシエルと正反対のやり方だ。ラルクは昔 TV に出るのを拒否したフォーク歌手式で、椎名林檎は「一等賞」を目指した沢田研二式ですね。ここに来るならば知らない人に歌を届かせなければ意味がない。椎名式が正解である。

《KARA》アイドルはこうして5人もいれば十分足りそうなのに、なんで日本のアイドルは48人(しかもそういうのがさまざまなバリエーションで存在するらしい)と極端に増量するんだろう。《徳永英明》この人がこうして売れているなら、ハスキーでキーが高ければ誰でもいいのではないかと思う。

《Perfume》ダンスがキレキレ。KARA と並べて日韓ダンス対決にすればよかったのに。しかし紅白のだだっ広い場所でやるとレーザーと電飾と3人のキレキレダンスだけでは案外殺風景に感じる。昨日見た広大なドームコンサート映像と比べても。紅白の舞台というのは盛り上げるのがすごく難しい場所なんだろう。それを読みきってハリウッドショービジネス式で盛り立てた椎名林檎はえらかった

《少女時代》名前に反し少女に見えんし、音楽的には非常に古いディスコポップ風。国籍云々ではなく、音楽としてなんでこれが売れるのかさっぱりわからない。

《郷ひろみ》のほうが AKB よりも Jpop よりも韓ポップよりもはるかに新しい音楽をやっている。あの NEO の主題歌は、布袋がギターを弾いてるのかと思うくらいモダンである。――あほんとに作詞作曲布袋寅泰だ。すごい! 郷ひろみは心身ともに頑張って、ブランニューサウンド追求オタクである布袋寅泰さえも巻き込み新しい音楽を創り出しており、秋元康は新しさとは無縁の、おニャン子クラブ時と同じ商売をしている。若さと美貌と青春という、尽きることのないもともと他人の資産を使うからこんなことができる。永久機関である。

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《倖田來未》オフコースが同名の「愛を止めないで」という歌を出したとき、おっ新しい、今までになかった言葉と音だと思ったものである。現代 Jpop にはこの新しさが欠けている。大衆は新しさなど求めていないのだとは思うが、やる側もまるで新しいものをやりたくなさそうなのが不思議。

《東方神起》Perfume を研究した感じがする(前に見たときはジャニーズダンスと何も変わらなかったので)高速キレキレダンスをし、日本語でラップみたいなことをやっている。品質とスペックが他より高く、こりゃ売れるわ韓国車という感じ。EXILE より数段品質がいいのは間違いない。

《レディーガガ 》ピアノを弾きながら手拍子を入れ筐体を叩き歌う。かっこいい。「トーキョーバーに座って」「私のトーキョーガイ」などの歌詞が入っていて歌の意味がわからなかったのだが、原詞を見たら my bar/Nebraska guy で、意味不明になってもいいから挿入可能なところに日本地名を入れたおもてなしサービスなのだった。いい人(笑)。

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《西田敏行》あ、なんだよ、ここにいるなら猪苗代湖ズに飛び入りで歌ってくれたらよかったのに。あ、自分も福島の歌をここで歌うのか。それで飛び入りは自重したのか。だったら出番を逆にして、先に西田敏行を歌わせ、猪苗代湖ズを後から出せばよかったのに。いっそ猪苗代湖ズをオオトリにすればよかったのに。今年、あれ以上に日本人が心を合わせられる歌はないだろう。ヒットとか知名度とか関係ないよ。序列とか伝統も関係ない。

《長渕剛》この人はボクサーと腹筋を叩き合うなんてことをこないだやっていたが、喋り方とかMKやギターの構え方が、もはやシンガーというより「サラリーマン金太郎」だと思う。

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《和田アキ子》娘の友達のチャイニーズおばあちゃんが和田アキ子に似てるといま気がついた。いい歌で毎回文句ない歌唱だけど、この歌をここで歌うかという新鮮さがもうなさすぎる。紅白とはそれを含めての勝負、それを含めての「歌の力」ではないだろうか。自分の持ち歌でなくても構わないのに。

《五木ひろし》和田アキ子と同じく毎回同じ歌なのだが、「ふるさと」という歌には「あの鐘を」より単純な、失われた故郷へのオマージュにつながりやすい柔らかなイメージがある。《松田聖子》カバーをやるのはいいのだが、「上を向いて歩こう」を普通に歌われても別に面白くもなかった。

《氷川きよし》この歌は明らかにメキシコがテーマなんだろうが、衣装とイントロ以外はどこにもメキシコ要素はないw 演歌って60~70年代歌謡曲やプロレスみたいなノリがあって、お客が楽しめればOKなんだろうな。

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《松任谷由実》出演者全員が出てきて、客席も一緒に「春よこい、早くこい」と歌う。本日二度目の涙が出た。そうだよ、春よこい、おんもに出たいと日本は泣いているんだよ。彼女は年をとってから喉の使い方を変え、若い頃より声量が増し声が安定している。それでもひとより下手なので必死に歌う。その必死さが願いを震わせる。彼女がここに出てきた意味がよくわかった。

この紅白恒例「全員出てきて応援歌唱」で感動したのは初めてだ。松任谷由実の歌唱力でこの場を持たすには助けが必要だが、同じメロディでサポートするんじゃなくてオーバーラップして、それも生声で会場全体が歌うことで、歌は新たなものを生み出したのである。

《SMAP》最後は SMAP の皆さんですと紹介されても歓声がさほど起こらないのは、あまりにも完璧な石川さゆりの後にあれを聞いて終わるのかよと彼らのファンでさえもあまり気乗りしなかったのではなかろうか。でも陽気な2曲目はよかった。嵐の司会はただただ地味でグループとしても華に欠け、盛り上げるという仕事は SMAP のほうがうまいんだなとこれを見て思った。

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赤組勝利で松任谷由実がおめでとうと大拍手していたw しかしラルク vs 水森かおり、和田アキ子 vs 対嵐みたいなセットになってたから、紅白って芸風が似た感じの男女歌手が対決するというショーではなくなってるのね。これでどうやって勝ち負けなど投票できるのか皆目わからない。MVP は自分の持ち味のまま最高の紅白エンターテイメントをやってみせた椎名林檎さんでしょう。

猪苗代湖ズはライブの直後だったのか声が出ず吠えてたせいもあり、人によってはうるさい下手だと不評だったようだけど、まあ箭内さんなんて玄人ですらないんだから、いわばアイドルと同じなんすよ。大切なことは巧拙じゃないんですよ。

紅白というのはお互いに相容れないものが一同に会し多くの人々に見られることに意味があるので、猪苗代湖ズはあの場所に立ち、あの顔で演奏してくれてよかった。箭内さんはあの顔と下手歌声で立派に貢献してました。椎名林檎のように総合格闘家として強い人はこういう場でなんでもやれ楽しみ楽しませることができるが、山口隆は正拳突きしかできん空手家みたいなミュージシャンだから、手が合わない人は当然いる。

しかし、多くの歌手は完璧な歌と技量を見せたが、このとんでもない年の、今日が終わりの日の最後の1曲という意味性を持った歌ではなかった。猪苗代湖ズはその意味でど真ん中ストライクの歌でもって、松任谷由実は With a Little Help From (Her) Friends によって俺をボロボロにしてくれたのである。本当にとんでもない年の、今日が終わりの日の、胸に迫るもののあるショーだった。泣き顔を家族に見られないようコソコソ隠れて見てました。

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