2012/07/03

日記『日本語物語のはじまり』

「【Euro】香川は大丈夫かしら」「生産的な夏休み」「日本語物語の添削」「ゲームを拡張したくなる」「スペインに退屈」

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■12/06/23(土) □ 日本語物語のはじまり
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萌の夏休みが始まる。この夏は家で一緒に日本語をやり直そうと決めたので、勉強の取っ掛かりとして母Mの提案で、萌が好きな物語ライティングを日本語でやらせることになった。するといまどきの日本語 IME の賢さのおかげで、音さえ知っていれば漢字がスイスイ入力できるので萌も気持ちいいらしい。俺のところへ走ってきて「○○って日本語でなんていうの?」と語彙を習っては PC に戻り、Word 上のテキストが遠目に黒く見えるくらいの漢字量で爆発的に入力している。

萌は完璧主義なので完成するまでは見せられないと隠しているが、SF タッチの冒険譚らしい。ある程度書いたところで添削指導しよう。文法を直し、語彙や語法を教えていけば、学習法として文句なく楽しく有意義だ。萌にとってこれ以上の学習法は思いつかないくらいだな。この手があったか。M先生えらい。さすが教育専門家。



萌の日本語学校の同級生たちは萌より日本語読み力がかなり高いが、親御さんに話を聞くと家でマンガを読むかどうかがカギとなっているらしい。お母さんと友達の影響で英米カ文化漬けの萌はマンガをまったく読まないし日本語 TV も見ないので、そこで違いが出てくるわけだ(日本語に強い子供らはおそらく逆に、萌ほど大量の英語情報を摂取してないだろう)。

いっそ日本語学校でマンガを必読書にしてくれたらなあなどと安直な俺は思うわけだが、日本語学校はどこもマジメで『日本の子に負けない力をつける』なんていうモットーを掲げているので、日本の公定教科書を使い、週に一度しか教室に行けないカナダの子供にとってあまり現実的と思えない教程をカッチリと続けている。もちろん日本の学齢よりは教科書を1年半分ほど下げてあるが、それでも萌の力と教程の乖離は年々甚だしくなる一方で、俺は萌にふさわしいリーズナブルな日本語教育を与えたいとここ数年ずっと思っていたのだ。

で家族と本人の相談の結果、読みも意味も覚えてない単語の形だけをドリル帳になぞるような勉強はもうもうここまでにしようと決めたわけである。他の日本語お母さん方とも協力し、日本語能力検定試験(英検の日本語版)の教材などを使って、俺が萌に合う課題を与え教えていこうと。

日検のサンプルテストを萌にやらせてみると、もともと日本語ネイティブなので聞きとり問題は朝めし前に正答できるし、漢字や語彙も書き取りではなく4択なので、「これだ」と過去の勉強記憶の中から答えられる。当用漢字と熟語を網羅する日本の教科書に比べたら内容が生活シーンに絞られているので単純で、うまく使えばクイズのような感覚を持ちつつ萌の弱点である「読む力」を鍛えられると思う。この資格取得を目標にフレキシブルにやってくのはきっと楽しいだろう。



『日本の子』のようにだなんて高望みはしないが、現実的な努力量で有意義な学習体験と学ぶ喜びを得つつ、いつか巡り合ったら素晴らしいマンガも読めるようになってほしい。そのスタートとして、かな漢字変換の力でガンガンとプロダクトを作り上げていくこの夏のライティング実践は、実に好ましい。楽しいし、お互いにやる気がするしね。

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■12/06/26(火) □【Euro】香川は大丈夫かしら
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【スペイン-ポルトガル】はすさまじい試合だった。イタリーに続きポルトガルも、高い位置での躊躇ないタックルと速いフィードでスペインを攻め立て、攻め続けることでスペインの攻撃をしのぐというすごいサッカーに打って出た。それがあと少しで結実しそうだったのだが、いかにロナウドでも全速カウンターからでは腰の入ったショットはなかなか打てず、やがてポルトガルの足が止まり PK 戦という試合。惜しかった。

この試合を見ていてつくづく思ったが、ビッグクラブの超一流選手はやはりみんなタダモノではない。こいつすごいなと思って所属先を検索してみると、「レアルのコエントラン」「マン U のナニ」となるほどの答えが出てくるのである。ナニが狭いライン際で全速ドリブルを仕掛け、潰されても最後の最後まで抜けようともがくところなどを見て、香川はこんなすごい連中とポジションを争うのか大丈夫かほんとと思った。

香川はボックス内でボールに触り、コントロールしてゴールするのはワールドクラスにうまいかもしれないが、CL や Youtube 映像で見る彼はこんな高度な技術を伴う肉弾戦に立ち向かい、不可能を可能にしようとする「タダモノではない」選手ではない。「J リーグが誇る名手」的な選手だとは思うが、たとえばドリブルシュートではかつてのセレッソ森島よりうまいとも思えないのである。モリッシーがブンデスに行っていたらきっと大男たちを手玉に取ってくれただろうが、この2期の活躍はつまりそういうことではないかと思う。

そんなわけで、香川がナニらと競い、こうした壮絶な試合で大仕事をするシーンが、俺には想像できない。もちろん頑張ってほしいとは思うけど。買うならホンダを買ってほしかったぜマン U。

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■12/06/28(木) □ 生産的な夏休み
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萌は毎日割合生産的でいい夏休みを送っている。去年も同じで、6月あたりはずっと最低な機嫌で過ごし、夏休みになったらコロっと直ったんだよな。萌は学校を楽しみ大好きだが、そこはガールズ政治のエゴとストレスがうずまく場でもある。年度末はおそらくみんなのストレスが最強に煮詰まって、言動も荒れるのだろう。

一緒にあれこれ仕事を片づけ、夕方バドミントンをしていると小雨が降ってきた。雨の匂いがする。雨が降っても寒くないのは日本みたいで気持ちがいい。もうじき行く日本の夏を思い胸が高鳴る。

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■12/06/29(金) □ 日本語物語の添削
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萌の日本語ライティングを初めて添削した。文体が全編現在形で書かれており不自然なのでなぜかと問うと、大ヒットジュブナイル小説「ハンガーゲーム」がそうなっててカッコいいからだという。本を見てみるとたしかに、「I go to the class and talk to her. No clue.(あたしは教室に行く。そこで彼女と話す。手がかりなし)」てな感じのドライな文体になっている。なるほどね。子供ってそんな文体もコピーするもんなんだなあと改めて感心した。

こういうのってフォークソングなどの影響でアメリカ文学に生まれ、ビジュアルなイメージを喚起するので映像文化の発達と共に定着したスタイルなのだと思うが(つまりファーストパーソン・シューティング的な文体)、しかし全部現在形というのは日本語では相当に変である。過去形と現在形を混ぜるのはリズムを出すために誰でもやるけれど、全部そうだと単に時制が間違ってるように見える。それでもそうしたいと萌はいうので、日本語じゃこれはヘンなのだと説明したうえで、そのままにして進むことにした。



内容は面白い。パスコードやキーボードが埋め込まれた机などといったガジェットに満ちた未来世界で、学校にモンスターが押し寄せるというお話。これは書いていてワクワクするだろう。俺が小学校の時に授業中に書いて先生にビンタされたマンガみたいな内容だ。

そして新しい言葉を覚えるにはやはり、これはすごく効果的な学習法だと感じる。

「ここは日本語だとこういう言い方はしないじゃん。○○○でしょ」
「あ、そうかそうだね」


と手直ししていけるのである。それを漢字で書かせ、後ですらっと読めるまで何度でも音読させれば、記憶定着法として相当にイケるんじゃないだろうか。いい感じです。

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■12/06/30(土) □ ゲームを拡張したくなる
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「修道院と市長」コマたち
グレンモアの終盤をもうひと盛り上げするために、使ってないカルカソンヌ拡張「修道院と市長」の家と車コマを使い何かできないか考えてみた。

【市長】タイルの位置入れ替え?
【馬車】ワーカーを載せ、アクティベートで2マス移動?
【修道院】まわりを囲んだら9点?

てな感じで考えてテストプレイしてみると、見た目はすごくよくなるのだが、やっぱりゲームバランスが崩れてしまう。「馬車」は使い道があるしゲームのテーマにも合うと思うが、「寺院」や「市長」はこじつけくさすぎるし、無理があるな。

結局いい案は何も思いつかない。こうしていじろうとしてみると、グレンモアがいかに完成したゲームかよくわかる。実際 BoardGameGeek でもバリアント(オプションルール)案の投稿はほぼゼロだしな。しかしゲームを拡張したいというこの気持ち、これこそゲームデザインだ。カルカソンヌなど有名ゲームの拡張だって当たり外れが激しいわけで、ユーザーが拡張して悪いわけもない。面白いかどうかは別にして。


かわいい「グレンモア」用家畜コマ
もしグレンモアに拡張を入れるとしたらあのアグリコラみたいな牛や羊のコマを買い、村で動物を育てたいな。今は牧場のアクティベートで産出し即売るわけだが、エサを与え飼って殖やしたいのだ。しかしまあそれが「アグリコラ」なのかな、「アグリコラ」を買えばいいのかなと思うんだけど、長大ゲームはなあ......。

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■12/07/01(日) □ スペインに退屈
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イタリー惨敗をP家で観戦。2点取られたところまでは1点返せばまだ楽しめると思ったし、大差がつくようなクオリティの差は両チームになかったと思うのだが、モッタの怪我で万事休した。イタリーは運もなかったし、日程による疲れもあったのだろう。スペインは初戦のドローからイタリーを学習してより慎重に見えたしな。

スペインとバルサのパスサッカーに、俺は退屈している。今大会のスペインへのブーイングで、それは俺だけじゃないのだと気がついた。徹底してパスをつなぎ、失ってもすかさずつぶして相手に攻撃させないそのやり方は、サッカーをクローズなものにしてビッグゲームの楽しさを半減させてしまう。もちろん相手はそれを破らなければならないわけで、文句は言えないわけだが。

その籠の鳥的延々と長いパス回しにも興趣を感じないし、勝負シーンでも走っている選手の足元にパスが行きシュートが打たれることがあらかじめわかり、意外性を感じない。スペインのシュートはほとんどがパスで作った「数的優位」を生かしたゴールなので、わかってもいても DF は止められない。ブロックに行けない。だから最強なわけだが、そういう見てて成り行きがわかる得点にはスペクタクルではなく既視感を感じてしまう。

初戦でのイタリーと準決勝でのポルトガルの無茶苦茶に強い縦パスには、スペインがクローズしようとする籠をぶち破りオープンにするという強い意志を感じて興奮させられた。ピルロが前に出すタイミングの速さ、強すぎるコエントランのパスをコントロールしてゴールに向かうロナウド、そういうパス展開にはすごいスリルを感じる。バロテッリのアナーキーなほどに強烈なゴールには、あらかじめ予想したものではないものを目にする快感を感じるのだ。

それだけに、イタリーの持ち味が出なかった決勝は残念だった。ま、あと2年でイタリーはもっとタレントが出てくるだろう。今のカッサーノ以上の FW がセリエにいないとは考えにくいし、バロテッリは真のワールドクラスになっていくだろうし。スペインに肉薄していくチームがいくつも出てきて、この先に楽しみがつながる大会だったな。

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カナダデーのお祭りに行っていた家族をピックアップして、SH家へ。晩飯後「お邪魔者」初の4人戦となる。鉱夫 3 お邪魔者 1 ではお邪魔者が弱すぎるとの評を読んだので 2-2 にしてみたのだが、これだとやはりお邪魔者が有利すぎた。そのバランス感が微妙だな。

しかし自分がお邪魔者であるときの「(いかん、このままではゴールされしまう、もう1人のお邪魔者は誰なんだ、助けてくれ!)」という焦燥感はやはり楽しかったな。みんなもっと慣れて戦術話術の可能性に気づいたら、もっと盛り上がると思う。

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