2012/07/20

日記「ティーン文化との折り合い」

「奥様ついにグレンモア開眼」「勝ったのはわしらではない」
※追記あり(青字)
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■12/07/10(火) □ 奥様ついにグレンモア開眼
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アグリコラは無事売れた。夫婦でゲーマーだという奥様がバンクーバーからわざわざ買いに来てくれ、俺同様「アニミープルがない」とがっかりするかなと心配していたのだが、内容物を確認し問題なし。「ルールを読んで、うちの家族には難しすぎると思ったんだよね」と話すと、俺より数段シリアスなゲーマーらしくうちは大丈夫だとにっこりと帰っていった。よかった。

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売却損はメールオーダーで買った場合の送料程度で済んだので、このお金でまた違うゲームを探そうと考えていると、夕方うちの奥様Mが初めてグレンモア2人戦をやろうと言ってきた。最近萌に誘われるとMは断らないのでしょっちゅう3人戦をやっており、これまで5ゲームほどやったと思うが、2人戦は初めて。やりますやります、願ってもない。

中盤まではMと作戦がバッティングしないよう、彼女がほしそうなタイルをやや譲り気味で俺はプレイしたのだが、Mは実際ゲームはなんでも強く、肉屋・歳の市作戦でバリバリ得点していく。そこで俺も追いつくために本気になり、最後に作物を全5種類出して大歳の市で売り12点という大車輪を2回まわしたのだが、それでも10点足りず負けた。うーん、いいゲームであった。Mの力がここまで来ると、萌もこのゲームは大得意なわけだし、本気で考え打たないと俺は勝てないな。素晴らしい。



アグリコラ体験後にグレンモアをこうして楽しんでいると、ライトゲーマー向けのグレンモアの長所がよくわかる。プレイの自由度が高いことと、ビギナーでも選択肢の良し悪しがわかること。この2点は本当に美点だ。


カワサキさん作・完璧なるグレンモア日本語ルール解説
世界最高水準の明解さ。
たとえばカタンをやるたびに俺は「サイコロの目が出ずなにもできず3ターン経過」みたいなままならぬ展開にうんざりするのだが(それがなければ最高に面白いと思う)、グレンモアには「何もできないターン」がない。タイルは毎ターン必ず取れるし、取ればなにごとかメリットがある。

そしてメリットを最大化する方法は、場に出ているタイルの効能を説明してもらえばビギナーでも見当がつく。「じゃ作物をたくさん作ってその《歳の市》で売る」とか、「村がたくさんあるから、その《村×3点の城》を買う」など、すぐに見通しが立ち楽しんでもらえるのだ。↑こういう解説を読みながらルールを理解してしまえば、カタンよりビギナーにやさしく、ライトゲーマーでも存分に戦えるゲームだと思う。

(追記)拡大再生産の名作プエルトリコから「俺が自分のためにこれをやったら敵にもメリットが大きくなってしまう」というジレンマを抜いたあたりにグレンモアは位置しており、そこがファミリーゲームとしてちょうどいい。そこが物足りないヘビーゲーマーにはプエルトリコがある。



俺から見て「アグリコラ」は、この自由度と見通しという2点においてライトゲーマーに厳しい

①アクション数が圧倒的に少ない(自由度低)
②選択肢は無限にある(見通し困難)

という組み合わせから、1手番の重みが俺がこれまでやったゲームで最も重く、なにをどうしたらベストなのか常に多数の要素を計算しなければならない。そうしないとうまくいかず面白くならないところに大変さを感じる。遊びとしての重労働という感じ。


BoardGameGeek フォーラムでアグリコラを楽しめなかったと長文評を書く人たちは、だいたい俺と同じことを書いている。

『信じられないくらい優れたデザインですばらしく最適化されているが、まったく容赦無い作りになっている。最低でも2ターン先の計画を立てられなければ、それをできるプレイヤーを相手につまらないプレイとなる。天才の仕事だし高いランクにふさわしいが、自分はプレイしていてそんなに楽しいとは思わなかった。』

てな具合。まあやってて疲れるということですね。もちろんこうしたネガ意見は、ごく少数派なんだけど。

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■12/07/14(土) □ ティーン文化との折り合い
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夏休みに入って以降萌の機嫌がいいので最近ほとんどケンカしてないのだが、「この夏日本に行ったときに、日本の子供たちと萌を比べるな」的なことをMに言われた。

そんなバカなことをするわけないだろう、したこともないと俺は言うのだが、ケンカをしていた春頃に俺が萌に言った「カナダのティーンの喋り方や態度は私にはアノイング(不愉快)だが、それは文化的な違いなので仕方がない。とにかくお互いケンカにならないようにしよう」という妥協案が、Mと萌には「日本の子供のほうがベターだ」と聞こえるのだという。そんな。そんなこと言ってるわけじゃないのだが。

カナダで育った子供と日本移民の親が衝突するという話は昔からよく耳に入り、それは親が母国の文化を押し付けるからだろう、俺はそんなことはせんと常々思っていたのだが、しかし実際こういうことなんだろうなと最近わかってきた。親が文化を押し付けなくても、子供のほうがどんどん変わっていくゆえに価値観の衝突はどうしても起きるのだ。

俺は日本文化を押し付けたりはしてない(と思う)し、日本の子供のほうがいいだなんて思ってはいない。しかし「イノセンス=幼稚」「ルード=クール」「勝手=自立」と思ってるとしか思えないカナダのティーン文化に萌が染まり、態度振る舞い言動が粗雑になっていくのは単純に腹立たしいし、それは隠せない。そこをスルーなんてできないタイプの親が衝突するわけである。

まあもし日本に住んでいたら「~じゃね?」とか萌が喋り、それにきっと俺はイラついていただろうな。夏休みに入りこうした態度が萌から消えたのはおそらく、萌が中学でのストレスからフリーになり、小学校時代の気の置けない友達とサマースクールに行ってるからだと思う。この夏休みの間はややイノセント側に戻ってる感じだ。



ともあれ、「萌は自分の文化的アイデンティティを模索してる最中なんだ。年齢的にみな人種意識も芽生えているので難しい年頃だ、寛容になってやれ」とMはいう。たしかになあ。それは全くその通りで、今萌は2つのナショナリティを持つ難しさを抱えているのである。それはやはり気の毒に思う。不愉快な態度やオロカさを看過することはできないが、とにかく文化的な差異によって萌の気持ちを傷つけることはないよう、よりいっそう俺の側で気をつけていかねばならない。肝に銘じます。

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■12/07/15(日) □ 勝ったのはわしらではない
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今日は朝昼晩と3回家族でグレンモアをプレイした。かつてのチケライ Euro を超えた大ヒットゲームとなりつつある。

俺は連敗してるので、夜のゲームでは酒工場を取りMが好きな酒作戦を妨害する策に出たのだが、この奇策が裏目に出てワーカーが不足し、作物が取れず肉屋が稼働せず、中盤にしてドツボにはまってしまった。後から牛歩でワーカーと作物を取る策に切り替え追い上げたが大敗。Loch Oich(村の全タイルをアクティベートする神様タイル)をMに渡したのが最大の失敗だった。俺が取ってもたいして点にはならなかったのだが、必要はなくてもタイル数の多いMに渡すべきではなかった。あれを俺が取っていたら萌の勝ちだったと思う。俺の悪手で萌の勝ちゲームを潰してしまった。すまん。

しかしこの失敗してしまった悔しさが楽しい。グレンモアは優秀な家族ゲームだと思う。作物の生産とマネージとお買い物と構築を楽しみながら40分で終わり、その間に皆がいい手を打ったあれは失敗だったと思えるところがいい。俺はソロでこのゲームをやったりするくらいで得点法は家族内で最も多く知ってるわけだが、だからといって勝てるわけではない。勝つには良いアイデアと良い判断と少しの巡り合わせが必要なのだ。

これがカルカソンヌだと、どうやったって BSW で鬼のドイツ人に鍛えられた俺が勝ってしまう。妨害法やブロック法を覚えてしまった萌もビギナーとは勝負にならないため、あれほどの名作なのにうちではもうほとんどプレイされてないのである。カルカソンヌを打ちたいときは、俺は BSW に行ってカリカリと戦っているのだ。



今日3戦3敗(汗)して見えてきたのだが、2人戦で萌相手にプレイするときにはいい勝負になる俺の打ち方が、3人戦では通用しないらしい。先ほどの Loch Oich 譲渡以外これといって下手な手を打ってる自覚はないのだが、点が伸びないのだ。

3人戦ではなにが違うかというと、俺はほしい店や城タイルが出るとしばしばタイル5~6枚分の大跳びをするのだが、このせいで畑や家畜のタイルがあまり取れず――というか畑・家畜・村の基本タイルをあきらめ大跳びしないと、早い者勝ちのいいタイルはなかなか取れない――、産出する作物が不足してしまう。当然歳の市や肉屋での換金頻度が低いし、城を買う資金も不足しがちだし、村も取れないのでワーカー数も足りなくなってくる。で3人戦だと次の手番もなかなか回ってこず(常に最後尾プレイヤーが手番)、俺が先頭で待っている間に2人はザクザクと作物を出し、コツコツと点を取っていくのだ。俺も獲得した大物タイルの効果で後半はどーんと点を取れるのだが、気がつけばそれでも追いつかないほど離されているわけである。

さらに3人だと中央市場での作物売買が活発になり相場が動くので、作物をコンスタントに産出して売るだけでもバカにならない資金が入る。だれかが作物を買うとその市場価格が上がり、その作物を自分の畑で作れる自営農家は余剰作物をいい値段で売れるのである。萌はこれで毎ゲーム10金以上の点を稼いでいる。得点上も資金繰り上もやはり作物は不可欠。グレンモアはやはり作物を作ることが基本のゲームなのだ。序盤の地道な農作業による地固めが必要なのだ

というわけで明日からは地道な農家です。勝ったのはわしらではない。百姓たちだよ(志村喬)。

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