2012/09/30

日記「初めての日本語ワークショップ」

「丘の上で米欧ゲームを思う」「欧米の説明書」「画伯復活の兆し」「あやつり人形実戦」「あやつり人形@ホーム」

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■12/09/15(土) □ 初めての日本語ワークショップ
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 今日は初めての日本語勉強会。俺が先生となり、萌とLちゃん(共に12歳中2、日本語会話は完璧だが語彙と読み書き力が小学校低学年レベル)に教えることになる。初回の手応えはなかなかよかった。

 時間割としては最初の1時間は一緒に JLPT(外国人向け日本語検定)問題集をやり、後はそれぞれの語彙ビルド課題をやるという感じ。JLPT の何がいいかというと、日本の国語教科書を使い漢字ドリルをやる(――つまり日本の伝統国語教育法を踏襲する――)日本人子弟向け日本語学校と違い、『漢字が書けなくても見て意味がわかれば OK(テストの回答は常に4択)』というユルい方針で、外国人向けにより生活用語方面に即した学習要素が組まれていることである。

今日やったのはポスターを見て情報を読み取るという課題で、これはクイズだから子供にも楽しいに決まっている。このクイズに答えつつ、「夏物」「最終」「雑貨」とはなにかとトピックにまつわる用語を拾い解説し、必要に応じノートを作らせていった。こういう題材は長い文章が続く国語教科書よりも楽しいし、シチュエーションに言葉が織り込まれているので記憶しやすい。これがつまりうちのM先生が専門のグローバルエデュケーション(総合・複合・寄り道をキモとする教育思想)だろう。

 考えてみれば国語教科書のように文芸作品などの抜粋を使い長文読解する英語学習テキストなんて俺は使ったことがないわけで、あんな高度なものを外国で暮らす子供の日本語学習に使うのは相当に無理があると思う。もっと早くこっちに気づけばよかったと思っている。



 言語学習はやったことを記憶に定着させるのが難しいわけだが、それは作った単語ノート(一覧)とテキスト(文脈)をクロスリファレンスとして使い、何度もレビューさせるしかないだろうな。一覧や単語カードだけで丸暗記なんてできないが、文脈があれば覚えられる。この併用のコツを子供の身につけさせたいわけである。このノート作りはやりながら手探り即興でやってみた学習法だが、要は俺が英語を自習したのと同じことをやっぱりやっているなと思った。

 萌に集中力がないのが弱りものだったが、まあこれは人の家に来ているという高揚感もあるかもしれん。それに家で俺と2人だけでやっていたらもっと集中せずただケンカになるだけなので、こうしてワークショップ仕立てにする意義は大きい。

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 MK がボードゲームを大量に買ったとの知らせ。なにを買ったのよとワクワクして聞いてみたら、

Miskatonic School for Girls (ミニスカトニック女学院)
Yggdrasil (ユグドラシル)
Betrayal at the House on the Hill (丘の上の裏切者の館)

 1つも知らん(笑)。つまり日本で話題になるようなドイツなゲームではないらしい。どうもやつの行くゲーム屋にはユーロなゲームはあまり入ってこないようだ。きっと世界のボードゲームはドイツ系とアメリカ系に大分できて、日本は前者、カナダは後者に属するんだろうな。アメリカ系はパラメータが細かくあってルールが複雑で+-表を参照しながらやるイメージで、食指が進まない。実際ボードゲーム開眼時にそういうゲームに当たっていたら、俺は「まあこういうのもあるだろうね」くらいで興奮してなかったと思う。

 セールで一気買いしたとのことでこの他にもあるらしく、明日のゲーム会ではお化け屋敷的から逃げ惑うという「丘の上の裏切者の館」をやってみたいと発注しておいた。

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■12/09/16(日) □ 丘の上で米欧ゲームを思う
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MK 家ゲーム会に行きたかったのだが、4時までずっとMと庭仕事。ゲーム会の最後だけ参加し、「丘の上の裏切者の館 (Betrayal at the House on the Hill) 」をプレイした。お化け屋敷に迷い込んだ冒険者たちが出口を求めさまよう TRPG(テーブルトーク RPG)系ゲームである。冒険者の1つ1つに微妙な能力とひとクセある容貌のフィギュアがついている。微細画で描かれたタイルを引いて置くことで新たな展開を持つ部屋が次々に開かれていくのは実に魅力的で、その部屋に入ることによってイベントカードが引かれ、敵が襲ってくるとか落とし穴に落ちるといったイベントが発生するわけ。

 中盤俺が裏切り者にノミネートされ(くじ引き的な強制)、すると「裏切りの書」を持って別室に行きそれを読まされるというのがおかしかった。この書に書かれた裏切り行動要領と勝利条件に則り冒険者たちの邪魔をするわけである。俺がそれを読んでいる間に、残りメンバーも冒険者側の勝利条件を話し合うという段取り。なるほど。

 このお邪魔者役の仕事は「呪いのミイラ」のミイラ役のようで、「そっちか今行く待っておれー(コロコロ)」とサイコロを転がし冒険者を追い詰め、超たのしかった。結局退治され負けたが。



 Web で読んだ説明から想像と期待した通りのゲームで面白かったが、しかしこうした TRPG 系は不可避的に

「敵パラメータの○○が3だからサイコロ3個を振って、自分のシートのライフの値より大きければダメージありなのでサイコロをパラメータ○○個分振って……ただし前のターンの毒が効いてるのでアジリティがマイナス1で……」

みたいな処理で動くので、どうしてもテンポが悪い。面白いけど待ちが長いし、自分の番でも数値が飛び交いなにが起きているかはっきりわからず、萌が招いた SP ら子供はややノリ悪し。アメリカ/カナダのゲーマーは本当にこういうパラメータものが好きだよな。ディテイルにアイデアを盛り込むと面白く(というか interesting - 興味深く)なるのは当然だが、スピードは反比例して落ちるのだ。

 こういう面倒処理をオートですっ飛ばすためにコンピュータ RPG ができたわけだが、多人数 TRPG には対戦や協力などこれならではの楽しみがあるのはよくわかる。裏切り者役は楽しかったしね。だから要は計算を単純にしてスピードを上げてくれたらいいのだがな。パラメータをいじるのはヒットポイントとスピードくらいにしておいて、細かい数値シートを参照せずとも盤上のビジュアルだけで進められるよう単純化したら、短時間で大きな邸をくまなく周り、事件があちこちで発生して楽しいんじゃないかと思った。

 まあ考えてみれば現代ドイツ・ユーロゲーム群というのはおそらく、俺が望むような単純化をイントレスティングなゲーム理論群に対し行い、処理量をそぎ落として面白さを抽出し生まれてきたものなのだろう。短気で何ごとも最適化しないと気が済まない俺がそっちにより心動かされるのは当然のことだ。逆に北米ゲーマーたちはユーロゲームに対して、「メカニクス(抽出された面白さ=ゲーム性)しかない」とディテイルの不足を批判するわけだしな。

 今日は 90 分で終了。ゲームは面白いのでそんなに長くは感じなかったけど、カルカソンヌとコロレット以外のボードゲームは未体験の SP には明らかに重すぎた。彼女には Dixit みたいなパーティゲームをやらせてやりたかったな。

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 これで俺たちは帰宅となったのだが、今日のゲーム会には「ドミナントスピーシーズ」という珍しいゲームを持ち込んでた新顔君がいた。「これは聞いたことがあるよ。面白い?」と聞くと、「いや実はまだやったことがない」という。「他には RPG っぽいルーンバウンドも拡張まで全部持ってる……だけどあまりプレイする機会がない」という。

 どうも好きなゲームはその拡張まで全部揃えずにはいられないという、強度のコレクターなヒトらしいw 「んじゃ、ゲームがやりたくなったら連絡してくれよ。あまり長いのは苦手なんだけど、ミドル級までならいくらでも付き合うよ」と伝えておいた。なんかいいのを掘り出してきてくれないかな :-)。

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■12/09/22(土) □ 欧米の説明書
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強欲商人が金を貯めすぎ殺される物語……的な
MK が一気に多数のボードゲームを買いすぎたためプレイされず死蔵されてたものの中にクラシックカードゲーム「あやつり人形」があったので、これは俺がもらっておくと借りてきた。ルールを読み1人2役でやってみる。王、暗殺者、泥棒、建築家といったさまざまなキャラクターを選ぶことでその能力を使い建物カードを建てていくゲームで、コツコツお金をため建物を買っていくのはそれだけで楽しいが、肝心の役割選択部分のルールがよくわからない。王が暗殺者を取って王を殺せば永遠に手番が変わらないではないか。そんなシステムの穴があるゲームなわけがないのだが。

 欧米のボードゲームは例外なく説明書がわかりにくい。学校の通知でもなんでもそうだが、欧米人は全部を読まないと細部がわからないような書き方ばかりする。時系列や箇条書きを使うことによって、何も知らない人が流し読んでビジュアルに概要が掴める説明を書くということができないのだ。

 でルールが全部わかった後から読むと、例外処理の方法(この場合は殺された王がどうなるか)は次のページに書いてあったわみたいなケースが多い。「それは次ページにちゃんと書いてある。目を通さないユーが悪い。イッツユー!」というわけである。そんなアナタ、裁判に勝つために説明書を書いてるわけじゃないんだから。未知のプレイヤーは不明な場所があれば「あれ、おかしいな(矛盾が出るから)王を暗殺してはいけないんだっけ?」とルールブックの前の方は見るが、後ろのページは見ないのである。ルールを知らない者にとって、後ろのページは未知の迷いの森だから。だから疑問点はそれが出る時点で、つまり時系列で書いといてくれないと詰まってしまうのだ。

 ともあれ、毎度のことながら説明書じゃよくわからんので BoardGameGeek のフォーラムなどあちこちを読んで役割選択がわかり、コインがたまると面白くなってきた。「緑の建物が多いから商人を取ると1ターンで5金入る」といったインセンティブがうまく働くわけである。当然暗殺者や泥棒はそれを読み商人を狙う。これは面白そう。

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■12/09/23(日) □ 画伯復活の兆し
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萌の絵のうまさが突然戻った。壁を破った。お母さんの絵。似てる(笑)。―――土曜にバンクーバーアートギャラリーでマチスを見たからうまくなったのかと聞くと「そうなの」とうなづく。ホントか? 最近バドミントンもうまくなっているし、身長ドカ伸び&反抗期突入から1年とひと夏を過ぎ、心身のバランスが取れてきたのかな。



 昨日今日であやつり人形をソロで計3ゲームほどやってみた。これは面白い。同色の建物カードを揃えるだけで収入がどんと増え高価な建物に手が届くため、簡単な仕組みなのに拡大再生産の加速感がちゃんと出る。しっかりとした構築(前の努力が後につながる)感があるし、敵がそれを止める攻撃手段も用意されている。その攻撃をさらに読んで裏を取るという戦術的な面白さが濃厚にある。ミニ建物を速攻で8枚建てフィニッシュなどという戦術もあるそうで、ドミニオンなどより見通しもコントロールも効く。これはいいゲームだな。


みんなヒドイ絵柄
名探偵コナンの犯人と殺され役勢揃いという感じのキャラの絵柄は好きじゃないが、建物の絵柄はどれもいいし、カードの品質は非常に高く美しい。得点が高い大きな建物やプラス効果のある紫建物を建てると非常にうれしいのである。建築、つまり苦労してお金を貯めものを買う楽しさはグレンモア以上で、サンファン・プエルトリコに近い。せっかく建てたものを壊されると腹煮えくり返りそうだが :-)。

 これはいったんM萌をその気にできたら、あっさりしすぎて大ヒットにならなかったコロレット、3人では盛り上がらないお邪魔者に代わり、ちょっと遊びたい時に最適なゲームになるんじゃないかな。

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■12/09/26(水) □ あやつり人形実戦
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箱がどうも使いにくいので、みなさん工夫されてる様子
MK のところで「あやつり人形」をようやくプレイ。事前に1人で何度も回して感じていた通りの面白さ、スピーディな3人戦でおお受けし、2連荘となる。これはいいゲームだ。

 初戦はルール説明がてらのテストプレイ。3人ともゲーマーだったので2戦目はもう本気で、各種職業のメリットを生かし攻撃を受けたり交わしたりしつつガンガンと建築していく。2~3人戦だと役割を2枚取るというルールが効いていて、暗殺者と泥棒が暗闘している間に攻撃されなかった2枚目が仕事を進めていく感じになる。RPG パーティの前衛と後衛といった感じで、たとえ前衛が暗殺者にやられても後衛を使いうまく建設していくという感じ。非常によろしい。これは多人数だとシビアで少人数だと軽く楽しいゲームなんじゃないかな。

 今日も会うなりいきなり挨拶もせず自分の持ちゲームのルールをとうとうと説明するほどのゲームマニアである BR 青年(ドミナントスピーシーズを持ってるがプレイしたことがないという彼w)が、中盤に建築家を使いいきなり小建物3軒を建て7軒となってしまう。やられた!

 このままでは次のラウンドで8軒となり負けるが、もう彼の建物を壊す時間がない。そこでどうやって自分の点を最大化するかを熟考し、1ラウンドで2軒建て5色揃えのボーナスを取り見事逆転。ヨシ。しかし彼が9軒めを建てて再逆転し、ゲームセット。うーん、いいゲームだった。

 「俺が取った時に暗殺者がなかったからAが取った可能性が 50%、俺が泥棒で次のラウンドで商人が消えたからBが取った可能性が 50%」と考えていけば攻撃と防御のヒット率は上がるだろうが、実際にやってみるとそこまでは考えきれないし、考えるとテンポが落ち面倒になる。BR はそうやってカウンティングしていたが、それは彼がマニアックなゲーマーかつ計算好きな人だからで、俺はそこまでは考えてなかった。

 しかしそれでも「このターンで MK はたぶん王を取る。暗殺者を取れば殺せる」「MK か BR が俺の金を狙ってくるから、俺にメリットがない傭兵を取れば狙いをやり過ごせる」くらいは場の流れで自然に読めるし(敵のモチベーションがヒントになる)、それはとてもドキドキすることで、当たっても外れても超楽しいのである。やってもやられても楽しい。

 お手軽なカードゲームなのに、俺がゲームにほしいスピードと加速感、拡大再生産、ギャンブルとリターン、ラック、敵の裏をかくこと、逆にダマされること、いい手を思いついてドキドキと実行すること、思いがけぬ手を打たれ唸ること――そんなこんながここに全部入ってる。これは傑作ですね。

 カードを立てて隠して置く楽しさも久々に味わったな。カード立てのいいのが欲しくなってしまった。これは買いだ。当分俺がキープし、自分のコピーも是非買おう。

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■12/09/29(土) □ あやつり人形@ホーム
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 本日は日本語勉強会で教師ワタクシに叱られ機嫌が悪くボードゲームやる気ゼロだったムスメを入れて初の【あやつり人形】@ホーム。序盤はルールもわからんしナニコレ最悪というグダグダ態度の彼女だったのだが、盗みが成功して巨万の富を得大きな建物を建てたあたりでスイッチが入る。

 そこからはお父さん早くしてよ遅いわよなんなのどゆことと職業選択を急かし、「建築家で2軒!」などとビシバシと建物を建てていく娘。俺と MK がムスメ建物の破壊などは手控えたせいもあって、8軒建てのボーナスも得て見事勝利。これはインスト成功感高し :-)。

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