2013/06/08

日記「カワイイとカッコいい(パフュームときゃりー)」

「20年前のバンドツアー」「カナダ音楽真面目すぎ」「赤毛のアンダイジェスト」

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■13/05/15(水) □ 20年前のバンドツアー
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ハチ's ブルーズバンド in 長野'93 ダイジェスト (2/2)(右端レスポールが俺)
◆アップダウントラック(Hachi)
◆五人のワイフ(Hachi)
◆ヒューマンバイクのモーターウェイ(タイドプール)
◆モジョワーキング(Muddy Waters)

 Facebook にボーカルのハチがやってきたのでうれしくなって、カナダに帰っちゃう女の子(現うちの奥様)を送るためにやったさよならギグ、「ベイビー行かないでくれ長野ツアー」のダイジェストを20年ぶりに作り見せた。ハチは自分が粗かったといっていたが、やっぱり奴がすごい。最初から最後までカッコつけていないのにカッコいい。「ヒューマンバイク」なんか興奮してメーター振り切れてるのに、声と体は流れるようだよ。「ジョーイ」(1/2)で歌った「オルガンもハーモニカもばっちりやってみせる」天才的音楽家ジョーイは、彼自身のことだろう。

 バンドの音とアタマも振り切れてる。これを萌に見せると、「みんな興奮し過ぎ」と笑う。実際ライブハウスのロックバンドなんて見たことがない子供の目には、年甲斐もなくぎゅんぎゅんにドライブする大人の姿がファニーなものに見えるのかもしれない。

 このビデオのカメラを持ってたのはアタマ悪いアメリカの兄ちゃんだったんだけど、そんな彼にもレンズ越しにバンドの熱量がちゃんと届いてる。見知らぬお客さんたちにも言葉がわからぬ人たちにも届いてる。客席でメガネをキラキラ揺らしてたあの子にも、もちろん届いていたのです。

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■13/05/18(土) □ カナダ音楽真面目すぎ
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 カナダのインテリに愛されるフォークシンガー、ブルース・コバーンのことを今朝ラジオが特集していた。彼に東京の雑然さを描いた「Tokyo」という歌がある。騒音、排ガス、コンクリート、暴力マンガ、パチンコ、サラリーマンの立ちション。「おお東京、お前の腕で俺は眠れない/だけどいつか恋しく思うだろう」という感じ。

 東京に行ってそんな陳腐なイメージを歌われても、ありきたりで面白くはないというのが俺の感想だったのだが、今そういったら「わかってないわね!」と奥様に叱咤されてしまった。「その都会においての寄る辺なさを歌ってるんじゃない!」――そうか、すいませんすいません。



 まあそれでも歌としてはつまらないという感想に変わりはない。どこかの分かってない愚物が作ったこのビデオも東京の通勤列車やばい煙に沈む北京の写真にこの歌を組み合わせたもので、この歌が喚起するイメージはやっぱこうした陳腐な終末的世界なんだよな。この煙の町のキューポラの下にあるクリーニング屋に働くあの子が素敵(「最高の離婚」オノマチ)みたいな想像力はない。このビデオを紹介した日本在住外国人向けの冊子らしい「タイムアウト東京」の記事も、「東京を“崩壊の象徴”のようにして陳腐な歌詞で歌っている」と、俺と同様の感想。

◆世界のソングライターたちを魅了した“東京の魅力”とは(タイムアウト東京) Byジョン・ウィルクス 

 カナダのミュージシャンの問題はコバーンに代表されるように、インテリでマジメすぎ音も整いすぎていて、つまりちっともロケンロールじゃないことである。環境問題会議でチーム戦をすれば日本のロッカーたちに圧勝すると思うが(先鋒キヨシロー・ノックアウト負け、大将坂本龍一・判定負け)、音楽ではそうとも限らないのだ。

 しかしこの「タイムアウト東京」の東京ソング特集記事はすごいな。このトーキョー25曲の解説は全部おもしろかった。和訳も素晴らしい。こんなに音楽に博識でシャープな人が、トーキョーで暮らし書いている。それだけでも東京には力があるよな。バンクーバーの日系雑誌なんてレストランや名所案内のみで、俺は一度も読んだことがないのだから。

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■13/05/19(日) □ カワイイとカッコいい(パフュームときゃりー)
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昨夜SRが泊まっていったのだが、2人は部屋にずっとこもって Perfume ダンスを練習していた。SRは大人びて扱いにくいイメージが俺はあるのだが、話をするとぜんぜん穏やかで話しやすい。Perfume を好きになってくれたなら好感度さらにアップである :-)。

 数時間踊ってた2名は汗だくになって部屋から出てきた。「スプリングオブライフを完璧に伝授した」と誇らしげな萌。部屋を覗くとうわすごい、萌はホワイトボードにびっしり歌詞と振り付けを書き込み教えていた。

Koi wo shiyo oyo (右指し、胸叩き、頭指し)
Spring up, speed up (ヒップ指し、ヒップ指し)


 萌はカナダで習えるヒップホップ/ポップス系のダンスには興味がなく、Perfume のダンスがしたいだけと言っている。それは教えてくれる人はいないから独学でいくしかないな。こうして友だちが一緒にやってくれれば、バンドみたいに楽しいしね。

 ◇

 白人社会に暮らすアジア人キッズは、年頃になると味気ない思いをする。メディアに出てくる人気者にアジア系はゼロで、有名人は環境保護家デイビッド鈴木のような「賢い人」だけなので、彼女らが学校でいい点を取るとアホな子に「あなたはアジア人だからね勉強できて当然よね」なんて言われる。

 萌がパフューム草の根運動をする背景には、この悔しさがいくぶんあるかもしれない。自分のバックグラウンドにある文化のカッコいいところが世界に知られてほしいという気持ち。だから俺たちはパフュームが曲も英語詞も単調な「Spending All My Time」のようなハズレを出したり(※)、ドラえもんの歌などをやられるとああ時間がないのにと肩が落ちる思いがする。サッカー同様、あの身体能力のピークは短いだろうに。
(※)当人たちもこの曲は音も歌詞も抵抗あったとのこと。中田ヤスタカという個人の才能頼みじゃいつかは行き詰まるよな。:Perfume「Spending all my time」の英語詞/日本語詞を巡る、Perfumeの「ブレない」ヴィジョンの有り方について

 「カンナムスタイル」は「アジア人にもひょうきんなヤツはいる」という好印象を欧米に与える効果はあったので、パフュームでカッコいい方面にも認識を伸ばしてほしいものである。「カワイイ」なんて必要とされてないと思う。

 ◇

 とか考えていたらちょうどNHKで《きゃりーぱみゅぱみゅセンセーション》という番組が。「いやいや何言ってるんですか世界はカワイイを求めてますって」という認識で日本のコンテンツ産業はきゃりーを推しているようだけど、彼女のようなカラフルアイコンを楽しんでくれる外国人は、元もとゲームやアニメ経由で受容体が広い例外的な人たちなんじゃないかな。

 NYのライブを見たお客さんは「クレイジーで最高!」って言っていた。クレイジー'n キュートだね。こういう広受容体の人たちが増えてくれたらそれはまあ喜ばしいけど、普通はうちの娘みたいに「いかにも日本って感じー」とスルーされるだけだ。Puffy が 2000 年頃北米でブレイクしかけたんだが、アニメとなり「カワイイ」方向で少量消費されブームは終わってしまった。きゃりーが届くのもその程度だろうと思う。

 しかしパフュームのダンスと音のカッコよさは娘やその友達のように、おたく気質がないカナダ一般女子に直球で届くのだ。カワイイよりもカッコいいほうが貫通力が高いのである。カワイイじゃ壁は破れない。憧れを受けねばアイドルにはなれない。たった3つの命を捨てて、生まれ変わった不死身の体。パフュームがやらねば誰がやる

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■13/05/24(金) □ 赤毛のアンダイジェスト
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 MP3 プレイヤーに入れといた名曲あがた森魚「いとしの第六惑星」が車の中で流れる。行ったこともない駅名が並んだだけのこの歌詞が、どうして胸を打つのだろう。

熊本 南熊本 水前寺 龍田口
三里木 原水 肥後大津
瀬田 立野駅 のりかえ 長陽
阿蘇下田 あとは 夜峰の岳


 寅さん映画のどれを見ても、知らない町の風景になんだか懐かしい気持ちがするように、「熊本 南熊本 水前寺 龍田口」という駅名が見たことのない豊肥本線の風景を思い浮かばせるのかな。その風景を眺めている旅人オレの姿も見えているような気がする。

 ◇

 夏にカナダ東部に行くのだが、住んだことのあるハリファックスは懐かしいけれど、「プリンスエドワード島、シャーロットタウン赤毛のアン、ニューブランズウィックのりかえ、あとはセントジョ~ンズ」と名前を口にしても、知識がなくて熊本に対するような旅情が湧いてこない。

 これではいかんとアニメ「赤毛のアン」の総集編を借りてきて萌と見たのだが、90 分じゃ「とにかく大量に喋り夢見がちですぐフリークアウトするも芯が強い。つまりアンはうちのMさんである」としか分からなかった。1つ1つのエピソードは愛らしいが、それをいくつか見たくらいでははるばる日本からファンが PEI を訪れたくなるほどの話とは思えない。これはおそらく朝ドラや大河ドラマのように、長い時間をかけこうしたエピソードが積み重なって初めて愛情を掻き立てられる種類の物語なんだろう。しかし本を読んだりアニメ全編を見るほどのモチベーションは、このアニメからでは得られないのであった。

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