2014/06/09

日記「本田の不調より惜しむもの」

「ミニゲーム会」「香川が躍動するキプロス戦」「最後のブラスバンド」「本田控えめコスタリカ戦」「大谷ノブ彦レコメンド」「本田の不調より惜しむもの(ザンビア戦)」

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■14/05/24(土) □ 姪とミニゲーム会
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 【CL 決勝】レアル MF モドリッチが中盤で追いついたボールをダイレクトにアウトサイドキックで前にバシッと送ることで、アトレティコのプレスのタイミングを何度も完璧に無効にしていた。ダイレクトではあり得ないタイミングと角度とスピードでパスが出てくるので、アトレティコ守備者が反応できないのだ。サッカーにはまだこんな見たことのない技があるのかとワクワクした。技術と崩しのバリエーション&それに対する男たちの魂の守りの博覧会のような試合でした。

 俺にはバルセロナよりもレアルマドリードのサッカーのほうが面白い。バルサはよく足であんなに延々パスをつなげられるなとは思うが、彼ら超絶技術プレイヤーたちにとっては想定内の距離と速さのパスを繰り返してるわけで(その距離と角度を永久に作り続けられるところがすごい)、バスケットボールやホッケーに似ている。つまり手でやれば俺もできるかも(笑)という感じのサッカーではある。足でしか出せないレアルのパススピードと距離と意表をつく角度、そしてその先に走るアタッカーたちの極限スピードとコントロール技術には、サッカーでしか見られない美しさがあるといつも思う

 日本代表はどちらかというとバルサっぽいんだよな。まあクリロナやベイルみたいなウィンガーは日本にはいないのだが、誰も予期しない場所に長く強いグラウンダーパスが出て「――あ! 長友が走っている!」というレアルのようなスリルを感じてみたい。しかし中村憲剛を選ばなかった時点でそれは、失われたパスなのだ。

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 うちに泊まっていた姪SFとボードゲーム会【こねこミキサー】。ミキサーに投げ込まれた猫たちの中から自分の猫だけ助けろという、まったく笑えない小学生的アメリカンジョークから生まれたアメリカンゲーム。米加ゲーマーは直接攻撃が大好物なのだが、「これを喰らえ!」「ぎゃー!」という遊びで「ラブレター」以上の時間や思考能力を費やす意味がはたしてありや。まあそれだから今「ラブレター」がヒットしてるんだろうが、これ以後もこういう直接攻撃ゲームは米加からキリなく出てくるんだろう。

続いて【レボリューション】。12の選択肢をついたての陰でシークレットに競り、勝ち取った権利で町の9つの施設を専有していく競り&地域専有ゲーム。これは面白かった。競りゲームというのは初めてに近いのだが、「ここは誰も狙ってないので1金で取れるはずヒヒヒ」と考えるのは楽しい。

 欠点は序盤で誰かが薄く広く賭け、それがたまたま他者とバッティングせずコインより強い武力と脅迫トークンが大量に取れてしまうと、以後そいつが武力と脅迫を使ってたいがいの競りに勝ててしまい容易に独走してしまうこと。今回MKにそれが起きてしまいゲームがしらけかけたのだが、彼のベイビーがいいタイミングで泣いてくれてゲームから抜けざるを得なくなり、そのおかげで残った3人は素晴らしい接戦を最後まで楽しめた。こうした安易拡大再生産独走を止める方法がゲーム内にないのが明らかに欠点である。ここをベースに詰めれば傑作ゲームになっただろうにと思う。

 しかし最近家ではクイックで満足感の高いボーナンザ2人戦ホームルール(畑3枚、手番で最大3枚置き)ばかりやってたが、こうして何かを構築していく中量級ゲームはやはり達成感があってよろしいなあと思った。こないだ数年ぶりにやったチケライ Euro も楽しかったしな。できればやはり農業建築拡大再生産系がやりたいのだが、グレンモアはさすがに飽きた。なにかまた買いたいのだが、俺が知るかぎりミドル級で文句なく面白い農業ゲームってないんだよなあ。

  SFとはボーナンザ3人戦もやったのだが、 直接攻撃のアメゲーが好きなSFは俺やMと違って交渉が辛くて辛くて、「えーこれでもトレードしてくれないのかよ!」と悲鳴が上がるおもしろゲームとなった :-)。それでも彼女が勝ったという。

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 せっかくSFが2泊もしてくれたのに俺も萌もあまり遊べなかったのだが、送っていく途中ボドゲのことや萌の音楽のことをたくさん話した。萌の聞くオルタナティブロックがうるさくてつまらんのだよとこぼすと、ポップを聴かれるよりいいじゃないと言われた。そりゃまあそうだがね。SF21歳は反抗期がまったくないまま大人になった、珍しいくらい話しやすい子である。

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■14/05/27(火) □ 香川が躍動するキプロス戦
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 【キプロス戦】期待は高まったが結局いつものスタメンでスタート。本田はアタランタ戦と同レベルで、アタッカーとして戦力にはまったくなっていない。香川柿谷長友は周りより2テンポくらい遅い本田がボールを収め次のアクションを起こすのを待ち、リハビリを手伝っているという感じの試合になっていた。技術で敵を交わせないので相手に体重をかけ動きを止めボールをキープしようとし、チームで一番多くファウルを取られている。足を引っ張ってる感がすごい。

 香川が素晴らしい。シーズン中も体は十分キレてたけれど、代表だとプレイのリズムが合うのでえらいことになっている。マン U の不調に抑えつけられてきたギプスが取れたみたいな躍動感。脚にボールがついているのでボールを見ず周りを見渡しながらキープできる。シュートもワールドクラス。香川のW杯になりそう。というかそうならないと厳しいだろう。

 チーム全体としてはボール回しもスムーズで、内田がしっかりプレイできているのがありがたかった。しかし長友が別格の強力さで香川も調子いいため例によって攻撃は左からばかりとなり、いい加減飽きる。何回ぶち抜いてクロスを入れてもそうそうヘッドでは勝てないのだから、長友がもっと工夫するのとともに右からの攻めもちゃんとやってもらいたい。ボールが左にばかり行くので岡崎と柿谷はなにもできず、ボールタッチも少ないゲームであった。



 俺が本田香川よりも期待する大久保は後半短い時間 FW で入ったが、たちまちイニシアチブを取り個人技とコンビネーションの両輪で攻撃を作っていた。最後に本田のプレイ選択が良くなったのにも寄与していた。うまくて判断が早ければやはり誰とでも合うのだろう。中田がローマで即活躍したように。

 代表ではチームがほしいところで必ずボールをくれるので、後半の本田は判断に冴えが出てリハビリ効果が感じられたが、ここから回復してもミランで怪我をする前あたりの状態に戻るだけだろう。ミラン本田は単直に言って下手なのだ。周りと合わないとかポジションだとかコンディションがという話ではなく、プレイで何も生み出せないから失望の声が飛んでいたのである。

 「セリエAの下位でもスタメンは難しい」とまでミラン OB のコスタクルタに酷評されていたが、それは言い過ぎにしても相手 DF が本田のプレイ方向を限定すると切り返してその逆を取れない。ドリブルはプレスから逃げる方向にしかできない。パスはつなぎか DF 越しのロブ。シュートは枠に行かないと、要はやってることは最近の日本代表と同じなのだが、ビッグクラブのアタッカーとしてはブーイングものの凡庸さなのである。バイタルで持ってもつなぎとキープしかできない AMF なのだから、お前が10番言うなとミランサポが苛立つのも無理はない。

 去年のコンフェデ・イタリー戦ではもっといいプレイも出ていたので、去年から今年にかけて技術、反転力に影響を及ぼすなにかが体に起きたのかもしれない。そして4月の足首の怪我でコンディションがさらに底を打ち、現在はそこからの回復中なわけだろう。体調は回復しても技術と反転力が戻るかどうか。戻らなければ来季もミランというのは考えにくく、W杯後には移籍の話も出るだろう。

 4年前、岡田監督は俊輔が回復しない場合のオプションを用意しぎりぎり間に合ったが、ザックは用意せず来てしまった。試してほしい代替策は数あれど、時間も人員も足りない。結局なんで4年間あったのに憲剛と大久保を使った強力なオプションを用意しておかなかったか、なぜ予備メンバーを連れて来なかったかというザックの無策さへのため息に尽きる。

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■14/05/29(木) □ 最後のブラスバンド
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 萌の中学ブラバン・合唱部最後の演奏会があったのだが、萌はどちらもやる気をなくしルーティンでやってるのが見て取れた。無理もないよな。音楽指導力に難がある顧問の下、つまらん選曲とアレンジの音楽を3年間やり続けたのだから。やめないだけでも偉かった。いい演奏をして盛り上がることがないし、萌が家で吹いているのを聞けばかなりうまくなってるのだが、自分がうまくなっても全体のクオリティが上がるわけでもない(去年までは全体のチューニングすら合わなかった)。子供の合唱と楽器への熱意を水で薄め続けるような3年間の部活であった。このエクスペリエンスのあとで高校では、クラリネットも合唱も続けないだろうと思う。

 萌はもともと楽器よりも歌が好きでハモるのが得意なのだが、合唱部では3年間一度も二部合唱すらやらずじまいだった。合唱部なのにエレキバンドがついて、半数がマイクで歌い残り半数が口パク(歌ってるが聞こえない)という馬鹿げた形態だったのである。これでワンディレクションとかやって歌などうまくなるわけがない。萌は最後の1年は裏方でギターだけ弾いていた。今日はファレルウィリアムス「ハッピー」という現大ヒット曲もやったのだが、合唱ガールズの歌唱に覇気がなく盛り上がらず。


3年生が起立して聴衆にサヨナラの一礼
最後にビギナーバンド・上級バンド・合唱部が初めての大合奏で「スモークオンザウォーター」をフィナーレとして演奏したのだが、こんな大盛り上がりのシチュエーションでも演奏アレンジと歌唱がしょぼすぎてスパークしなかった。最後はあの鬼盛り上がる「G Bb C~~~~Bb G!」エンディングさえやらないんだから腰が抜けたよ。顧問のミスターB。



 ミスターBはいい人だが音楽がわかっていない。元々ジャズバンドマンだそうだが、管楽器も歌もわかっていない。俺だってブラバンも合唱部も経験はないが、どこが悪いのかはわかるし、ドラム・ベース・ギター・キーボードならばどうすればよくなるかアドバイスもできる。歌もいい声を出してくれたら褒めて伸ばしてやることはできる。ミスターBはそのどれもができんのである。

 こんな音しか作れなくて学校から文句を言われない――というかミスターBに指導能力がないことがわかる上司が多分いない――のだから、カナダの音楽教育のレベルは低い。日本の音楽教師・顧問は音大出身のクラシック系がやっているが、BC には音大はないらしく、ゆえにミスターBのような人がこの職につけるのだろう。

 今年半年だけ開催された演劇部は子供らがうんざりするほど顧問の指導がうるさかったそうだが、結果は素晴らしかった。部活は顧問ですべてが決まる。カナダは音楽よりも演劇のほうがレベルが高いのかもしれない。カナダからいいロックバンドは一向に出てこないしな。まあスポーツでもなんでも本気でやりたい子は学外でレッスンを取るべきという文化なんだけど、それにしても残念な3年間の部活の終わりだった。



 家に帰ると萌は部屋にこもり、アークティック・モンキーズを大声で歌う。お母さんゆずりで声が強く、英国風味をうまく捉えておりいい声だと思う。自分でハーモニーを作り加えており、そのハモリが入ったほうが実際元歌よりカッコいい(ハモリがないからアークティック・モンキーズの歌が俺にはイマイチなのだとこれで気がついた・笑)。自分の子供だというのは抜きにして、彼女に歌の才能があるのは自明である。

 俺はドアをノックし、こんなやり甲斐のないブラバンをやめなくてえらかったというということと、萌には歌の才能があるということだけは伝えておいた。お疲れ様でした。

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■14/06/02(月) □ 本田控えめコスタリカ戦
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     川島
内田、森重、吉田、今野
   青山、山口、
大久保、本田(C)、香川
     大迫

 本田キャプテンかー。うーん。右に入った大久保が景気付けのファーストシュート。しかし守備の連携を崩され危ないシュートを打たれる。左 SB に入った今野の動きがおかしいのだろうか。

 大久保のキレあるドリブルで右サイドからどんどん組み立てられる。やっぱりスゴイすなあ、入ったばかりのチームで、4年ぶりのインターナショナルマッチでこの自信と周りを動かす意志力。ここは俺に任せてあそこに走れと意思を示しているから周りが感じて動く。いいぞいいぞ。大迫にちゃんとフィードも入る。決めろ大迫。

 しかし前半プレスが効かず相手にキープされる時間が続く。守備で青山、今野あたりが距離感を掴めてないのかな。ファウルが多い。青山は敵ボールホルダーに個人でアタックに行ってもいなされており、守備は彼の強みではないらしい。本田は現時点でプレス要員でありいいも悪いもないが、今はこのチームの中心ではないのはたしか。大迫シュート、ポスト。オフサイドか。惜しい。出したのは青山か。いいね。

 香川から大久保! 止められる。よしよし。攻撃は丁寧にバリエーションを試しているという感じ。右からも組み立てられるので、常に香川本田から始まっていたこれまでとは段違いにバリエーションが多い。うわ、簡単に先制点を決められた。マークを離したのは誰? ああ今野かー……うーん。やはり自ら認める通りああいう詰めときゃいいところで一瞬遅れるのが不調なのか。今野の左クロスはよかった。自信を取り戻してくれ。

 前半終了。内田あたりもコンディション的にまだ個人技で相手をはがせないのが厳しい。大迫のポストはめっちゃ力強い。それぞれのいいところは出ているが相手もさすがという展開で、試合として面白い。

 香川はキプロス戦のほうがよかったな。初戦のリバウンドがあるんだろう。監督が思うほど試合カンはなくしてないと本人も言ってるのでここはむしろ休ませ他の選手のマッチトレーニングに使えばいいのに、ちゃんと話はできてるのだろうか。

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 【後半】遠藤が入りいつものようにボール回しが遅くなり(笑)、その分ポゼッションが上がり、ゆっくり組み立ていつものように回して前の人数を徐々に増やし、いつものように最後に入ってきた選手(遠藤)がゴールで同点。しかし痛し痒しだよなあ。大久保・青山のリズムで速く攻めるとどんな敵でもこじ開けシュートを打てそうだが、当然ポゼッション率は下がるので攻め返される。本田・遠藤のリズムでゆっくり攻めると後方でボールを持てて楽だが相手のゴールが遠い。この遅さで果たして本番の相手を崩せるのか。まあ相手が攻め疲れ引いてくれたら取れるだろうが、日本の守備力でそれまで試合の決着を引き伸ばすことができるだろうか。

 誰か(あとで山口と判明!)の素晴らしいダイレクトくさびパスを柿谷が落とし、香川が持ち上がってから足元1-2をコントロールし切って逆転ゴール。見事。スペイン語放送は香川のゴールを「ビーナスゴール」と言っていた(多分)。今のはまあコスタリカがゆるかったかが、あれくらいのスピード感で3~4タッチで簡単に決めるのがやはり美しい。

 岡崎がつぶれて柿谷が巧技で流し込む。3-1、完璧。前半の硬質なスピード感のほうが爽快感は高いけれど、後半のやや遅めのリズム感からひゅっというのがやっぱり日本の強みなんだろうか。とにかくここからさらにコンディションと連携が上がっていくわけだから楽しみにしよう。

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 本田はやはりドリブルで目前の相手をわずかに引っ張りだすこともできないので、現時点ではW杯に出るチームのトップ下というレベルではない。しかしもう今からじゃ実際オルタナティブ案がない。

 しかし今日の試合では調子の上がらぬ本田が後方でつなぎに専念してる分、前線の他の選手たちにスペースと攻撃イニシアチブが与えられていた。モビリティの高い大久保、香川、柿谷・岡崎のアイデアと機動力が生き、そこは悪くないなと思った。本田が点を取りたくて前に出てくると他の選手と重なるし、不調時本田の手クセとなっている確率の低い1-2で攻撃機会が失われる。

 ザックがこれくらいの調子+@でも本田をはずさないのであれば、今日くらいのプレイエリアで前線の選手たちの下支えをしてくれたらいいなと思う。他の攻撃選手のプレイスペースとアイデアを侵食するから俺はたとえ本調子でも本田がトップ下の試合はつまらんのだが、控えていてくれるなら調子が悪くても気にならない。「個ではなく組織が日本の持ち味」と最近言い始めたというのが現れたような今日の本田の控えめなプレイだった。

 ミランサポが口笛を鳴らすくらいのパフォーマンスが、たとえ回復しても今の本田の現状だろう。しかしこの試合のような下支え役を彼がやってくれれば、日本には組織プレイにおいてミランよりもクオリティの高いアタッカーたちがいるーーと書いててうれしくなってきた :-)。

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■14/06/05(木) □ 大谷ノブ彦レコメンド
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 ツイッターで面白いと評判を聞いた podcast「大谷ノブ彦キキマス!」をよく聴いてるんだけど、彼が音楽を紹介する「レコメンド」が素晴らしい。ロックからポップスまで偏りなく、いいものはイイのココロ。紹介された曲を Youtube で探し聞いている。

 大谷ノブ彦のレコメンドする曲は俺へのヒット率5割くらいなんだが、しかしその情熱はいつも気持ちいい。Youtube で曲は見つからなかったのだが、『LAUGH! LAUGH! LAUGH!/槇原敬之』の紹介は素晴らしかった。バカッターをしたり人を傷つけたり、そういうくだらない悪意にふらっと気持ちが傾いていくのに負けてはいけないのだ、そのためにも笑うのだと彼は語る。

 「ミッシェルガンエレファントが売れた時は日本がイギリスみたいな国になるのかとうれしかった」と語っていたけれど、『くそったれの世界/The Birthday』なんて曲が昼間の AM ラジオで流れるんだから、日本はカナダよりもずっとロックステートだよ。

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 萌の部屋から「天国への階段」が聞こえてきた。おお。俺の娘 Zep 化計画は一度車の中で試み無視され中断中なのだが、サブリミナルには働いていたのか。そしてこの曲のギターを教えてくれという。お安いご用だが、あれは世界中の全ギタリストが習うので人前で弾くとバカにされるという難点が…(笑)。

 とりあえず最初の1フレーズを教えると、ボンタンタンタン……ボンタンタンタン……と何度も弾いていた。

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■14/06/06(金) □ 本田の不調より惜しむもの(ザンビア戦)
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【ザンビア戦】
   西川
内田、今野、吉田、長友
 山口、遠藤(c)、
岡崎、本田、香川
   柿谷

 日本はいつも立ち上がりが悪いのでこの試合は意識的に猛プレスをかけ先制点を取りに行ったのだが、ザンビアは想像以上に選手たちが速くうまくスマートで、選手間に適度な距離を取りきゅっと動いてコースを作り、日本のプレスを交わしあわてず正確に素早いパスを回し軽快に攻めてくる。日本の意図はまったくはまらず交わされてしまい、逆に日本の攻撃時は本田や香川のワンタッチリターンを狙われつなげず劣勢となる。アフリカで予選落ちしていながらこんなにいいチームだったのか。世界は広い、こりゃイカンという懐かしいW杯フィーリングが押し寄せる。

 先制点は内田の背中越しに頭で押し込まれた。あんなゴールを決められるのだからまさにW杯レベル。GK は先発が伝えられただけでツイッターが盛り上がった期待の第2GK 西川なのだが、あれを止めたら本番でスタメンもあったんだがなあ。ああいう感じの触れなかったのかなと疑問を感じる失点が川島も多いので西川に期待したのだが、西川でも変わりはなかった。しかしキックは評判通り流麗なので、西川のほうが日本好みではある。

 振り回されてるのはコンディションもありそうで、日本は最初から動きが悪い。コンフェデのメキシコ戦のような疲れを感じさせる動きで、止まった状態で各駅停車のパスをつなぐからすぐに詰められてしまう。日本がこんなに下手でモビリティがないわけがないので疲れだろう。香川なんか使われすぎコンディションが下降気味なのではないかと心配である。内田も落ちている。フィジカルコーチがちゃんと管理してるんだろうが、疲れている選手は休ませてサブに経験を与えてほしかった。特に山口が怪我をしたら今の日本は崩壊するからな。しかしどれほどパフォーマンスが落ちても定番スタメンを使い続けたザックの4年間であった。

 本田は相変わらずトラップが悪くボールが脚につかず中盤のつなぎしかできないが(カウンターでは岡崎が代わってドリブルでボールを運んでいる)、本番ではミランで試合に出てた頃のレベルには戻りそう。攻めに貢献しているわけではないが、中盤下がり目の労働者として働いている。オシムが言ってた水を運ぶ選手である。下がり目なら遠藤でいいじゃんという気もするが、守備のプレス力(体の圧力)と90分の走力が遠藤より高い本田が中盤で走り回るのは合理性はある。



 そして後半入った大久保がやはりゲームを変えた。大久保がトップ下から大迫にすごいスピードの縦パスを当て、大迫もコントロールに成功したがシュートまでは至らず。しかし「川崎だ!」「あれがフロンターレだ!」とツイッターが騒然とするほどの衝撃的パススピード。これだよ。

 大久保は《スピード×技術×身体の強さ×意志の強さ》あたりで測られる「モノが違う感」日本一で、かつての中田並みであり、香川本田を上回る。このモノが違う感が味方にも相手にも作用し、彼が動くと味方も敵も動かざるを得ないのだ。このゲームを動かすマジックを備えた本物のアタッカーをゴール前で使えなかったのが4年前の日本の後悔だった。今回はバイタルエリアで使えることが本当にうれしい。

 ワールドクラスになれるはずだった本田がアジアカップ後ロシアで怪我をし力が落ちたことは残念だが、俺はもともと本田を中心とした横パス&1-2攻撃が日本のベストだとは思っていないので、今現在の代表での本田の不調はさほど残念に思っていない。本田香川遠藤が短くつなぐと人数が上がれるから日本は攻撃力が高いのであって、本田がスペシャルだからなわけではない。もちろん本田のキープ力と決定力は高いが、コスタリカ戦で遠藤がスコッと軽く決めたように、あの位置まで上がっていれば代表クラスのアタッカーならみな十分な得点力はあるだろう。本田の不調は本田自身の決定的プレイは減少させても、その分この3戦のように他の選手が生きるので新聞が言うような攻撃力低下にはならないだろう。そこが組織で戦う日本代表の美点で、とりあえず走れる限り本田は役に立つ。

 本田の不調よりもはるかに惜しいのは、もう泣けてくるほど惜しいのは、練り上げられることもなく日本代表から失われた、憲剛が操る攻撃スピードだ。今こうして大久保がやっているように、憲剛が思考スピードと技巧でチームを縦横に動かし、ひらめきの限りを尽くし世界と戦うのを日本のサッカーファンは見たかったのだ。日本最高のゲームメーカーを戦力化できず力の落ちた本田のみで行くと決めたザックの無策さは、俊輔がボロボロだったのに遠藤を1試合も使わなかった 2006 年W杯のジーコのそれに等しい。そんなのどう考えてもおかしいだろう。

 試合は逆転し追いつかれ、そして最後の1分で入った青山がファーストタッチで大久保に送り、大久保が代表史上に残るほどの美しい空中トラップ&ボレーシュートを叩き込んだ。どうだこれがJ のタレントだよ。青山は「憲剛くんのプレイを参考にして」と広島の佐藤寿人に言われパスを磨いた選手なのだそうだ。―――憲剛(泣)!

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