2015/02/09

日記「クエスト式 RPG の限界」

「アマラーのポッドキャスト」「ここがアマラーのピークか」「人助けがしたい俺」「3D 風景の単調さ」

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■15/01/16(金) □ アマラーのポッドキャスト
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 移動中に聞くポッドキャストを探していて思いつき、現在絶賛プレイ中の「キングダムズオブアマラー:レコニング」を検索したら、感じのいいコアなゲーマー3人組が RPG について語り合う英語番組 Gamejunkが見つかった。ゲーム業界で働く人たちらしく、ゲームとして何が新しく何が美点なのかをフェアに語っており好もしい(彼らはカナダ人だと後日判明。「子供の頃カナディアンタイヤマネーでゲームを買った」と会話に出てきてわかった(笑)。道理での物腰やわらかさ)。「意外や驚くほどハマった」という語り出し。

 長所として語られたのは、
  • 近接攻撃と遠隔攻撃を使い分けることで広がるバトルの戦略性
  • システムの快適さ、ユーザーフレンドリーさ
  • 探索とバトルが過不足なくミックスされたバランスのよさ
  • 単なるお使いではなく物語性のあるサブクエスト

 というあたり。興味深かったのはメインストーリーに関しての言及で、

「ストーリーは弱いけど、ゲームが面白ければ実際それはどうでもいいね僕は」
「ね。名のある作家を起用してるから期待はしたけど、台詞が多すぎて聞いてられないな。台詞は全部スキップしてクリアしたけど、それでも面白かったよ」
「だね」
「俺は死んで生まれ変わり悪と戦い勝った――それしか知らないけどゲームプレイ上失ったものはないと思う」
「だね」


 というあたりになるほどなあと思う。台詞は声優がうまくて聞いてて気持ちがいい。しかし旅を始めて2週間経った今でも、「俺は死んで生まれ変わり悪と戦い」までしかストーリーはわからない。今後もそこに「勝った」しか加わらないらしい(笑)。しかし話は薄いがゲームは面白くて俺は走り回っている。

「こういうクエストをベースにしたゲームってさ、特に惹かれる物語があるわけじゃなくても、目前にタスクがあればそれをやっつけるだけで十分なモチベーションなんだよね」と語られていたが、これがこの現代米 RPG をやってて俺が感じている面白さの核心だなと思った。なにも新しくはないのだが十分に楽しい。プレイ感はスポーツゲームに近い。毎シーズン新しい選手を数人取るだけで5シーズン百試合もやってしまうサッカーゲームのような没頭感が、戦って経験値と宝をゲットしキャラを強くしていくだけのクエスト式 RPG にはある。

 日本の RPG のようにさまざまな土地の風物やダンジョンやミニゲームを楽しみ変化に飛んだ体験をしたいのはやまやまなのだが、バトルとキャラ強化だけを作り込むだけでもこれほど RPG というのは面白いんだな。ファミコンのウィザードリィ時代からコンピュータ RPG 遊びの本質は変わってないのだ。

 最後に「このダサすぎる名前を聞いたら普通誰もやらないと思うけど、レビューで褒められてるのを信じてやってよかったよ。スカイリムが好きならこれはハマるよね。スカイリムよりこっちのほうが僕は好きだな」「俺も」とスカイリムと比較されていた(※)。アマラーとオブリビオンの合わせ技で、スカイリムがどういうゲームなのかはほぼ想像つく気がする。俺はスカイリムをやる必要はないな。わずか20ドルで現代最高峰と言われる RPG が体験できるのにやらなくていいのかと義務感に近いものを感じてるのだが、スカイリムの映像に惹かれない上に前作オブリビオンがひどかったので、やらなくていいのであればほっとする。ゲームを遊べる時間は限られている。

(※)別の回で彼らは、「バットマン・アーカムシティ、ゼルダ・スカイウォードソード、アンチャーテッドといった普通の人がやる優れたゲームを差し置いて、ゲーマーしかやらないスカイリムがゲームオブザイヤーになったのはいかがなものか」と評していた。本回でアマラーの快適さを絶賛していたが、スカイリムはその点において「オブリビオンよりはマシだがフラストレーティングなゲーム」らしい。



「片付いたわね、マイダーリン」
あちこち回ってソケットのある刀を見つけ宝石を入れて強化し、とある洞窟をセクシーなライバルキャラ、エリンシアーと探索中。しかしよくできてるな。ダンジョンを NPC が同伴するのはこれまでもあったが、エリンシアーは雑魚敵を全部倒すと「片付いたわね」といい声で一言言ってくれる。これがうれしい(笑)。

 そして歩きながらなんにもないところで「へんね。ドワーフがいる洞窟がこんなに片付いてるなんて…」と彼女の独り言が聞こえてくる。こういうところがどきっとする。非常にナチュラルで、RPG 体験として新しい。このゲームはもともとオンラインマルチプレイヤー MMO のプラットフォームとなるよう設計されたそうで、音声付きの MMO ならばなりきった女性プレイヤーの声でこういう体験ができるんだろうな。それはゾクゾクすることだろう。

 最後の部屋でボス敵と壮絶なバトル。相手はめちゃ硬いが遅いので、コツコツ削っていけばいつかは勝てる。こういうコントロールできるバトルは非常に楽しいと思っていたら、10分にも及ぶ戦闘中一瞬ポーションを飲むのが遅れて死んだ。あー。ミスった。しかし楽しい  :-)。

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■15/01/20(火) □ ここがアマラーのピークか
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 【アマラー】今日は NPC 5 名ほどがいるグループ探索クエスト The Road Patrol に参加したのだが、これが最高に楽しかった。別にチームにコミュニケーション AI が組み込まれているわけじゃないのだが、ただ行くぞーおーとみんなにくっついて行って敵が出たら倒し、手がかりをチェックしていくだけでもワクワクするほど楽しい。CoD 等の軍隊所属ゲームにはこの楽しさがあるんだろう。オンライン協力ゲームなら究極だろうな。人を撃つのは嫌だが。

 このクエスト The Road Patrol はサブクエストの上位にあたる中クエスト的長いイベントで、やってることは端的に言えば NPC 数人とフィールドをうろうろしダンジョンに行っただけなのだが、台詞と演出で「強いモンスターが町の近くまで出てきている。ダンジョンを襲いその元を断つ。町のために命をかけろ!」という男たちの気概を感じることができた。こういうところの脚本がうまい。メンバーが犠牲になると立ち止まって供養したい気持ちになるくらいチーム感を感じる。日本の RPG はこういうときにお墓を作れるよう設計すべきである。以後通るたびにお墓に花を供えることができるとかね。そういうい細かいところができてこそ JRPG だろう。



 しかし先週のエリンシアーとのデート探索と今日の団体クエストである種のクライマックス感を感じるとともに、このへんがピークかなという気もしてきてしまった。2週間以上やりこれまでの来し方を考え行く先を思い、これよりも楽しいことが待っているような予感がしてこない。こういうときおりある変わったクエストが楽しいだけで、その他はリピート感が強くなってきた。

 イーサという森の精的な種族に認めてもらい自分の「運命」の謎をたどるみたいなのがメインストーリーなのだが、この話が意味不明な上に一向に進まんのである。いまだに旅の目的もわからず(自分の運命を知りたいなんてのは目的にならん)、誰に会えこれに会えとたらい回しにされている。ストーリーが意味不明とは英語ポッドキャスト Gamejunk の人々も言っており、日本語版 FF7 のセフィロスとクラウドの自分語りが「こいつら何言ってんのかわからん…」状態だったのと同じようにわからんのだと思う。


「これが永久に続くのかね」と、これをキャプチャした人も
同様の単調さを感じてるらしい(笑)
そしてなにより、2週間いてこの世界の景色に飽きてきた。どこへ行ってもファンタジックできれいだが、高低差がなく見通しが効かない森の単調さは変わり映えしない。もっと高く登り遠くの息を呑むような光景が見たいというオブリビオン・スカイリム欲は、旅が進んでも一向に満たされない。

 またダンジョンも建物も城も全部内装パーツが使い回しで地形にも特徴がないので、前に入ったことがある場所かどうかすらわからない。すでに開けた宝箱があって初めてああ前に来たことがあるわと気づくジェネリック(一般的)さなのだ。迷路や仕掛けがまったくないこれら環境構造物はそれが売りのゲームではないとはいえ芸がなさすぎ、プログラムにより大量自動生成されたオブジェクトしかこの世界にはないのだとプレイヤーは気づいてしまう。

 2週間で大陸半分(ゲームの 1/4 くらい?)を踏査したところで、バトルにはまったく飽きてないのだがこれらストーリーと環境のリピート感が厳しく感じてきてしまった。まあ長い RPG に飽きはつき物で、DQ も FF もゼルダも中断しては再開し終わらせてるのだが、予想以上にそれが早くきた感がある。

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■15/01/21(水) □ 人助けがしたい俺
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【アマラー】晩飯後ついに大陸東側のこれまでまったく未踏のエリアに踏み込む。ここで初めて樹木が途切れ、BC 北部のようなドライで開けた土地になった。おお。やっと景色が変わった。空があり遠くが見える。殺風景だが。

 この地方の町の入口近くで、モンスターに襲われ村が壊滅したという難民たちのキャンプに出会う。彼らは新たな安住の地を求めている。そして難民が町外れにいるのは不穏だと町の人たちが遠回しに嫌がっていることがわかる。このへんはリアリスティックだなあ。自然とこの難民たちを助けて、どこかモンスターの少ないエリアに町を作ってやりたいと思わせる。

 しかし残念なことにこの難民キャンプは単独サブクエストで、スパイを退治してくれというクエストを1つやってあげただけで後には何も続かなかった。彼らの悲しい境遇になんの変化も訪れない。助けてくれというなら喜んで働くのだが、誰も何も言ってこない。

 ああこれを準メインストーリーに格上げしてほしかった。あのめんどくさいメインストーリーを全部削除し、ドラクエのようにこの難民たちのために新たな村を作ってやるというような具体的な人生の目標ができたら、よほど夢が広がり楽しかったことだろう。俺がこれまで訪れた無人の地域を選び、難民たち数十人を率いて危険地域を抜け旅するとか考えるだけで面白い。道中の危険や、土地選びや町づくりへの関わりなど、それだけでゲームになるではないか。

 やっぱり人助けがしたいんだよな。サブクエストは基本全部人助けだから、かわいい女性に「サンキューソーマッチ!」と言われいい気分になれる。メインクエストにはそういう達成感がなく、抽象的なたらい回しだから燃えないのだ。



メインクエストのエイリンは例によってなんとかに会いに行けと俺をお使いに出すのみ。ったく郵便屋じゃないんだぜ俺はと思いつつも言われた方へ歩いていると、これまでとは違う乾燥地帯の景色に心がやや弾む。―――あ! 海だ。崖の上に出て海が見えた。これは感動した。初めて高いところにいる快感を感じた。これだ。地図を見る。エラテル平原(Plains of Erathell)の北の果てだ。やっ・た。景色に感動するまでに3週間かかったよ。これくらいの景色をいつも見せてくれ旅をしている感動を味あわせてくれるなら、お使いも我慢するんだけど俺。

 よし。まあもう少し頑張ろう。最後まではやらないんじゃないかなという気がしてきたが、しかしとりあえず新大陸を見るまでは頑張ろう。すごい景色をまた見れるだろう。これからは余分なクエストは受けず、ストーリーだけどんどん進めていこう。

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■15/01/24(土) □ クエスト式 RPG の限界
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 昨日夜と今朝アマラーを進め、強制クエスト(1つ終わると次が始まり終わりがない準メインストーリー)の仕事を進めてみたが、これが入り組んだ話になってきた。どうやら当事者2名のどちらかが嘘をついてるらしい。それを知るために別なところで別な者の話を聞いてこいとお使いの連鎖が始まり、うんざりしてきた。

 このシナリオは有名なファンタジー作家が書いてるんだそうだが、まとめて本で読めば「どちらかが嘘をついてるな」と面白いと感じると思う。声優演技も相変わらずうまい。しかし遠い道を行きつまらないダンジョンで雑魚を蹴散らし話を聞いてまた戻って一段落とやるのは、本を読むより大幅に労力がかかる。コントローラを操作して本のページを1枚めくっているようなバカバカしさを感じてしまう。

 クエストのテキストではなく、その行動に固有の楽しみを持たせるべきなのだ。依頼主の長い話を聞き、ダンジョンで用を足して依頼主にレポートバックしてまた話を聞いて終わるのではなく、入っていくダンジョンそのものに特有の構造と冒険性を持たせ、そこの探索自体を面白くすべきなのだ。それがゼルダを筆頭とする JRPG だ。そういう自動生成できないものを作るのは大変だから、イマジネーションと鉛筆と声優の好演だけで量産できるクエスト依頼主の「話」に意味を重く持たせてあるわけである。それがこうした米型クエスト式ゲームなのだ。このゲームを始めた時に、日本の RPG のほうがクリエイティブと感じるが何が違うんだろうと考えていたが、やっとわかった。

 これはMと萌が見てる SF ドラマ(スタートレック、ドクターフー等)に似ている。英語のああいう TV SF はほとんど会話劇なので、ちゃんと毎週見て背景を理解し大量の言葉を理解してはじめて面白さや感動が生まれる。映像としては SF 的なセットの中で熱い会話が延々と続くだけなので、俺のような一見さんには全然面白くない。意味すらわからない。こうして会話ダイアログで作られるクエスト式米 RPG も、冒険少なめで言葉が多めというまったく同じ構造を持っている。多くの人物の長い語りを脳内でつないでストーリーを理解するのは非常に困難である。

 このゲームのシステム上の弱さは(特に前半の)景色の単調さだが、ゲームプレイ上の弱さは物語がこういう会話の中にしかないところだろう。そこにクエスト式 RPG の限界を感じる。――よし。アマラーは一旦中止、ここまでにしよう。他のゲームを遊んで、そしてまたやりたくなったら戻ろう。

【キングダムズオブアマラー前半の感想】★★★★★ ★★
◎バトルが最高、古今無双の楽しさ
◎キャラ育てと操作性全般がオブリビオンよりはるかに明解
○魅力的な人間キャラたちとその喋りが気持ちいい
×特に前半の景色やダンジョンが単調
×世界がジェネリックで探索すべきものが少ない
×冒険の核心は結局のところ単なる文章

 というわけで長所部分はほんとうに素晴らしいので、キャラを鍛えることとバトルの楽しさでポッドキャスト Gamejunk ガイズのようにストーリーなしで一気に最後まで進める人も当然いるだろうし、俺のように一時脱落する人もいるだろう。スカイリムもそれは同じようで、何百時間もやる人もいれば脱落する人も多いらしい。Gamejunk ガイズは全員スカイリムから脱落している。未踏の新大陸フォルテンマーはぜひ見たいしバトルはいまだに楽しいから俺はまた戻ると思うが、3週間楽しんで今はここまで(※)。

 次は「バットマン アーカムシティ」だな。今感じている高低差不足のフラストレーションを間違いなく満たしてくれる。
(※)◇このブログ記事を書くために久々に起動してプレイしたクエストで、高低差激しく景色も地形ダイナミズムも素晴らしく、敵は強いわその分いい武器屋があるわで最高にエキサイティングな地方を発見し(Galafor, Rathir)、モチベーションがバババと充填されすでにバトル旅を再開しております。やっぱり景色がいいと RPG の旅は続く :-)。
◇この地方を見る前に単調で飽きたと批判して悪かったけど、3週間やって見つからなかったわけだからね。もっと前にクエストでここに誘導し、プレイヤーの目を喜ばせ気分と装備をリフレッシュさせてくれたらよかったのだ。ツンデレのエイリンシアに言われるままにメインクエストを追っていたんだけど、そっちのグランドキャニオン地方は殺風景だったしいい武器も売ってなかった。オープンワールドであるがゆえに、たまたまつまらない地方ばかり先に見てしまったわけである。こういうゲームデザイン上の問題も起きるわけだな、クエスト式オープンワールド RPG。
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■15/01/25(日) □ 3D 風景の単調さ
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 アマラーに続き、アクションアドベンチャー「バットマン・アーカムシティ」を開始。これは笑ってしまうほど素晴らしい。ゼルダ級に面白い。アマラーで得られなかった高いところへ登るデザイヤーと仕掛けを解く楽しみが、思う存分満たされております。



アマラーの風景の単調さはあのゲームの欠点というか、Xbox 360 の 3D 風景描画という点で最高峰と思われるオブリビオン、スカイリム、Forza 4 も似たようなものなので、3D レンダリング風景の特徴かなとも思う。現実的な自然の美しさは十分に再現できているが、風景デザイン自体におおというものを感じない。「グランドキャニオンの奇岩」を CG で見てるくらいなレベルの景色しか見れないという印象を受ける。


(いま見ても素晴らしいと思う、Playstation 時代 FF9 の町)

 これまでやったゲームの風景で最も眼福だったのは FF9 なのだが、あれは手描きアニメのような静止画書き割りだからこそ、人間が美しくデザインできたのかなという気もする。人の手が隅々まで入った小さな箱庭の美しさであって、マンガとアニメのデフォルメ技術の蓄積が生きているのかもしれない。俺の目はデフォルメされた人為的創造性を求めていて、現代ゲームの 3D レンダリングの風景は数学的に精密だからこそ、俺の目に迫ってくるものがないのかもしれない。

 バットマンのアーカムシティの廃虚風景は素晴らしい。3D レンダリングでも人工物はすごいものが作れるんだなと思う。クリーンなものよりもノイズのほうが創造的なものを描きやすいのかもしれない。

 日本人が作ると 3D RPG 風景はどうなるのか見てみたいが、FF13 は面白くなさそうなんだよなあ。ゼノブレイドがアニメ的でよかったな。まあいつか日本の RPG をまたプレイする機会もくるだろう。

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