2015/08/31

2015年日本旅行(1)沖縄エイサーまつり

「熱狂ゲスの極み乙女」「ここが大阪やで」「沖縄カーナビ苦戦」「エイサー祭り」「モールでのんびりデイ」

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■15/07/13(月) □ 熱狂ゲスの極み乙女
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 日本行きの荷造りをしながら、萌はゲスの極み乙女をガンガンかけている。歌詞はほとんど意味がわからないだろうが(俺だってよくわからない)、音に現れる若さゆえの刹那感に共鳴してるんだろう。音量は小さいのに他のどんなバンドよりもインテンスなのだ。たとえばギターはチャーに似ているし、伝わらないもどかしい言葉を畳み掛けていく感じは友部正人みたいでもある(語彙はすごく現代ユース的で俺にはガツンとこないけども)。

 こないだ俺が初めて聞かせてわずか3日でゲスマニアとなった萌は、これを聞けとおすすめ3連発を聞かせてくれた。「パラレルスペック」「キラーボール」「私以外私じゃないの」。す、す、スゲえ! カッコいい!



ギターもドラムもピアノもこの若さでなんでこんなにすごいんだ(ベースはおじさんぽいのでまあわかるが)。そして汲めども尽きぬこの音楽的ひらめき。もう音楽のワンダーキッズとしか言いようがない。歌詞を分析する気もバンド経歴を調べる気もしないよ、かまわないからその音でもうどこまでも連れてってくれウヒョー! という感じ。

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 うあー台風11号がちょうど私らの飛行機と同日に日本に接近する模様。大阪までは行けたとして、翌日沖縄に行けるかどうか。

 まあ心配してもどうしようもない。最悪の予測でも沖縄に上陸するわけではないし、東日本に抜けるのではという予想もある。空港で夜を明かすとかそういう最悪の事態にはならないだろう。あれほどの労力をかけて分単位まで詰めても、風が吹けばそれまでなんだから飛行機の旅なんてするもんじゃないとほんと思う。

 しかしちょうどいい日に恩納村のお祭りもあるのでエイサーはたっぷり見れそうだと判明し、期日通りに行けさえすれば沖縄本島での観光はこれまでの旅行でもなかったくらい充実しそうである。大阪から那覇まで無事飛んでくれさえすれば。

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■15/07/15(水) □ ここが大阪やで
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 10:47 空港チェックインと朝飯を無事済ませ、あとは待つのみ。Air Canada 職員によれば台風は南にそれており本フライトには影響ないとのこと。明日の乗り換え便が問題だよなー。まあ一晩待ち台風がどうするつもりか見るしかない。

この旅は日本行きとしては初めてのエアカナダで、しかも通常より大幅に安い便。格安というほど食事もサービスも悪くはなく、唯一の違いはエンターテインメントモニターがないことで、乗客各自が手持ちのデバイスに WiFi で受信するというシステムになっている。座席にコンセントもある。

これは機内液晶より高い解像度の機材で見れるという点でメリットはあるが、映画のラインナップがやはり格安で全然ダメで、いい映画がまったくなくMたちに呆れられてしまった。まあそういうところで経費を削ってるのかもね。

 俺は1本「深夜食堂」だけ見たが、日本はこういう素材のうまみのとろろかけご飯映画ばかり作っていてはいかんと思う。我らが小林薫を擁してもこれでは伝わらぬ。外国人や若者には見てもらえぬ。「天皇の料理番」級の骨太ドラマを映画で作ってほしい。「そうか。陛下のお料理番というのは、言われるままに飯を炊くだけか。おれにもできそうだな」と篤三を挑発した小林薫の無表情はすごかった。あの日本を見せてほしい。

 Mと萌は Netflix でコリアン映画をけっこう見てるのだが、日本映画はまったく見ない。それは日本がこういう純文学とろろかけ映画ばかり送ってくるからだ。外国人に見せたいなら、素材の旨味がわからなくても面白い映画を作らなければ。

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 無事関西空港着。疲れているが俺と萌は興奮して眠くないのでコンビニで軽食を買い、びゅーびゅー生暖かい風が吹く関空とホテルの周りを萌とぐるぐると歩く(奥様は先に寝た)。俺たちは外国人目線なので何を見てもおーすごいジャパン! クールジャパンやで! となってしまって笑いが止まらない。空港でたくさん見かけたアジアからのお客さんもそうであってくれたらいいな。

 風は強いが暴風というほどではない。「ええか、ここが大阪やで。よーく見とき!」と公衆内で俺が浮かれていると、萌が「お父さんシャラップ・シャラップ・シャットアップ!」とツッコミを入れる。ええでええでその感じや。夕方7時 (カナダ時間午前3時)、ベッドに入る。明日の朝の5時頃までできれば眠りたい。

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■15/07/17(金) □ 沖縄カーナビ苦戦
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 夕方7時に寝て断続的に目覚めつつ2時に起きる。計6時間強。もっと寝ていたいがカナダ時間ではもう朝の10時なので致し方なし。

 台風は今まさに中心が神戸あたりに達しているようだが、大阪は雨は強いものの風はさほどでもなさそう。――あ、すでに大阪府の暴風警報は朝4時過ぎに解除されてるとのこと。飛行機は定時発。よかった。

> これ、ヤバイな……
> 普通に学校あるやつやん……
>
> てか、毎度毎度なんやねん
> 結局大阪には台風来ないみたいなやつ!
> 大阪のことオチに使うのマジやめろよ

 と、大阪っていつもこうなんだそうだ。学生が怒ってる。はは :-)。

 沖縄は曇り、降っていないし風も吹いていないとのこと。よし。うまくいっている。関空はバスターミナルみたいなオープンな店や食事処と空港施設が混在した面白い空港だった。時間と空腹があればあれもこれも食ってみたいと思う。おっちゃんたちが「(台風が鼻の先なのに飛べるんだから)奇跡やな!」と声を掛け合っていた。

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飛行機機材の不具合で 1 時間遅れて出発、空の上から海底のサンゴが見える美しい島々に興奮しつつ那覇に到着。さすがに暑い。

 まずレンタカーを借りるのだが、キーがなくてエンジンをかける方法がわからずレンタカー屋に笑われた。人生初のキーレスエントリーである。車から降りてロックし、鍵がかかったかチェックしようとドアに手を触れるとまた開いてしまい一向に車から離れられないというジレンマに陥る。

 とにかく暑いしレンタカー屋は混んでいたのでそのへんの操作習得は後回しにしてとりあえず道に出たのだが、カーナビの設定方法がわからないので右も左もわからない。萌が操作するがわからない。ナビと一体となっているらしいカーラジオでは若干イラつく Jpop 系番組が流れてるのだが、この局を変える方法さえわからない。日本電気製品はなんか操作体系の迷路にハマっているのではないか。これがいわゆるガラパゴス化かと実感する。

 スーパーの駐車場でいったん止まり近場のモスバーガーをカーナビにセットしたのが、走り出してみると表示と実際の位置に30mほどの誤差があり、交差点を曲がり損ねてしまった。するとえらい遠回りにマップが再計算される。それが非効率的なのは自明だが土地カンゼロなのでナビに従うしかなく、ぐるぐるえらい遠回りしてモスバーガーへ。ふー。もうこの時点で馬鹿カーナビに対するストレスで俺はすでに消耗している。



 ここでカーナビにホテルをセット。しかし海沿いを走りたいので高速は通らず行こうとカーナビのマップを見ながら自力で海を目指していくと、カーナビの誤差のせいで曲がるべき道をまた何本もミスし、一向に距離が稼げない。あーイライラするなこのジャパニーズカーナビ。Google ナビはこんなに誤差ないぞ。



 那覇市のはずれで沖縄のメインルートと思われる R58 にようやく入るが、意外や海はよく見えない道だった。日本じゃないみたいなところ(ハワイっぽさと箱物建物がやたらと大きい奇妙なスケール感)と日本の地方都市そのものなところが入り混じり、そこに沖縄ならではの小さな店や民家が点在していて面白い。嘉手納基地は福生立川あたりと同じ風景。基地内の住宅は調布関東村と同じ規格で作られているので俺にはなつかしい。軍関係だけではなく、プライベートな服装のアメリカ人もすごく多い。



 1時間ちょいで着くだろうという見込みが2時間以上かかりへトへトで恩納の外れのホテル着。恩納でビーチが見えるとようやくやはりおおと盛り上がった。
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ホテル前のビーチで萌を少し泳がせ、ホテルのバフェットレストランへ。食べ物は和食と沖縄料理だった。沖縄料理は和食と中華のまさに中間という感じ。うちはみな中華が苦手なので、一口味見してなるほどねという感じ。黒いイモのあれと海ぶどうはたしかにうまい。

 そして今日も M は早く寝て、俺は全日本芸人歌合戦的なものを萌と見る。なんでニッチェが負けるんだおかしいだろ! 「日本ってこういうバカなショーをいつもやっててイイよねー」と喜ぶムスメ in 沖縄。

 萌は「うまい普通の声の人より、特別な声を持った下手な人のほうが聞いてて気持ちいいよね」と超鋭い歌合戦評を述べる。その通り。日本って歌唱力の尺度がおかしいよな。来日のたびに楽しむ日本のコマーシャルにも大喜び。なんかすごい腹筋マシーンの CM を見て、二人で笑い転げた。「I LOVE ジャパニーズコマーシャルズ!」。

CM「積水ハウスです」
萌「セクスィーハウス?」
俺「違う(笑)」


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■15/07/18(土) □ エイサー祭り
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 朝、恩納村はずれの真栄田岬裏という絵に描いたように美しいビーチでシュノーケルをし、サンゴに群がるネオンテトラを見た。すごい。しかしこんな観光地なのに国道沿いに手頃なレストランが見つからない。高級ホテルのレストランかジャンクかの二択しかない。

 結局ジャンクを選択したのだが、毎日コンビニ食とジャンクなのでMがアンハッピーとなる。スーパーでパンと野菜を買いたいのだが見つからないのだ。1時間も恩納近辺を走り回るが見つからず、ついにあきらめて無理やり車を止め地元の人に聞くと、スーパーは金武か名護にしかありませんと言われた。マジですか。

 仕方なく粛々と名護市のスーパーまでパンを買うために往復1時間を走る。ふう。

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 ホテルで休み、夕方恩納の村祭りヘ。ステージで音曲が披露され屋台の食べ物屋が並ぶ。いいではないか。



 しかし沖縄の祭りをなめていた。暑い。屋台を眺めて歩くだけでクラクラする。ステージ前のテントの日陰にいても熱風で体力が削られていく。沖縄の人々はこんな日差しの中平気で立ち食いしてるんだからすごい。お好み焼きを買ったのだが俺は気分が悪くなり食えなくなり、これはいかんとステージ前を諦め建物の日陰に避難してエイサーが始まるまでポカリを飲んで休んでいた。

 音楽舞踊音曲は沖縄フォーク青年デュオがよかった。それ以外の演し物はどのグループにも沖縄風味はもちろんあるけれど、まあどこの田舎町もこんなもんかなという感じ。この沖縄音楽を見たくて早めに祭りに来たのだが、エイサーだけにしとけばよかったと思うほど暑くてしんどい。



 しかし待った甲斐あってエイサーは素晴らしかった。村々ごとに個性があるし、踊る沖縄男子は惚れ惚れするほどかっこよく、後ろで可憐な踊りを添える女子はみんな AKB よりかわいい。すごい美男美女の島であります。いやーいいものを見せていただきました。やっぱりグループによる伝統は、音楽をやった人個々人の創造性を上回っていた。

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■15/07/19(日) □ モールでのんびりデイ
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今日は雨。連日のスケジュールの疲れも出てきたので(――まだ観光は一日しかしてないが、恩納のホテルに着くのにバンクーバー→大阪→那覇→恩納と都合3日かかってるので、出発して今日でもう5日めという非効率さ――)、沖縄で一番大きなモールというところに入ってのんびりと過ごした。沖縄ならではではないものの面白い店が多く楽しい。

奥様が「これいいわね」とある婦人服屋に入ったので看板を見るとSM2とある。…20代の頃俺が働いてたサマンサモスモスじゃん!

 バンドマン時代に俺が婦人服飾会社で働いてたのは言ってあったが、これまで話だけの幻だったサマンサモスモスが実在していたことに妻子が超ウケる。「こんなフェミニンな会社で何してたのよ」。いや服を畳んで箱に詰めて担いでただけだけど。休憩中に本を読んでたから「先生」と尊敬されてたんだぜ。

サマンサモスモスで今は偉くなっておられるらしいF下さんにはお世話になったなあ。俺がいくら寝過ごしてもクビにせず、廃墟警備の仕事が見つかりやめたいと言ったときには嫌な顔もせず送迎会までしてくれた彼のお陰でバンドもやれ英語も覚えられて、いまカナダに住んでいるんです。尊敬してます。

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(これは45mm、見事なボケ)

モール内のカメラ屋で自分のカメラに自由につけて試し撮りしてくれというレンズ群があったので憧れのオリンパスの 25mm-F1.8、45mm-1.8 で撮ってみる。めっちゃシャープでめっちゃボケる。しかも F2.8 で 1/60s の明るさで 1/160s! 3 倍の速さである。ああ最高。25mm が中古で安かったらほしい!

 そして奥様の提案でモールのスーパーで食材を仕入れ、ダイソーでまな板やプラスチックの食器を買って帰り、ホテルでサンドイッチを作り食べる。ああ家で食べるっていいな。落ち着くな。「そうよね、外食はいくらおいしくても続くと嫌になるわよね」。カナダじゃ売ってないプリンも食いましたうまい。



 萌の沖縄買い物戦利品は、ジブリ下敷き3種となでしこジャパンユニフォーム! 試合観戦時に BC プレイススタジアムで探して見つからず買えなかった本物ユニ! 宿に戻り雨の海を眺めながら、娘は幸せを噛みしめるのであった。

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2015年日本旅行(2)沖縄:最強の座間味サンゴ礁

2015/08/28

【カメラ日記】Wouldn't It Be Nice (SIGMA 30mm)

雨で急激に寒くなってしまった。ビーチボーイズがほんとに夏の納めだったな。あの日晴れてくれてよかった。あれからずっと頭のなかで Wouldn't It Be Nice が鳴っている。それってナイスなことじゃない?



『ねえもしもっと年をとってさ、もう待つ必要もなくなって
一緒に住めたらナイスじゃない? こういう世の中で
そのほうがずっといいよ、お休みを言ったあとも一緒にいるんだ
めちゃよくないそれ?』




バンクーバー PNE フェアは年々演し物が薄くなるのだが、今年のメイン展示はビートルズの歴史というものだった。あまり期待せず入ったが、北米ツアーに同行したカメラマンの写真がたくさん飾られていてこれが素晴らしかった。なんてカッコいいんだ。

そしてジョンが躁状態のときに乗り回していたあのロールスロイスが運び込まれていた。わはは。彼の事務所にあったというジュークボックスには B-52's やニールヤングが入ってる。しかしビートルズの歴史展示の副題が「キャバーンクラブからヨーコまで」って、どこまでヨーコが戦犯扱いなんだ(笑)。



娘が写ってるのは「トゥモローネバーノウズ」の音とともにサイケな映像が流れる安直な展示。写真も安直にサイケ加工してみました。

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こないだ手に入れた念願のボケるレンズ SIGMA 30mm F2.8 の初出番だったのだが、難しかった。いつも 14mm の感覚で「家族と対象物」を一緒に入れようとすると、やはり近すぎるのである。3歩くらい下がらないと狙った構図で撮れず、屋内ではブレとフォーカスもやはりシビアでなかなかうまく撮れず、うーんという感じだった(俺の PEN は手ブレ防止が非常に弱く、30mm 1/30 秒あたりではブレやすい)。



しかし狙い通りに撮れたショットはうわと声が出るほど美しい。同じ SIGMA の 19mm F2.8 とくらべても立体感とシャープさでケタ違いだな。この感覚はやはりこれまでなかった。頑張って使い方を覚えていこう。

2015/08/27

永遠のビーチボーイズ(ライブ2015)

バンクーバーの夏の終わりのフェアPNEで、なんとビーチボーイズを見てきた。ビーチボーイズですよ。スゲエ!


(C) Serena #PNEConcerts

いやーよかった。なにせおじいちゃんだしオリジナルメンバーが何人いるのかも定かではないんで見るのが不安だったんだけど、ボーカルのマイク・ラブが歌いだすと声は同じ声だからさ、やっぱり感動しちゃうよね。「カリフォルニア・ガールズ」の本物が聞けちゃったよ。涙。

実のところバンドは40代くらいの腕利きミュージシャンで固められ、オリジナルメンバーはマイクラブとブルース・ジョンストンだけ。しかし昔90年代に TV で見た時はオリジナルメンバーがおぼつかない手つきで演奏をしててよくなかったんだけど、今日のバンドは当然しっかりしてて才気ある音で気持ちよかった。サポ若手の達者な演奏とコーラスに乗って、マイク・ラブが年をとってもとにかくかわいいあの声で「ゲット・アラウンド」「グッド・ヴァイブレーション」「サーフィンUSA.」と超名曲を歌ってくれちゃうんだからしびれましたよ。


Wouldn't it be niceキターと感涙中の筆者
心配はなにしろ年寄りなんで声出るのかということだったんだけど、年寄りに出ない高く澄んだパートは若いサポメンバーにバリっと歌わせながら、しかしビーチボーイズサウンズに不可欠な声として常にマイク・ラブの声が聞こえ続けていて予想以上によかった。高いパートはサポメンバーに歌わせ、超名曲「Wouldn't it be nice」もやってくれてほんと感動した。

コンサートの半分が全米年間第一位ヒット曲級の曲なんで、やっぱ盛り上がりがすごい。1曲リードを取ると休んで若手が歌うという構成になってたけど(笑)。構成もさすがに長年やってるんで北島三郎歌謡ショーみたいによくできていて、ステージに映す早世したカール・ウィルソンの映像に合わせ「God Only Knows」をやって泣かせてくれたり、ジョージ・ハリスンとの思い出を語ってからジョージに捧げる歌をやったりとツボを抑えている。

「サーフィンUSA」で盛り上がりきってライブが終わりアンコールはどうするのかと思ったら、俺が中学の時初めて彼らを聞いた「ファンファンファン」! くわー! たまらん!

娘はデビッド・リー・ロスがカバーしたので有名な「カリフォルニア・ガールズ」以外はまったく知らなかったんだけど、曲と演奏があまりにいいので乗りまくっていた。そして狂喜する俺を笑って写真とビデオを撮りまくっていたのです。

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家に帰ってから娘に「Wouldn't It Be Nice」「California Girls」「God Only Knows」あたりを聞かせると、こんなにすごい曲だったんだとメロディとコードの見事さに驚いていた。そうなんだよ、ビートルズと影響し合っていたくらいすごかったんだよ。

うちの奥さんはアンチアメリカンなのでビーチボーイズを脳天気サーファーポップと思い込んでたようなんだけど、「God Only Knows」なんかポールに「これまで聞いた最高の歌」といわれ、ボウイにカバーされてるんだからね。



「God Only Knows」

I may not always love you
 But long as there are stars above you
 You never need to doubt it
 I'll make you so sure about it
God only knows what I'd be without you

『君のことをいつでも愛してるとは限らない
でも空に星があるように
これはもう疑う必要もないこと
念を押して言っておくけれど
君なしでぼくがどうなってしまうのか、神様しか知らない』

ステージの明かりを落とし、誰がリードを取ってるのか定かではない状態(たぶんセンターにいたブルース・ジョンストンはちゃんと声が出てない)にしてこのビデオを映していた。亡くなったカール・ウィルソンとそこにはいなかったブライアン・ウィルソンへの、マイク・ラブからのトリビュートという感じのステージだった。

「God only knows what I'd be without you」の輪唱は、音楽の永遠の具現化だな。この名曲を歌うサポメンバーはビーチボーイズなのかと問うと疑問が首をもたげる。そこを音楽が超越していく夜だった。美しかった。◆

2015/08/24

【カメラ日記】新レンズ、SIGMA の30mm

この夏日本でやっておけばよかったこと: 妻子を置いて夜の新宿あたりのカメラ屋に遠征し、マイクロフォーサーズの中古レンズを購入する

 吉祥寺に出た日の夕方妻子だけ中央線に乗せホテルのある駅を示し、俺は逆方向の新宿カメラ店へ行けば行けたのだが、中央線は三鷹止まりとか特快とかイレギュラーな電車が多い。そういうのに乗ってしまうと妻子が高尾山に行っちゃうとかえらいことになる可能性があり、無茶はできなかったのさ。

 やっばりカメラ関連は日本国内が品数豊富で安い。カナダでレンズを安くゲットは絶望的だ。歌が口をついて出てきてしまう。

僕は今吉祥寺の駅に立ち、ヨドバシカメラへ行こうか悩んでいます
だけど疲れたわもう帰りましょうと、今日も日が暮れました
ああ中央線よ空飛んで、おいらの胸までレンズくれ
(友部正人「一眼レフ」)

◇    ◇    ◇




 と訪日時の悔恨を歌ってたのだが、なんと俺のほしい SIGMA 30mm F2.8 を日本で買ってきたが使わないから売るというバンクーバー青年を見つけてしまった。買う! これは良いレンズです、カリカリふわふわ。俺がこれまで買ったレンズでベストなのは間違いない。



 しかしこの見知らぬバンクーバー青年(日本人ではない)がわずか数カ月前に渋谷ビックカメラで、俺のほしかったレンズを買ってきてくれていたとは。俺は渋谷でそこに寄ろうと地図にマークまでつけてたんだよホラ。結局行けなかったけど、俺の代わりにサムワンエルスが行き買ってきてくれてたというこの――巡り会えたこの奇跡?(笑)

彼はなぜか俺のことが気に入ったらしく、写真サイトのアカウント名を尋ね写真を見に来てくれた。「コキットラム花火の写真が素晴らしいよ」。あーこれね。これは自慢の一品じゃね。ていうか自慢できる写真はこれしかないね :-) これは同じ SIGMA シリーズの 19mm F2.8 で撮ったもの。19mm は実にいいレンズなのだが、景色を撮ると記憶より遠目に(小さく)撮れてしまうので、俺は屋外ではほとんど使わないのだ。沖縄座間味で気合いを入れて 19mm をトライしたが思ったように撮れず、換算 50mm くらいの標準レンズがほしかった。そこでこの SIGMA 30mm が視野に入ってきたわけ。19mm よりさらにシャープである。そしてフォーカス外の部分は倍以上ボケてくれる。すばらしい。

 彼は「ストリートで人々の写真を撮りたいんだけど、勇気がなくてできないんだ」という。たしかに彼の写真を見ると静物ばかり。内気なシャイフォトグラファーなのね。まあ俺もそうだというか、たいがいの人はストリートで他人の写真なんか撮れないよね。そういうのは持って生まれたものがないとね。

ストリートで人々の写真を撮る才能は、歌を歌えること、絵をかけることと並んで俺が持って生まれたかった才能だな。まあそんなこと言ってたらキリがないか。ギターだってもっとうまくなりたかったし、サッカー選手だったら素敵だったろうし、コンピュータソフトだって作りたかったしね。◆

2015/08/19

【日本滞在終了】20年ぶりの東京ジャムセッション




おばあちゃんとキッズに見送られ実家信州を出発し、娘に東京を見せる旅へ。渋谷でこれぞ東京という人混みを眺め彼女はやはり盛り上がっていた。着物を着た若い男女が多くて素敵だ。

宿はかつて長く暮らした多摩方面に取ったのだが、見慣れた駅や町を観光客としてタラタラ歩いていると、暑さもあるのかなんか時系列が混乱してくる。自分がどこにいて何語を話せばいいのかといったことを一瞬考えてしまう。ここは日本語でいいんだよな、そうだよなって確認してるのです。




そして20年ぶりに訪れた東京で、昔のバンド仲間が集まってくれジャムセッションをやった。音が合う合う、すごい。「なんか20年ぶりって感じが全然しないんですけど」と笑う。会って音を出せばこんなに楽しいのに、俺のギターを好きでいてくれる彼らに、なんで俺はずっと会いに来なかったのだろう。



ホテル前での別れ際ドラマーに抱きついて、「こんなに長いこと会いに来なくて、ほんとゴメン」と謝った。「なんかカナダでさ、バンドもやってないしたいしたこともしてなくてと引け目みたいなのがあってね。だけど関係ないよね。気持ちは変わりない。次はもっとちゃんと会いに来るよ」。



ジャムセッションしてホテルに戻った翌朝、よかったよ20年ぶりなんて感じなかったくらいだと話すと奥様は当然喜んでくれたのだが、娘は「よかった…よかったねお父さん」と泣いてしまった。もっと日本にいたかった、あれもこれもできなかったと彼女は飛行機や車の中で何度もべそべそしていた。カナダ生活はとても素敵なのだが、日本に住めないという大きな難点がある(他国も同様)。ティーンの涙腺がよわよわになってしまう、日本滞在のラスト数日間だったのです。◆

2015/08/05

実写版「進撃の巨人」ヘドバンギャー!



【進撃の巨人】映画を見てきた。巨人たちの狼藉が始まるやいなやもう俺とムスメは恐怖に身をこわばらせお互いを肘で小づきながら、(ぎゃースゲエ!)と小さな声で叫び笑っていた。ロックですよ。ロックスターが眼前に降臨状態ですよ。ヘドバンギャー!

ネタバレなしで感想をいうと、期待以上だった。というか進撃の巨人が実写になったらどうなるのかよくわからなかったのでそんなに予測も期待もしてなかったのだが、そうかナマで見ればこうなるのかわかったよタマラン来日してくれてありがとうという感じ。Zep級をライブで見た感じ。

そんなロックスター降臨状態なので俺とムスメは興奮してイヒーと拍手し声を抑えきれなかったのだが、日本の映画館ではどうも声とか出したりするものではないらしく他の観客はシーンとしている。クライマックスなんて俺は快感に打ち震えつつ抑えて抑えて小さく腕を突き上げていました。

なんで客席ノッてないの? ホワイジャパニーズピープル! ソークワイエット! と俺と娘は思った。他の観客にはそんなに面白くなかったのかな。たしかに原作通りではなかった。しかしあの曲もこの曲もセットリストに入ってるストーリーだったじゃん。それだけで俺は満足だったよ。まったくロックコンサートだったよ。◆