2016/06/24

「重版出来」のキレとスポーツ感

【重版出来】最終回の放送を見終える。黒木華さんてなぜか陰のある役ばかり見かけていたが、このドラマでは一度もそういう顔を見せなかった。最終回まで毎回見たことのないような魅力的な表情を見せ、聞いたことのないようないい声を聞かせてくれていた。すばらしい。三蔵山先生のハンドマイクカッコ良かった! しびれた! キヨシローでした。

 この物語の絶え間なく終わりのない気持ちよさというのはたとえば最終回、「小泉くんは阪神ファンではなかったと思います」という報告に編集長が「どうしてそう言い切れる!」と問い、心が「聞いておきます!」となんともいえぬいい声で答えたところなどにも宿る。

 このやり取りが気持ちいいのは『小泉くんが阪神ファンじゃなくてもかまわんが、もし阪神ファンだったらどうすんだ! よりいっそう好ましいじゃないか!』という編集長のバカナイスさが瞬時に伝わるからで、それを噛み砕かず反射神経でびしっと受け止める心の声がまた気持ちいい。

スポーツ観戦が大好物だからというのもあるだろうが、俺のアンテナはこのドラマのヒロインのように、運動神経・反射神経の優れたものにビビビと反応する。電話を編集部の誰よりも早く取りたくて反復練習してた心の仕草は何度もリプレイしたし、最終回中田伯とのごめんなさいお辞儀合戦の柔軟さもよかった。心が柔道部出身でよかった、黒木華さんにそれを表現できる身体能力があって本当によかったとありがたみを感じずにおれない。

 演技の運動神経・反射神経は役者の身体的仕草だけではなく、セリフの間だとか声や表情の動きなどにも感じる。同時期に見ていた「トットてれび」の満島ひかりの間や声の強さには毎回惚れ惚れさせられた。それはスポーツでいう「キレ」で、満島ひかりはいつ見てもキレッキレである。黒木華さんにもそのキレがたっぷりあるのだと今回はじめて知って、喜ばしかったわけです

 「重版出来」にずっと流れていたこの体育会系なフロー、上司部下・先輩後輩間のコール&レスポンスは権力と抑圧ではなく、常にチームの選手から選手へのパスだったと思う。マンガに関わる誰もが幸せにというゴールに向かう、様々な角度の快感のパス。◆


(関連記事) 【重版出来】沼田チーフ&アシスタンツ・バンドの物語

0 件のコメント:

コメントを投稿