小さなもの言わぬものたちへの愛情

2000/07/08


■ 00/07/08(土) 11:11:37    □ Number の宝庫



 Mがフィードしている間は眠くて起きられなかったのだが、9時に目が覚め
てしまった。昨日見つけた Number のバックナンバー Web 記事を読む。
Number は面白いが分かってないライターが多いわりに値段が妙に高いから日
本でもあまり買わずにいたのだが、過去1年ほどのいろんな記事が Web に置
いてあるようでめちゃくちゃ助かる。

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 この頃扱いやすい萌の世話をしつつ(しかし太った、まったく・笑)、1日
Number を読み、ついに読み終わった。これが Web で読めるとは本当にありが
たい。つまらない記事も多かったが、久々に読んだGPの記事などはドキドキ
した。500 を走る原田を見たい。あのこわいほどに美しいラインどりはクラス
が変わっても健在なんだろうか。そしてあのサンタアニタにもう一度行ってユ
タカのレースを見たい。通訳をやってやりたい。さてまた格闘技を見たい、あ
の情けなかった小川が本当にそれほど強いのか......などと際限なく思う。観
戦スポーツ天国日本が恋しい。



■ 00/07/11(火) 13:12:12    □ 走れメロス



 領事館に行く。 ダウンタウンはいつでも混んでいるぜ、用がなかったら来
たくないよなと思いつつジリジリと進み領事館の前まで来、車を停めようと思っ
てサイフを忘れたことに気が付いた。痛恨のミス、すべてはやり直しかと思っ
たが、車の中をガサゴソ探ると2ドルを発見し、これでパーキングには 40 分
停められる。その間にコトが済めばよしと走って領事館に向かう。

 領事館は4年ほど前に来てさんざ悪い印象があったのだが、とにかく「出生
届なんですが手数料はかかりますか」と尋ねると無料だというのでほっとする。
が「戸籍抄本はお持ちですか」と聞かれた。そんなもの持ってるわけねえだろ
うここをどこだと思ってるんだ気は確かかと言いかけたが「残念ながら取り寄
せになります」と神妙に答えると、昔在留届を提出したときに出した古い戸籍
抄本でコトは済むと判明、ほっとする。そして手続きに出てきた領事 (?) は
4年前と同じ人で、まさにこの人に俺はなにかで叱られたんだよなと警戒しな
がら下手に出ると、この4年間になにがあったのか非常に親切なのであった。
特に問題はなく登録終了、これで萌は 20 歳まで日加両国籍となる。大和の純
血はあやうく守られた。

 それはよかったのだがこの後町で萌の薬買わなければならないので、「すみ
ませんがサイフを忘れてしまって、家に連絡しなければならないので電話を借
りられますか」と尋ねると、「帰りのバス代はあるんですか? 貸してあげま
すよ」と領事が申し出る。げげなんという親切、どうしたんですかあなたのか
たくなな官僚魂はなどとは言わずイエイエ大丈夫です、電話さえ貸していただ
ければと答えてMKに電話。これから行くから金を貸してくれ、娘のために
どうしても薬が必要なんだ。

 そして前と同じように髪を振り乱しMKのオフィスに飛び込んで、「必ず返
す! すまん」と奴を抱きしめ走り去る。走れメロス。昔住んでたキャンビー
を走り、ブロードウェイを走り、12th ave.を走る。走る走る。そして薬を手
に入れハイウェイを走る。

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 で帰ると今日は萌が一日中腹痛を持っていたらしく、午後いっぱいMに抱
かれて泣いていたらしい。目を覚ますとまた泣き、ミルクもまともに飲めない
のでMも久々にフラストレーションで泣いていた。夜俺が買ってきた薬でど
うやら腹痛はおさまったようだ。ほっ。

 泣いていないときに萌を横たえて脚と腹をさすってやると、この頃いつもそ
うであるように俺の顔をじーっと見ている。今日は俺の声に呼応してほう、ほ
うと声をたてていた。一瞬なにか喋りだすんじゃないかと感じ、生後 40 日に
して喋り出す天才児かと思い「おとうさん、おかあさん、もえ。おとうさん、
おかあさん、もえ」と語り掛けてしまった。当然答えはないのだが、すでに反
応があるというのはうれしい。

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 武藤文雄という古い日本サッカーファンのコラムがネットで読め、いつも非
常に楽しいのだが、この人が先日出したトルシェ論は今まで読んだあらゆるト
ルシエ論の中で抜群であった。ここまでトルシエが見せたさまざまな長所の分
析に続いて、俺が感じていることとまったく同じ不満を彼も感じ、それを明晰
に分析してくれている。

 そしてそれらすべてを含めて、トルシェは面白い、任せようと言っている。
その通りだと思う。欠点は指摘し直すよう直接要求すればいいのであって、自
信をもってそれができる人がおらずマスコミ経由で悪口だけが伝わるのが不毛
なのだ。ファンの中にはこれだけ言える人がいるのに、トルシエの周りには誰
もいないというのが問題なのである。



■ 00/07/12(水) 16:22:52    □ 湯たんぽ効果



 午後遅くにまた腹痛で泣く萌。Colic(乳児のせん痛)には湯たんぽが効く
ことありと聞いて、いくらなんでもこの暑いのにと思いつつ試してみると、た
しかに効いて眠ってくれた。重みと温かさが肩抱きの代わりとなるらしい。

 夜Pさんがいろいろ入ったビデオテープと本を貸してくれたのだが、このビ
デオに『映画「すずらん」の舞台となった明日萌?北海道沼田町』というドキュ
メンタリーが入っていた。うわわ。こないだ来たKBの町ではないか。そうい
えばなんか映画がどうのといっていた。なんたる偶然。この番組に絶対KBが
映っているな(なにしろ町の青年団幹部だから・笑)と見ていると、案の定出
演してインタビューで喋っていた。零下22度でのボランティア駐車場番とし
て、「早くスカウトが来てくれないかなと思ってるんですけど、なかなかプロ
デューサーも監督もここまで来なくて」とセリフを吐いて笑っておる。わはは。
やつのことをよく知るわしらには、まったくだ、なんで脚本家または地元俳優
としてスカウトせんのだろうというところなのだが、そうとは誰も知らぬよな
あ。やつの横で笑っている商店会の仲間でさえ、多分あいつが作った歌や詩集
や新聞やマンガのことなど知らぬのだろう。赤い薔薇を隠し持った、まったく
おかしなやつだよ。

 このNHKドラマについてはまったく知らなかったのだが、もしかしたらこ
のヒロインの影響で今日本中に新生児萌ちゃんがひしめいているのかもしれな
い。うああ。だがまあ好きでつけた名前なので、こんな偶然は致し方なし。



■ 00/07/13(木) 15:44:24    □ 三百六十五日のマーチ



 萌が大泣き。腹痛か。しかもおむつラッシュ(赤い肌ずれ)ができている。
困った。はあ。三百六十五日のマーチ。三歩進んで二歩下がる。

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 夜も萌が大泣き。もう俺も疲れて、あやしていてもパワーなし。ほうほうと
いう声すら出てこない。

 しかし泣きと泣きのつかの間ではあるのだが、こないだから顕著な話かけへ
の反応がすばらしくて楽しい。言葉を知らないだけで、ほとんど会話が成立し
てるなあと思うことすらある。「むかしむかしあるところにね」「フー!」
「おじいさんとおばあさんがおりました」「フー!」。

 明日で皆がいっていた「劇的に良化する6週間」なのだが、こうして会話を
成立させているのも「黄金の6週間目」のしるしなんだろうか。目が覚めてい
るときには、問題がない限り機嫌がよく完全に会話ができる。母さんがおとと
い送ってくれた本を参照してみても、首を立てるとか音に反応して回すなどは
もうすでに2週間も前からやっており、発達は早いようだ。三歩進んで二歩下
がる。



■ 00/07/15(土) 11:25:31    □ 小さなもの言わぬものたちへの愛情



 萌がうがーと言っている声で「ああ今朝はバッドだったのかな」と思いつつ
起き出してみると、バッドなことはなくただ「無視しないでよ!」と叫んでい
るだけだった。遊んでやるとふーふーと喋りまくり、ちょっと離れると大怒り
という案配。かわいいし楽しいが、少しは自分だけで遊んでくれんとこれも困
るなあ。

 しかしそれにしてもこれは間違いなく会話だなあと驚く。ボキャブラリがゼ
ロで、伝えたいメッセージも満足・不満足の2種類くらいしかないのだろうが、
間違いなく彼女は俺と会話をしているわ。Mは「手でシャツを掴んで口まで
持っていったわよ。気をつけないと」と笑っている。

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 SHたちがやってきて萌をバーナビーレイクに連れて行く。その間俺たちが
休みを取り用を済ませるという段取りなのだが、ふうむ。結局萌は散歩の間中
ぐっすり寝ていたそうでなにごともなく終ったのだが、その間俺は大丈夫かな
絶泣きしてないかなとハラハラするし、Mは萌がいないとさびしいと泣き出す
し(BRにも経験があって、初めて離れるとお母さんたちは動揺するらしい)
で、さんざんなこととなってしまった。まあみな好意でやってくれているのだ
から仕方がない。「次からはあたしたちが留守番して、あんたたちがでかけれ
ばいいのよ、心配しちゃってばかね」とSHも言っていた。その通りである。

 その後夜まで萌はぐっすりと寝、ミルクをもらって 30 分ほど「フウン、フ
ウン」と俺と会話してからまた寝た。ゆりかごに寝かせてやると、すごく心地
よさそうに寝てくれうれしくなる。猫や犬を相手にしているときもそうだった
のだが、俺はなんかもの言わぬものたちの世話がそもそも好きなんだなと思う
犬猫鳥魚の小屋や巣箱を「こうしたらもっと快適なんではないか」とあれこれ
工夫するのが昔から楽しく性に合っていて、それで相手が満足してくれると非
常にうれしい。

 それを考えていてハタと気がついた。今日あんなに動揺したのは、どうした
ら萌が一番快適かというのは俺たちにしかわからんではないか、人には任せて
おけんという、一種の独占願望的愛情なのだろう。よそのベイビーにはこの感
情を抱きようがなかったので大きな興味を感じず、俺はたぶん犬猫のほうが好
きなんだろうなと思っていたのだが、そこには秘密があったのだとやっと分かっ
た。それが今働き始めている。こうして抱いてやると彼女は安心する、こう声
をかけてやると言葉で応える、こうしてベッドに寝かせてやれば肩が冷えなく
て安眠、などなど。そういったことが積み重なって、小さなもの言わぬものた
ちへの愛情が湧いてくるのだね。そうじゃないかミスタータンブリンマン。



■ 00/07/18(火) 22:34:39    □ 新兵器ぜんまいスイング



 Mがたまりにたまった二月分のメールに目を通し、返事を書いていた。
写真も昨日焼き増しに出したし、これでだいぶ義理が果たせたような気がする。

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 俺たち両方の足腰(特に膝)が、萌をあやすことでガタガタになってきてお
り、少しはラクをしないと持たないとベイビー用自動スイングを買うことにな
る。先輩ペアレンツが皆勧めているのよ。そうかなあと思いつつ購入して組み
立て動かしてみると、こんなものに乗せられたら俺はたちまち酔って死んでし
まうという感じの勢いで動いており、これでいいのかどうか不安になる。

 が泣き始めた萌を乗せて実際に試してみると、Gをやや気にする様子はあっ
たもののロック(揺れ)に気を取られてグズりの原因に意識を集中できず、そ
のうちに延々とロックし続ける状態が把握できないことに飽きて、「もうええ
わめんどくさい」と目をつぶってしまうという感じであった。10 分でぜんま
いが切れたら目を覚ましたのだが、もう 10 分トライで完全に寝てくれた。な
るほど。継続性・リピート性が効くわけか。

 Pさんの本に、「泣いているベイビーを静かな部屋で放っておくと、やがて
ヒューズが切れて泣き止むことが多い。泣くことによる刺激が臨界点に達する
のである」てなことが書いてあったのだが、この実験結果はその記述に合致す
るような気がする。継続・リピートという刺激がベイビーの浅い刺激受容皿を
じわ~っと満たしてしまい、寝かせてしまうのだろう。空腹ガスなど原因のあ
る本気泣きのときには使えないが、その他のグズリには正解だったかもしれな
い。

 この自動ブランコについては萌誕生前からMよりも俺が非常に懐疑的で、こ
んなものはなくてもベイビーは育つだろうと思っていたのだが、again、先輩
ペアレンツのアドバイスは正しかった。ベイビーの健康やら満足など関係ない、
ペアレンツの体と心を助けるために、いろいろな便利品は生まれてきているの
である。Mが昨日自分の Web ページに書いたように、彼女が「自分はほかの
ペアレンツとは違って、もっとナチュラルなのよ」と思い描いていた方針はこ
とごとくなし崩しになり、すべてが「世間並み」の方向に向かっている(笑)。
ほかのペアレンツがやっていることには、すべて正当な理由があったのだなと
自分の思い込みを笑うしかないな。



■ 00/07/24(月) 13:48:44    □ ボトルフィードのテスト



 Mが 60cc ほどボトルに母乳を採り、本格的にボトルフィードをテストする。泣
いていたので最初は口にものを入れられるのを嫌がっていたのだが、少しミル
クが流れ込むとあとはまさに一気であった。こんなに早くていいのかと思うほ
どの勢いで、あっという間に空にしてくれた。すばらしい。なんたるパワーハウス。



■ 00/07/25(火) 23:48:33    □ ボトルフィードの実践



 午後Mが大学まで出かけねばならず、1人で萌の面倒を見る。目を覚ました
らボトルから母乳ミルクをやればいいと思っていたのだが、萌が泣き出し腹が
減っていることを確認してからミルクを温める、と後手後手に回ってしまい、
ミルクが暖まる頃には久々の猛泣きになってしまった。すまんすまんといいな
がら給ミルク。グビグビと音を立ててあっという間に飲んでしまった。すばら
しい食欲だ。全部で 100cc に満たない量だったのだが、それで満足してぐっ
すり寝てくれた。よしよし。

 Mもそうだと思うのだが、萌が長いこと寝ていると物足りなくなって、多少泣
いてもいいから早く起きてくれないかなと思い、寝室をしょっちゅう覗いてし
まう。泣けば多少じゃすまないところが難なのだが、機嫌よく起きていてくれ
る時間の長さは、徐々に確実に長くなってきているし。俺は彼女が起きている
間中張り切って遊んでしまい、えらい疲れる。

 この頃の目の輝きには知性の芽生えを感じ、遊んでやるといつ声を立てて笑っ
ても不思議ではないというキラキラとした興奮を感じる。肩抱きされて胸部を
ホールドしてもらえば、首はもうほとんど自分で完璧にコントロールできてい
るし。自分の手を発見してしきりにしゃぶっている。もうじき2ヶ月ともなれ
ば、もう新生児ではなく猛然たる発達のさなかにあるのだろうなあ。ありがた
や。

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