2010/02/24

日記「新興オリンピック種目は皆ジョーク」

「史上最悪のオリンピック?」「まだ誰も見たことがないもの」「ストイコの戦評」「オリンピックの北米化」ほか。

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■10/02/16(火) □ 「史上最悪のオリンピック?」
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 【男子フィギュア】で高橋が完璧な演技でショートプログラム暫定2位、織田が余裕のミスなし演技で暫定3位を抑えてみせた。あとで米選手のこれまた完璧な演技に2位を奪われたが、高橋と織田の演技前後の落ち着いた様子を見ると、上村さんの渾身の滑りから始まった力を出し切るいい流れが日本にあるように感じる。今日も女子 500m スケートで金を取った新興スピードスケート国韓国の怒涛の勢いにはかなわないが。

 最後の長野スケーター岡崎さんは、スタートから最後のコーナーまでは見事な滑りだったが、直線でぴたっと止まりぶち抜かれてしまった。お疲れさまでした。

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 英ガーディアン紙のコラムニストが、バンクーバーオリンピックを「史上最悪のオリンピック」と言ってるそうである。カナダのニュースは当然動揺を隠せない。練習での死亡事故、気温が高すぎ雨中で行われる競技、交通の悪さ、段取りの悪さ(遅延、キャンセル)といったあたりがヤリ玉に上がっているらしい。

 しかし死亡事故はともかくある程度のゴタゴタはいつだってあるわけで、史上最悪だなんて下衆なことを言うその神経が分からない。長野のときはどこかの英文コラムが「長野の町はウィンターオリンピック史上最もアグリイ」に近いことを書いていたし、「サマランチが『史上最高の冬季オリンピックでした』という閉幕決まり文句を言わなかった」と揶揄もしていた。こういうところは欧米メディアの、批評のミノをかぶった底意地の悪さとしか感じられない。

 お前らこれからアフリカでWCをやるんだぞ。段取りの悪さくらいでケチなぞつけてる場合か。おもてなしをありがたくちょうだいする心を持たない客は、段取りのつたないホストより見苦しい。

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■10/02/17(水) □ ショートトラックは面白いけれど
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 【ショートトラック女子 500m】 で、4人の決勝で最外のイタリーの子がスタート直後にアグレッシブ過ぎる斜行でカナダ選手を2人なぎ倒した。競馬なら失格だがこの競技では1コーナーまではルール上単にリスタートとなるという。そしてこのイタリー娘は2回目もまったく同じ斜行を敢行し、転びたくないので本能的に足を引いたカナダ選手1名の前に入ってしまったのである。斜行して同走者を転ばしても罰則がつかないのだから、なりふり構わず勝ちたい奴はやるよな。斜行以外に外枠の選手が勝負に出る道はないわけだし。

 3位に上がったイタリー娘はさらに2位のカナダ選手のインをスキあらば接触覚悟で飛び込む気ありありなので、カナダ選手はインベタで回らねばならず、最速ラインを取れない。もともと1位の中国選手とは力の差もあるのだろうが、そのうえラインが苦しいのでコーナーの立ち上がりごとに大きな差がつき、あっという間に差は広がりレースは終わってしまった。競輪でこんなレースをやったら、2位カナダ選手の単勝を買ってた客が怒るだろうな。たとえ勝てなくてもトップを追えよと。

 このショートトラックの抜きつ抜かれつは面白い。こういう紙一重のオーバーテイクが楽しめるのは他にはバイクレースしかないだろう。しかし 500m なんてどうやっても短すぎるのである。スタートダッシュで勝敗がほぼ決まるから内外で有利不利がありすぎるし、抜かれたらリカバーする時間などないから、こうして前を追うより順位を守るレースというものができてしまう。人数を絞らねば1列でスタートできないから4人中1人だけメダルを取れないという酷な仕様にもなる。こういう種目ならスプリント能力だけでは勝つのが不可能な距離(1000m 以上?)でなければフェアな競技にならないのは明らかではないか。まじめに考えてもらいたい。

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■10/02/18(木) □ まだ誰も見たことがないもの
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 【男子フィギュアスケート・フリー】どんどこどんどことジャンプで下位が皆転んでいく。織田がジャンプが安定し、軽快な体を生かした動きが小気味よく素晴らしかったのだが、途中でジャンプを失敗しグキっとなってしまった。あ、捻挫かと思ったら、なんと靴ひも切れ。これで得点マイナスとなり、それがなければ5位以上だったろう。惜しい。音楽「街の灯」もよかったが、チャップリン/エノケン路線のコミカルな動きはちょっと狙いすぎた感もある。男女ともスケートでコミカルなことをすると見てて気恥ずかしい気がする。

 高橋は最初のジャンプを失敗し転倒。しかしその後の滑りはまったく素晴らしかった。ジャンプは織田の方がうまいと思うが、この人はスケートと体の使い方が美しい。「ジェルソミーナ」という音楽の使い方も見事で、すべての技が完璧だったが長い手足を持て余し退屈だったライサチェクよりもはるかによかったし、観衆を惹き込んでいた。しかし高橋はジャンプでずいぶんマイナスがあるので、ポイントで負けるのは致し方なし。

 でアメリカのウェアという選手がこれまたジャンプを全部完璧に決める。滑りはライサチェク同様退屈なのだが、ウケてるからこれでも高橋より上に来ちまうのかねと萌とハラハラ見ていると、今時はスケートジャッジの目も節穴ではなく5位。これで高橋のメダルが確定。最後のプルシェンコはおとといもなんか揺れてるじゃん、なんでそんなにすごい点が出るのかと思ったが今日も明らかに調子が悪く、ジャンプ着地がことごとく揺れる。トレードマークらしい傲慢キング演技を続けるが、技に切れがないので傲慢ジェスチャーにも客がちっとも湧かない。これでもキングだから点が出るのかねと思ったら今時はジャッジも先入観バカではなく、2位となった。高橋納得の銅メダルである。えらい。

 滑りと舞いに関しては織田も本当によかった。総身にコントロールが及ばず切れがないライサチェクたちよりも、コンパクトなボディパーツを存分に振り回せる高橋や織田の方が氷上の表現には向いてるんじゃないかとも思う試合だった。高橋と織田の体の動きの先にビールマンスピンやイナバウアーのような、まだ誰も見たことがないものがいつか見える気がした。

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■10/02/19(金) □ ストイコの戦評
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 長野の銀メダリスト、エルビス・ストイコが昨夜のフィギュアを、「4回転を飛ばずに金なんて馬鹿げてる。ジュニアでもできる技ばかりじゃ客にはつまらない」と批判している。「金はミスはあってもプルシェンコ。4回転にトライした高橋は素晴らしかった、ライサチェクよりも上とされるべき」。彼は小塚の4回転ジャンプも激賞している。高橋は別のカナダコラムニストにも最高だった、最も観客を湧かせたと評されている。

 しかしライサチェクが退屈だったことには同意するが、難しいジャンプが必須となりボタボタと選手が次々に転んでいくというシステムは、それはそれで嫌である。今回も本当に転倒が多かったので、かわいそうで見るに耐えんとMはTVを離れていたしな。

 ストイコが現役時4回転を決めても、そのさらに前に伊藤みどりさんがトリプルアクセル(?)を跳んでも「芸術点」でライバルに負け、当時はスポーツ的感動が「芸術点」の下に置かれるシステムにアンフェアさを強く感じたが、今回はそれとは違うと思う。今回のプルシェンコの滑りに、ストイコ・伊藤のような「芸術点」を上回ろうというアスリート的気迫と説得力はなかったし、ライサチェクに高い芸術性もなかった。ただただ難度×成功度の単純計算でライサチェクが2人を上回ったという、やや不調だった競技結果なのだと思う。

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■10/02/20(土) □ ジャンプ・ラージヒル
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 【ジャンプ・ラージヒル】昨日の予選で葛西たちが飛び過ぎたのでスタート点が下がり、低調な記録が続く。葛西と伊東もK点に届かない。昨日の結果から 10 位以内くらいは狙えるのかと思ったが、2人にとって昨日の高さが物理&フィーリング的にスイートスポットだったのだろうか。しかしあのままの条件で上位が飛んでいたら、それは間違いなく危険だったろうから致し方ない。

 昨日と今日のこの大きな違いを見ると、日本人ジャンプ選手はスイートスポットが非常に狭いようだ。欧州系よりも筋力が弱い分、すべてのスポットがぴたりと合わないと遠くへ飛べず、98 年以後のルールではそのスイートスポットが極端に狭く弱くなってしまったということなのだろうか。日本選手が勝てなくなった理由は科学的にも謎なのだろうが(科学的にアジア人不利とはっきり証明できるならルールが改正されるだろう)、返す返すもルール改変が残念である。

 2本目、さらにスタート位置が下げられたが伊東がいい踏み切りで 128m を飛んだ。速度は落ちても日本人にはこっちのスタート位置のほうがスイートスポットに近いらしい。難しいものである。葛西も 135m。見事。これは両者とも、少なくとも1本は力を出し切った感があるだろう。葛西は2本目の飛距離はアマンからわずか 3m 差の3位タイに相当し、1本目がもう少しまともに飛べていればメダルの可能性すらあったかもしれない。お疲れ様でした。

 しかし今回のオリンピックは、カナダTV観戦者には最高だな。ジャンプなんかカナダ選手は上位にきっこないのにちゃんと全編放送してくれる。こんなのはカナダに移住後 15 年余のオリンピックで初めてだ。地元開催以外でもいつもこれくらいやってくれないかな。

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 【男子ショートトラック】1000m 決勝、人気のあるカナダの兄弟、コリア2名、悪名高いオーノと面子が揃って超盛り上がったのだが、結局コリアとオーノにやられてしまい、カナダ兄弟は完敗。会場とカナダお茶の間がとことんしょぼんとする結果となった。TVアナは、「この種目はコリアのものだ。どうやっても勝てない」とあきらめコメント。実際中韓以外はやる気をなくすような結果が続いている。長野の頃は日本も強かったはずだが、なんで日本だけいなくなってしまったのかしら。

 「五輪の強化費は韓国がダントツ」という話を聞くと、おそらくそうなんだろうなあとは思うが、しかし競技自体の歴史が浅いショートトラックなら金をかければ強くなるような気がするが、スピードスケートやフィギュアスケートは競技環境や指導陣が整った上で個人の資質がモノを言うような気がする。Jリーグで韓国人ストライカーが常に幅をきかすように、どこかにあるその違いがなんなのか分からないし、悔しい。

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■10/02/21(日) □ オリンピックの北米化
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 今日は【スキークロス】というものをやっている。こないだのスノボクロスのコースをスキーで滑るというもので、スキーでもこういう BMX 風人工コースでは体が浮いてしまい、全然スピードが出ないのだと分かる。クロカンスキーの下りと大差ない遅さである。スノボクロス同様やってる方は楽しいだろうが、これに出るのは一般スキー競技でコンペティティブなレベルに到達できない人々だろうから(※)、一瞬の完璧さに人生をかけたスキースケートその他のトラディショナルな競技と同じメダルがもらえるというのは理不尽だと感じざるを得ない。
(※)事実カナダ女子チームには、アルペンで振るわずスキークロスでもやってみたらどうだとコーチにいわれ、スキークロス大会当日に現地に飛び初めてのエントリーで2位となり、以後スキークロスに衣替えした選手がいると判明。そういう話を聞いてしらけずにこれを真剣なスポーツとして見れる人がいるのだろうか。

 これを見てつくづく理解したが、つまりオリンピック/スキー協会は北米で人気のあるスーパークロス(モトクロス)/BMX を雪上でやりたいわけだ。「バンクーバーオリンピックは NASCAR レースみたいなチープスリルを追い求めている」と批判されているがその通りで、これは見た目にエキサイティングな抜きつ抜かれつとクラッシュが楽しめればOKという北米モータースポーツだよな。

 オリンピックスポーツは「究極」というものと密接に関わっているべきで、これ以上のものはないというものを見せてもらいたい。スキーのアルペンは「この山を彼らよりも速く降りられる者はいない」と素直に思えるし、モーグルもあの坂をモーグル選手以上に速くきれいに降りられる者はないだろう(コブさばきだけでは競技として単調なのでジャンプをつけるのも納得できる)。しかしスノボ競技はスキークロスを見れば明瞭に分かる通り、このコースはスノボの性能がフルに出るように作ってあるが、それでもスキーの方が 10 秒も速いのだ。遅いスノボで競争するなら俺が一番という人々や、従来のスキー競技では勝てない人々のために、オリンピック種目を作る意義があるのだろうか。その競技内で世界選手権をやる分にはまったく完璧に文句ないが、オリンピックは別だろう。

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■10/02/22(月) □ 最後の長野ベテラン
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 【ジャンプ団体】葛西が台につくたびに、「この人はすごいんだ、∨ジャンプのパイオニアの1人で、昔から僕のヒーローでいまだにチャレンジしている」と、ジャンプ経験者らしいカナダTV解説者の声に熱がこもる。世界の一線からもう10年以上落ちていても、まだ日本のジャンパーは尊敬を受けているのだとわかり胸が暖かくなる。ここまで来れなかった他の長野ベテランたちのためにも頑張ってくれ。

 2本目。これが葛西の、長野ベテランの最後の最後の1本だろう。渾身のやつを決めてくれ。―――140m、素晴らしい。これから上位4チームが飛ぶので3位にはとても届かないだろうが、葛西のオリンピック・ジャンプは最後の3本すべてが素晴らしかったと、誰の記憶にも残るだろう。

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■10/02/23(火) □ 新興オリンピック種目は皆ジョーク
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 ノルディック複合が見たいのだが、カーリング2つと女子スキークロスでチャンネルがふさがっている。カーリングは予選だけで9試合もあるそうで、いくらなんでもオリンピック放送枠の偏りではないか。他にこんなに長時間放送される競技はないだろう。こうして自国チームの全試合(2時間半?)を参加各国が放映してるのだろうか。

 日本で大騒ぎになっているらしいカーリングの英国選手がいまプレイしている。ごく普通のきれいな子だが、ああしたきれいな子が人目を気にせず真剣な顔で物事に打ち込む様子はなかなか見ることはなく新鮮だという意味で、日本チームのあの子同様人気になってるのかなと思う。

 その裏では【大回転】をやっており、これはやはり最高。やっぱスキーの王道はステンマルクの昔から回転/大回転だよなと思う。これぞ問答無用で世界最高峰というスピードとターンが味わえ、バイクレースのように実に気持ちがいい。ヨーロッパじゃダウンヒルが英雄の競技だとして人気だというが、あれはスゴイけれどあのスピードと雪面の硬さではとにかく板をワイドに開きコースアウトを避けるのに必死というスキーヤーの様相となり、美しくはないのである。

 【スキークロス】は後半みぞれでコースがスーパーヘビーとなり、まるでスキーが滑らず全員クロカンスキーのようにストックで漕ぎながら進むという滑稽な競技になった。人工的に作った急造競技だからテストが足りず、気温上昇という予定外のファクターが入るとこうして台無しになってしまう。この条件でスノボが滑ったらストックで漕げないからまじで止まるんじゃないか? と思っていると、決勝で1人の選手がほんとに最初のジャンプ台を超えられず止まってしまった。スキー競技で転倒以外で止まるというのは、これはもう前代未聞ではないだろうか。新興オリンピック種目はほんとに皆ジョークである。

 と思ったら夜うちの奥さんがこれを見て面白いと大喜びしている。君ね、カナダのある選手はスキーじゃ一流になれずぶっつけでこれの代表になったのだよと教え、「そんな競技レベルのものをオリンピックにする必要はないと思わないか」と説くと、「でもエキサイティングで楽しいし人気があるならいいじゃない」と全然わかってもらえない。「しかし見ろよ、スキー競技なのに止まっちゃってるんだぜ。ホラ!」「クロカンスキーだって漕がなきゃ止まるじゃない」。―――くー。なんでオマイはそんなにスポーツ観戦音痴なんだ(泣)。

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 【女子フィギュアスケート・SP】うーん。浅田真央さん(滑るのは初めて見たが、立ち姿が驚異的に美しい)は緊張でわずかに動作が揺れ、それでも大技を含め見事に滑ったが自己能力比 90 点という感じ。キムヨナさんは緊張してもまるで動じず同 98 点で恐れ入ったが、SP世界歴代最高点なんていわれるとそんなにすごかったかなと腑に落ちない。スケーティングはシャキシャキと切れがあり気持ちがいいが―――浅田さんはスピード感にやや欠けた―――、007 の振付なんて織田のチャップリンや子供紅白みたいな気恥ずかしさを感じるし、ジャンプを除けば技術は昔のミシェル・クワンのほうがより完璧で優美じゃなかったろうか。まあスピードスケートと同じで、日本が得意の分野で韓国に負けることが俺は悔しくて受け入れ難いだけかもしれないが(Hard to swallow)、ヨナさんにも浅田さんにも特に心を動かされることはなかった。

 お母さんが2日前に急死という悲劇にあったカナダのロシェットが、驚くべき完璧な滑りで3位。4位の安藤があまりぱっとせず―――目立つ失敗はないが内容がつまらなく、観客を静かにしてしまった―――、表彰台はこの3人でほぼ決まりとなる。しかし一番良かったのは 100% 以上を出し切り飛び滑りまくった、日系アメリカ人の長洲さんだったような気がする。

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 萌は日本が負けたといって声を上げ悔しがる。開催国カナダをも上回りかねない韓国のメダルラッシュが、最近目覚めているっぽい彼女の日本人アイデンティティになんとなく障っているのだろう。しかしそれは仕方がない、韓国も日本もカナダもみんな一生懸命なんだから、勝てないからと言って不平を言ってはイカンよ。

 萌はこないだ学校の作文に、ニンテンドーやポケモンを初めとするカナダで普及した日本製品の多さを書き連ね、だから日本はイントレスティングなのだと力説していた。うーん、なんか違うなあ。普及してるのがすごいんじゃなくて、なんでもいいものを作ってしまうところが面白いのだよ。しかしそんなことを説明しても、小学生にはまだわからない。

 浅田さんがヨナさんを逆転することはできないだろうが、こないだ高橋がそうしたように、フリーでは突き抜けて力を尽くした滑りをしてほしい。そして高橋がそうだったようにゴールドメダリストよりも胸を掴むものを見せてくれたなら、順位に関わらず萌も俺も喜べるだろう。

2010/02/16

日記「オリンピック開幕」

「遅い車への愛情」「オリンピックムードを味わいに」「モーグルの競技性」ほか。

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■10/02/07(日) □「YAWARA」
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 日本語学校マンガ文庫で借りてきた「YAWARA」を萌に読んでやる。思った通り萌のハートにがっちりはまった模様。浦沢さんは軽音の先輩なので「YAWARA」でのブレーク前から俺たち後輩はその作品を読んでおり、いかにも大衆向けのこれは当時リアルタイムで読みはしなかったが、あまりにも有名なので当然話は知っており、そしてやはり楽しい。萌も久々にマンガで笑ってます。

 しかしさかんに出てくるパンチラシーンとか、カナダ人の娘はどう感じておるのだろうか。そういう絵があると俺は読む速度を極限まで高め、光の速さでページをめくる。Mに見つかったら怒られる(汗)。

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■10/02/09(火) □ 遅い車への愛情
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 日本語学校で「頭文字D」の続きをまた借りてきて、一気に読んでしまった。ちょうどそこでMのピックアップでバス停に呼ばれ、各交差点で久々にファストコーナリングを楽しむ。しかしきれいに曲がって決まった......とミラーを見ると後ろの車がたいして離れてなくて、しかも見ればその車はトヨタエコー(Vitz)セダンであった。あんな 1500cc ミニカーも引き離せないとは (^-^;。

 しかし車は面白いな。エリオはちっとも思い通りに曲がらないし(これはレガシィもそう)、燃費も含め不満は大きいが、それでも車を運転することは楽しい。「頭文字D」で脇役が恐ろしく遅いカローラ 85 を間違って買ってしまい落ち込み、しかし主人公がその車で敵をぶち抜き脇役が自車への愛を再認するという話があるが、あんなのは本当によくわかる。俺ももっとコーナリング性能の高い車を買っていたらなとは思うが、それでもエリオに乗ることは面白い。そして少なくともあの脇役のカローラ 85 よりは、俺のエリオは速いのである。

 昔 RZR250 を盗まれ、どうしようもなく8万円で買った RG250E なんか本当にボロボロで、キャブから夜中にガソリンがもれるし、箱根でプラグが死んでエンコしたし、バンク角がぜんぜん足りずコーナーを攻め込めなくて実に情けないバイクだったのだが、しかしそれでも楽しかった。あれが俺がエリオ前に所有した唯一のスズキである。俺にとってスズキとはそういう、情けないが許してやるというメーカーなのである。

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■10/02/10(水) □ カナダキッズの物欲
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 萌の文房具を探し町を走る。萌が欲しかったのは学校でみんなが使ってるという Mead Zwipes という多機能ノートバインダーで、友達が学校で使ってるものがほしいという気持ちは実によくわかるのでぜひにと見つけてやった。俺も小学校のとき、ユニボールとか流行りの筆箱が無茶苦茶ほしかったしな。

 流行のこのバインダーはプラスチック面に速乾性マーカーで落書きをし、シンナーペン+フェルトペンで消すというシステムになっている。シンナーを使うので(くさいが)マーカーが完璧にきれいに落ちるのがミソなようで、書いては消し書いては消し気持ちいーと喜んでいる。なるほどね。

 萌は俺が子供のときに比べたら物欲がすごく少ないと思う。クリスマスとお年玉で相当な金額を祖父母からもらったのだが、こないだのラジカセとこのバインダー以外自分で何かを買いたいと言い出したことがない。俺は小4の頃はすでにプラモデルその他がほしくて、お年玉などもらったら速攻で使い切っていたし、残ったお金で買えるものを想像しては興奮していたと思う。女の子だし、カナダは子供物欲を刺激するものが日本より少ないのかもしれないな。

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 必要があっていろいろな 2ch スレッドを読んでるのだが、現代ニッポンの若い世代というのはホント人の努力や才能をくさす心根ばかりが発達してるなあと思う。90 年代のニフティサーブやインターネットが開通したばかりの頃は、そうしたネガティブ野郎は有名になるくらい珍な存在だったのだが、今や Google やニコニコ動画といったメディアにも (語彙で) 多大な影響を与えるほどの大勢力になってしまっている。

 当時日本語ニュースグループ fj で悪口を吐きまくり俺と論争してた人なんか、ネット中が罵詈雑言に埋め尽くされた現代ではどう暮らしてるんだろう。皆の口が悪く(しかもそれらの話者がみな彼らより知能が低い)、自分の悪口スタイルが埋没していくのは彼らにとっては苦痛なことだろう。

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■10/02/12(金) □ オリンピック開幕
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フーレイ! がんばれー!

2001年、近所のモールのサイン会で
 開会式。萌が旗を振り興奮しとります。当然カナダと日本を応援するとのこと。カナダのTVでは 98・02 年スピードスケート女王カトリオナが解説で、岡崎さんを見て「長野の表彰台で彼女と一緒だったのよ!」とうれしげにコメントしていた。えらいなあ岡崎さん。

 おー、聖火の点灯はそのカトリオナさん。「この人、昔(サイン会で)萌を抱いてくれたんだよ」と教えると、萌は驚き口あんぐり。まったくだよな、こんなすごいアスリートが近所のモールにいたとはね。

 うーん、いい開会式であった。地元とはいえ冒頭でブライアン・アダムスを出したときはあちゃー、こりゃ駄目だと思ったが(彼をここで見たいという人はカナダだっていないと思う)、その後のクジラが地面を泳ぐ光ショーなんかは素晴らしかった。ギブソンに住むジョニ・ミッチェルが歌声でだけ登場してたが、スタジアムの袖(?)で歌ってたんだろうか。

 最後は柱が1本上がらないという事故が起き、これで聖火がつかないなんていう取り返しのつかないコトにはしないでくれよとひやひやしたが、残る3本の柱で着火は問題なくできたようでほっとした。Mと萌は「(わが町 PoCo から出たカナダの人道活動家) テリーフォックスがホログラムで着火するんじゃないか」と期待していたが、テリーフォックスは世界的には車椅子で出てきたあの人道活動家と同程度の知名度しかないだろうから、そういう大仰なことをしてくれなくてよかったと思う。

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■10/02/13(土) □ オリンピック1日目
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 【オリンピック1日目】カナダじゃオリンピック放送は通常米国1局カナダ1局しか放送がないのだが、さすが地元開催なのでカナダだけで3局も放送している。しかも視聴者が競技を見逃さないように、「22ch でジャンプ、23ch ではスピードスケートをやっている」と親切にも他局の番組まで紹介してくれる。トリノなんか女子スケート 500m すら放送してくれなかったんだから、えらい違いである。今回は時差も当然ゼロだし楽しめそう。

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 うーんモーグル、カナダのハイルも日本の上村も惜しかった。しかし全員力を出し切っての勝負は見事の一語。緊張に体を固くしてスポーツを見るのは気持ちがいい。こういうものを初めて見た萌も、唇を噛んでなにかを感じていたようだ。

 長野の時のモーグルでは、女子で優勝したタエさんの滑りを見てもなるほど今回はこの人が一番ミスがなかったのねとしか思わなかったが、今回の女子上村&メダリストのスピードはとてつもない。あれから 12 年も経ち、次元の違う競技レベルになっているようだ。

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■10/02/14(日) □ オリンピックムードを味わいに
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 チャイナタウンのチャイニーズニューイヤーパレード&オリンピック名物各国パビリオン巡りをすべく、バンクーバーダウンタウンへ行く。

 チャイナタウンは怖いから行ったことがなかったのだが、ドラッグ中毒者しか歩いていない地獄のヘイスティングスから1本下がればまさにチャイナタウンで、道をまたぐあのゲートが横浜と同じでなつかしい。

 パレードは一体何組あったのか延々 45 分もかかり、俺は 15 分くらいでもう満腹したのだが何事も付き合いのいいMとお菓子やノベルティをもらって大喜びのWと萌のため全部見ることになり、体が冷え切ってしまう。これが夏の夜にあれば楽しいと思うが(実際おばちゃんが踊ってる姿を見れば、日本の長野びんずる・阿波踊りなどの夏祭り踊り歩きと変わりない。下手だが)、温暖なバンクーバーとはいえ2月の朝に延々小1時間くまなく見物するものでもなかったというのが感想。


小さなチャイナガーデン
 やっとそれが終わり、中山庭園というこぶりで美しい中国庭園からチャイナタウンを散策しつつダウンタウンへ向かう。横浜みたいに観光客相手の高級レストランが並ぶわけじゃなく、非中華の人間に食べられるものはなさそうな感じだが、正体不明の店や中華雑貨屋が多く眺めるだけでも面白い。しかしチャイナタウンはどうしてこんなに薄汚れた古いレンガ建築がまるまる残ってるのだろう。不思議だ(※)。
(※)帰ってから調べると、裕福な層がリッチモンドに移ってしまったのでチャイナタウンは衰退しており、再活性化計画の対象になってるのだそうだ。単に古いものが再開発されずに残ってるということなのか。

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 で行ってみたバンクーバーのオリンピック関連エキジビションは、もー混んでるわ混んでるわすべてのパビリオン前が大行列。結局1つしか入らず、しかも帰りのバスはどれもこれも満員で乗れず、バンクーバーの町から出て行く方法がないという状態。ようやく席のあるバスをキャッチ帰ってくるまで3時間近くかかるという難儀な行程であった。オリンピック見物は大変だ。

 しかし長野の時は田舎の町が一変インターナショナルという感じだったが、バンクーバーはもともとインターナショナルな町なので、人が多い以外はいつもと変りない様子。ちなみに日本は今回パビリオンを出してないようである。冬季スポーツ不振がそういうところにも現れている。残念。

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 【サッカー日本代表】が韓国にホームで惨敗していた。Youtube で見た中国との試合で1対1でサイドを突破されまくっていたので、フィジカルがよほど上がってないのかそれとも中国選手に思い切りとフィジカルで勝てないのか(だったらマズイ)と思っていたが、4試合やってからきしダメだとなるとチームがスランプに陥ってるのだろう。

 昨年の予選を3~4試合見て、岡田監督のやってることはつまらんが日本サッカーは選手のレベルと経験が上がり着実に強くなってると感じたので、シーズン明けのスランプくらいさほど危機的には感じない。が、岡田監督がこれ以上策やオプションを増やさずに、「俊輔イン、あとは頑張れ」みたいな落とし所にいくのが明らかなことにはため息が出る。

 稲本が好調で敵の攻撃つぶしという持ち味を存分に振るっているそうなので、中盤の底を稲本・遠藤にして、スピードがあり右SBもできる長谷部を右ハーフに使えば相手を組み止める力と縦への推進力が大幅に上がると誰が考えても思う。それでも岡田監督は俊輔と長谷部が戻ったら稲本をはずすのだろう。ため息。

 スペインで俊輔が試合に出られないのは前に行く力がもともとないからで、セルティック絶好調時代もCLではFK以外と横パス以外何もできなかったではないか。つまり日本代表みたいなつまらんプレーをしていたら、攻撃力にならんからスペインじゃ試合に出られないのである。出るかもしれない俊輔の魔法を期待して06年は崩壊したのに、今回も同じことに突き進んでいる日本代表よ。

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■10/02/15(月) □ モーグルの競技性
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 昨日帰ってみるとモーグル男子でカナダ選手ビロドーが勝っていた。この選手が無茶苦茶感動的で、彼を精神的に強くサポートし続けているという重度身障者の兄貴が、スタンドで最前列で腕を振り上げ熱狂的に応援してるのである。弟の滑りに歓喜の雄叫びを上げる彼を見て涙を抑えるのは俺とMには不可能だった。

 しかし長野の原田に匹敵するほどの感動的なシーンだったのに、日本のネット報道では例によって「ナオ君入賞!」と日本の若い選手ばかり持ち上げ、まったく話題になってないようである。ヤングというならビロドーだって若冠22歳である。それがあの状況でインタビューされ、兄貴のことに言及し声を震わせつつもしっかりと答えられるのだから、カナダのアスリートは成熟している。たいしたものだ。

 そして女子上位と同じく男子のスピードと飛距離は鳥肌が立ち肩が凝るほどで、あのスピードで一気呵成に駆け下りるということ自体が強烈なスポーツ性と説得力を生み出している。モーグルは完全にオリンピックに値する種目になったなーと感服した。ここで4位の上村さんはまことにすごいと思う。

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 一方スノボは今日スノボクロス(?)をやってるが、相変わらずである。スキーよりもはるかに遅くコントロール性の低いもので競技をやられても、楽しそうだなとは思うが見る側にスポーツ的興奮など起こり得ない。ビーチバレーと同じである。みな転ばないように飛ばし、たまに尻もちをつきつつ降りて行くだけで、タイムをカットするためにインぎりぎりをつくといった基本的なレース性すら感じられない。まじめな話スノボというモノ自体に突き詰めるような競技性はないだろう。スケートボードでオリンピック競技を作ろうとは誰も言わないではないか。

 スノボやビーチバレーがかくも馬鹿げた優遇をされるのを見ると、オリンピックの商業主義を痛感する。オリンピックは金の無駄遣いだと反対している人々が今回も多いが(萌も学校でそういうことを習い、付け焼刃で反対論をぶったりする)、金の無駄遣いなどそれこそ映画芸能石油商業あらゆるところにある中、巨大な感動を生み出すポテンシャルを持つオリンピックをことさらターゲットにする意味はないと思う。オリンピックではなくすべての無駄遣いに反対すればよい。しかしスノボ競技とビーチバレーが金の無駄遣いであることには議論の余地もない。

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 うーん、スケート男子 500m でコリアに負けた。コリアはなんでウィンタースポーツでどんどん強くなってきたのだろう。ショートトラックのような新興スポーツで強いのはわかりやすいが、スピードスケートやフィギュアという種目で歴史がある日本がコリアに負けるとは驚きであり悔しい。韓国のスポーツでの強さと検索すると「隙間狙いだから」という意見が多数見つかるが、サッカー・野球やこういう王道スポーツにはそれが当てはまらないではないか。韓国にはなにかがある。それはなんだ。食べ物か?

 カナダ中が心配していた悲運の転倒青年ウォザースプーンは最後まできっちりと滑りきったが、勝ち負けには遠いタイム。スタンドからは清水が観戦しているのをカメラが捉えていた。この2人が競った長野オリンピックは実に面白かったな。今回表彰台の3人からは、空飛ぶカエル清水ほどの別格性もウォザースプーンのようなドラマ性も感じられないよねと俺はMに話す。最後にコーナーで加速しオーバーランした長島の2本目には逸脱する輝きがあったので、あれで勝てていたら伝説が生まれていたかもな。

2010/02/07

日記「『頭文字D』の峠」

「考えすぎだったかもしれない」「とにかく無念、朝青龍」「君にいっつも電話をかけて眠りたいよ」ほか。

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■10/01/27(水) □ 考えすぎだったかもしれない
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 不適切課題問題(「萌の担任はおかしい」)で萌の担任への失望に包まれてる真っ最中に、ちょうど Student Led Conference(※) がある。これは毎年フレンチなので見てもあまりよくわからんのだが、今年からは数学等があるので進捗度合いが見て取れる。萌は数学は順調に進歩しているようだ。
(※)学校で何をやっているのかを子供が教師と共にまとめ、30分ほどかけて自力で両親に披露するというこのイベントが、カナダの授業参観にあたる。


左は「クジラを飲み込むウワバミ
(星の王子さま)」の図、右は
「もし飛行機が落ちたら」の図。
 フランス語のノートやプリントを見ても担任の指導が劣っているかどうかなんて俺には分からないが、やっぱ萌はこの学校で不満なく楽しくやってるんだよなーと思う。課題を一番先に終えた班がポイントを得、そのポイントでオークションをやり先生からキャンディを購入するなんてことをやってるらしい。萌は目を輝かせてそのシステムを俺たちに説明する。そこはキャンディではなくもっといいものを買えるようにすりゃいいのにとは思うが、子供がそれで盛り上がるのは間違いないな。

 帰ってから、たしかにこの学校はアカデミックな面ではいいところが皆無だと思うが、やっぱりいまさら学校を変えるというのは萌には酷だろうとMと話す。萌自身が不満を抱えているわけじゃないのだから。Mも、そうねえ、私の考えすぎだったかもしれないわね......と考え直したようだ。

 この Student Led Conference で担任を評価し直したわけではないが、子供が学校で楽しく暮らしものを吸収する力は、教師の優劣程度ではさほど揺らがないということかもしれない。もっといい教師ならそれに越したことはないが、俺みたいにとんでもない暴力教師が担任でも(俺は掃除中に歌を歌い、授業中にマンガを描いて際限なくビンタされた)、子供はさほど抑圧もされず楽しくやってたわけだしな。

 夜ゴミを出しに行くと、ライラックが芽吹いていた。やはり今年は早い。

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■10/01/31(日) □ 3速ホールドにトライ
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 掃除と送迎日。BRを送って PoCo ダウンタウンを往復していて、うちのスズキ・エリオの最近の低速時の力のなさをカバーする意味でAT3速ホールドで走ってみた。4速 1200rpm あたりで流すとポンピング抵抗で回転が落ちるのを感じるので、2000rpm のパワーバンドに近いところで回転を保持すれば燃費が上がるかもしれないという実験である。

 なかなかいい感触なので帰ってからネットで調べると、3速ホールドにはエンブレ時の燃料カット域を広げる効果があるのだとわかった。4速スローダウンではすぐに 1000rpm に落ちるので燃料はまったくカットされないが、3速なら 2000→1000rpm の間燃料カットが期待できるということだ。

 燃費コンピュータを使い詳しく分析した人によれば、ゆっくり加速するよりも減速時に惰性走行とエンブレ燃料カットを長く取れるよう工夫して走った方が燃費が伸びるといっている。なるほど。これは習慣化していこう。

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■10/02/02(火) □ 「頭文字D」の峠
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 萌を学校でピックアップし坂を降りていくと、Lincoln Ave から下は4速に入れておけば相当下まで燃料カットで行けると判明。ということは坂に入ったらさっさと速度を上げ4速で降りていけば一番燃費が上がるわけだ。

 こうして減速(惰性走行と燃料カット)に気を使っているせいで、オーバースピードでコーナーに突っ込む癖が矯正され、コーナリングがうまくなってきた。無理のないスピードできれいに曲がっていく。エコランに燃えているので、コーナーでしゃかりきにならなくても運転技術を追求でき走っていて楽しいというのも好循環になっている。コーナーで3速に落としてるので、トラクションによるフロントの安定効果もあるのかもしれない。

 しかしエコランを始めると、加速した先で信号に引っかかるとか、信号待ちとかが耐え難くなってくるな。「せっかく燃料カットした (はずの) 5.6 mL がみるみる消費されていく」と実感できてしまう。「信号待ちがあっても燃料カットで取り返せる」と逆に考えないといかんな。

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 今日萌の日本語学校でマンガ「頭文字D」1・2巻を借りてきてしまった(潰れた日本食屋の貸出用蔵書がドーンと流れてきたのだとのこと、ありがたいありがたい)。「バリバリ伝説」の熱狂者だった俺には、バリ伝継続中すでに車へ情を移していた『裏切り者』しげのの作品というイメージがあってこれは読んでなかったのだが、彼の峠への愛情はバリ伝にもこのマンガにも等しく出ているのだった。


ああ、峠。峠よ峠。
 木々の合間から下に続くつづら折りが見えるなんていうカットはたまらない。この絵を見るだけで、ああ、と彼へのわだかまった気持ちが解けていく。―――ああ峠に行きたい。PoCo 市には安全に攻められるカーブが2箇所しかないのです。

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■10/02/03(水) □ とにかく無念、朝青龍
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 朝青龍、引退発表。やはり先場所千秋楽のあの相撲と異様なうつろさは、すでに魂が抜けていたのか。

 引退会見では、「品格」に関する反発を少しだけ語っている。サッカー事件を含め、俺は朝青龍の過去のすべての「問題」を取るに足らぬことだと思うが、格闘家が非格闘家を殴ってはどう言い訳もできない。相手の黒い噂もあり、なんらかの正当防衛に近いものだったのではないかと願っていたのだが。

 「日本の国技だからね。相撲は悪いことばかり続いてるから、これ(朝青龍引退)でみそぎになるね」なんて言ってるオヤジを見ると、相撲史上最悪の悪いことをしたのは日本人ではないか、そういう事件でイメージを落とし入門者を減らし強い関取を出せないのが日本の国技ではないかと思う。オヤジという品性下劣を放置している日本が、モンゴル青年の品性下劣さをそれほど批判できるのだろうか。

 とにかく無念である。力が落ちるにつれもっと面白い相撲スタイルに移行し、そしてずっと相撲をとってほしかった。いやはやなんとも。いやはやなんとも。

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■10/02/04(木) □ 朝青龍は酒乱ガスコイン
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 朝青龍事件の「被害者」が出した、「俺も酔っていたし、当事者間では解決してるので穏便にしてください、(横綱引退などとなれば)自分も一生負い目を負うことになりますから」という示談書というものが新聞に掲載された。誰だか知らないが自分がどれほどの才能を葬ってしまったのか、本当にわかっているのだろうか。

 まあそれは朝青龍本人とその取り巻きにも言えることだな。本人は泥酔で覚えておらず、マネージャーは喧嘩を止められず、善後策(穏便な示談調停)も取らなかったらしい。朝青龍は酒乱ガスコインと同じだったということかもしれん。サッカー選手なら出場停止で済んでも、格闘技(ことに相撲)ではそうはいかないのである。

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■10/02/06(土) □ 君にいっつも電話をかけて眠りたいよ
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 掃除中適当に選んだ MP3 で小沢健二がかかる。
- お茶でも飲みに行こうなんて電話をかけて 駅からの道を行く 君の住む部屋へと急ぐ (愛し愛されて生きるのさ)
- 君にいっつも電話をかけて眠りたいよ 晴れた朝になって 君が笑ってもいい (天気読み)
- 遠くまで旅する恋人に 恋人にあふれる幸せを祈るよ (ぼくらが旅に出る理由)

 彼女には彼女の部屋があり暮らしがあり、そこを訪れて行くうれしさ、行けないときの甘いつらさ、自分がいない時間でも彼女がハッピーなら悪くないという感じ―――小沢健二はそういうところがいい。

 ひるがえって現代(というかまあ 90 年代以降)凡百 JPOP は、あれはなんだ。日本の電車の中の馬鹿カップル同様、とにかくひっついていたい、信じて待ってる安心うふうふと汗ベトベトだ(バンクーバーの公衆で過度のベトベトをやってる中高生も、なぜかアジア系が多いように思う)。耐えられん。

 最近まで知らなかったが小沢健二はミュージシャンとして引退していたそうで、今年復活ライブをやるのだそうだ。パフォーマンスシンガーとしての彼はうまいわけでもないからライブを見たいとは思わないが(萌と一緒に Youtube で彼のライブを見たら、歌も踊りもヘタでかわいくて笑ってしまった)、新曲を出してくれたらいいなと思う。