2012/07/10

日記「胸踊るボードゲームの精緻感」

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■12/07/02(月) □ 二度目の Waterdeep
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今日はまたMK家でダンジョンズ&ドラゴンズ会。話は前回からの続きなのだそうだ。なるほどねー、それはいいわ。これは時間がかかるから断片ショートストーリーしかできんではないかと思っていたが、長いスパンをかけ長大なストーリーを演じることができるのね。それはいいわ。

いいわとは思うが俺はやりたくはないので萌を置いて帰り、午後からボードゲーム部だけ参加することにする。前回書いたようにD&D世界は文句なくイントレスティングではあるが、時間が長くボードゲーム的なゲーム性がないので、俺は辛抱できない。

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午後ちょうどD&Dが終わったところに合流して、ボードゲームタイムとなった。ディクシットは前回同様楽しい。俺は「SFは嘘つき」「嘘なんかついてないわよとSFは主張した」と姪のSFを引き合いにしたお題シリーズをやり、これがいい感じで少数に当ててもらえて盛り上がった。

俺の持ち込んだ「お邪魔者」6人戦は楽しかったのだが、皆がもう少し心理戦にうまくならないと、連結や邪魔が簡単すぎて爆発的には盛り上がらないようである。筋金ゲーマーMKはさすがに前回の1ゲームだけで勘所を感じ取り、やいのやいのと口撃を加えゲームを盛り上げてくれたのだが、他の人たちにはまだピンとこないようであった。



次に萌が当家持ち込み「グレンモア」をリクエストしたのだが、D&DファンのSFとKVのリクエストで「D&D Lord of Waterdeep(ウォーターディープの支配者たち)」 になってしまった。これは拡大盛り上がり要素がなくやや単調なゲームなんだよなー。しかし断るわけにもいかず、そこから1時間半近くの長いゲームとなった。

もう一度やってみてよくわかったが、これはやはりカラーキューブを集めてポイントに換金するだけのゲームである。「クエスト」というのは「チケット・トゥ・ライド」のチケットと同じで必要な色を集める仕事なのだが、その手順をワーカープレイスメント=早い者勝ちで複雑にしているだけだ。もしチケライに鉄道マップがなく、『赤4青3黄2を揃えたら9点ゲット』というチケットを達成していくだけのゲームだったらまったくヒットしなかっただろうが、これは大筋でそういうゲームだといえる。

 たとえば「アンダーマウンテンを急襲!」というタイトルで、実際やることは白1黄2黒4紫1とキューブを集めるだけって、考えてみればなんだそりゃではないか。これよりは「東欧の覇者!」とかいうタイトルで、同じく白1黄黒4紫1キューブを集めペトログラード→ソチあたりを地図上でビジュアルにつないだほうが、納得感も達成感もずっと高いわけである。

むろん建物のオーナーシップ、ラウンドごとの賞金アップ、陰謀(攻撃)カードなどさまざまな要素を盛り込み変化をつけているが、大筋は色集めなのでチケライのカードマネージメントのシンプルで軽い面白さを上回ることはない。さらにチケライと違い Waterdeep はクエストを捨ててもペナルティはないので、それもゲーム性を削ぐ。必死に工夫しなんとか達成しようという気持ちになれないのだ。

似たゲームであるストーンエイジは色集めの作業自体を派遣ワーカーの人数とダイスで楽しくしてるわけだが、このゲームの独自性である建物のオーナーシップ(メリットの大きな新設建物を使うと、建てたプレイヤーに利用料が入る)はそんなに面白くもない。「どっちもやりたい」というジレンマならば楽しいが、「それはやりたくないが....」という種類のジレンマなのである。

ゲーム内で単純に盛り上がるのはやはり「陰謀」カードによる攻撃で、ディクシットの報復でSFがなにかといえば俺を攻撃し、ワイワイやれたのはよかった。しかしそれはゲーム盤上の面白さではないしな。

また、前回やったときは「俺にはわからぬが建物名やクエストの内容がD&Dファンにはスペシャルなものなのだろう」と好意的に解釈したのだが、今日一緒にプレイした3人のD&D者はクエストに必要なリソース情報だけを参照し、そのタイトルなんぞは気にしちゃいなかった。D&Dの舞台設定が醸し出す効果なんて別になかったのである。ここに至り、なんでこのゲームが BoardGameGeek 人気投票歴代 40 位なんだ、アメリカンゲーマーおかしいだろうと腹が立ってきた。歴史的名作に与えられるような順位である。この程度のゲームがチケライ (76) やカルカソンヌ (88) のはるか上位だなんてどうかしてるよ。D&D好きなだけで投票してるだろうキミたち。

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俺と萌は熱のこもらぬ散漫なプレイで終わり(それでも上位と得点上の大差はなかった)、結局これが最後になり他のゲームはできず帰宅。ふー。これに比べてチケライはなんと見事に簡潔で、グレンモアはなんと戦略性が高いことかと帰りの車の中で萌と話す。まあクイックで戦略性が高く俺と萌が大好きなグレンモアも、5人戦だと1人分のタイルが減り時間が長すぎて楽しくないという評があるけれどね。今日は6人だったので俺が抜けて指南役となり、それを試してみたかったな。

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■12/07/03(火) □ 胸踊るボードゲームの精緻感
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用事で隣町に行き久しぶりにD&Dストアにボードゲームを探しに行ってみると、60 くらいで髭モジャのオッサンが店主相手に嘆いていた。

「俺はD&Dは好きだよ。だけどガマンならねえのは、マーケットを専有して他の RPG を全部殺しちまったことさ。昔はもっといろいろあったんだ」。
「(店主)それは言えるね」
「だろ?」

――なんという深い趣味の世界でございましょうか。TRPG 趣味の底力はすごい。ユーロを売るボードゲームストアはバンクーバー圏全体で3軒しかないのに、D&Dストアは小さいけどこうしてあちこちの町にある。趣味としての浸透の度合いと歴史が全然違うんだろうな。昨日も思ったけど、日本だと精緻系男子趣味の主流は鉄道やプラモデルとなり、北米ではD&Dなんだろう。
後日判明したが、この気難しそうなオッサンはうちのMKの知り合いだった。「一緒にやったことがあるけど厄介な人でさ、パーティを助けるべき場面でただただ自己中に働くもんで、みんなウンザリしてたよ」とのこと。見た目通りの難儀な人だったという(笑)。

昨日「お邪魔者」で分析や戦術など関係なく攻撃し合いゲームを楽しむSFとKVを見てても思ったが、彼らカナダ人ゲーマーはいい意味で子供っぽいんだろうな。そして「自分が何かを演じる(ロールプレイ)」方面に情熱を傾けることが好きなのかもしれない。そういえば遊星さんのゲーム史論記事に、『アメリカ人はずっと一貫してミミクリ(模倣)の遊びを重視している』というラインがあった。

ショップでD&D用のこういう厚紙3Dマップなどを見ていると、「これで遊びたくない奴はいない、そんな奴はおかしい」と思う。D&D自体は遊びたくないんだけど、こういうのはホントうらやましい。かわいすぎる。

しかし、ドイツ/ユーロボードゲームのよくできたメカニクス(ゲームルールの仕組み)にも、こういうマップに似た男子の胸踊らせる精巧な細工っぽさ、精緻感があると思うのだ。それでもし部品までチマチマと精緻だったらもうたまらない。愛さずにいられない。ゲーム好きが写真を見、ルールを読むだけでうっとりするのは、工芸品を愛玩するのに似ている。というか同じである。

俺は東洋のオジイなので、ロールプレイをするにはシャイで想像力に欠ける。鉄道や模型や盆栽はやらんが、喜びはやはりそっちの細密方面にある。ボードゲームのメカニクス内に心を彷徨わせ、指先で自分の庭を組み上げたい。ボードゲームをやりたいなあと、そればっかり考えている。新ゲームがほしいほしいほしい。

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